第24話
サブタイトルがそろそろ苦しくなってきた(前回からだけど)
貸店舗の期間が残り二日となった。
商人達は毎日相談に来る。噂を聞きつけたのか、他の店の者まで何か助言がないかとやってくる。後者に関しては営業時間にまで来てしまうので、少々困ったことになっていた。
奏太は『紹介状』と言う名の『師匠権限の命令書』を持たせ、弟子達に押しつけた。
厄介払いではあるが、彼ら同士の話し合いでも「何か」が誕生する可能性があるのだから、訓練としては程よいという考えもあった。
そうやって残りの日々を過ごしていたその日、眼差しがきつく、顔に傷がある男が店に入ってきた。
一瞬、店員も客も動きが止まる。しかし客の多くはその男性が来ている衣服でその身分を知って驚いていたのだ。
「先輩……」
品出しをしていたキマエルが呆然と呟いた。
呟きを聞き止めてその男はキマエルを見た。そして、眼差しをさらに厳しくする。
その表情の変化にキマエルの肩が一瞬竦む。
「お前はここで何をやっている」
「それは…………」
咎める言葉にキマエルは答えられなかった。
みんなを救いたいために四人についてきた。今もそれは間違っていないと思える。
四人が見据える未来は自分が考えていたものよりもずっと壮大だった。
四人は神の力を復活させようとしている。
為政者達が何度も挑戦して挫折した事を。
神に仕える者達がどれほど祈り願いを捧げても無理だった事を。
四人はこの一月で、少しずつ、成し遂げている。
キマエルはそれを肌で感じていた。しかしそれを理解してもらおうとなると難しい事も分かっていた。
「勇者様が邪神族と戦う事を決意した」
「「え!?」」
その言葉に驚いたのはキマエルだけではなく、きららもだ。
「勇者!?」
きららが思わず聞き返す。男はきららを一瞥し、キマエルだけを見据える。
「お前はこんなところで、店番をするために神殿騎士になったのか?」
「それは……」
「お前の夢は勇者と共に邪神を倒す事ではなかったのか?」
「そうですが……」
「お前の夢は、母親の代わりに多くの人間を助ける事ではなかったのか?」
「それは今も変わりません」
「こんなところで働いてそんな事を抜かすのか」
「先輩は誤解しています! この店は希望なんです! もしかしたら世界でたった一つの---」
「黙れ!!」
怒声は、まるで威嚇のようで。びくりと店内にいた者達は体を硬直させてしまう。
「此度の勇者召喚は、神々にとって最後のチャンスだと言う。今のままではもはや次はないとそう言われている」
男の言葉にこの世界の住人達が息をのんだ。
いつかきっと神がどうにかしてくれる。そう甘えた部分を自覚させられ、そして、もはやどうしようもないのだと、客達の目が絶望を表し始めた。
「……そんな事ありません」
キマエルは小さく否定し、それから一度大きく深呼吸して、男を見た。
「そんな事ありません。師匠達は神の力を復活させるために頑張っているんです。希望を途絶えさせないために。先輩ならそれがどれだけ凄いことか分かりますよね」
「……ああ、分かるさ。邪神が居たら無理だって事もな」
「そんな事、ないです。自分は師匠達のそばにいてそう確信しました。神の力は師匠達が復活させます」
「…………お前はどこまで愚かなんだ」
きっぱりと言い切ったキマエルに男は深いため息をついた。
「キマエル。俺と一緒に来い。今は少しでも戦力が欲しい」
「先輩自分は」
「今度の戦は人類の存続をかけたものになる。総力戦だ。お前の姉君と妹君も前線に出るぞ」
「え……」
「共に来い」
力強い言葉にキマエルの動きが止まる。呑まれたというよりも、姉妹の事が気にかかったのだろう。
「なんの騒ぎですか?」
「どうした?」
奥から奏太と誠がやってきて店内を見渡す。
騒ぎというか、この異様な空気は扉の前にいる男が原因だろうと、二人は視線を男に合わせる。
筋肉が隆々とし、立ち姿からただ者ではないという雰囲気がある。
二人は注意深く男を見ながら、自身の体に魔力を通し、強化を始める。
「お前達には関係ない」
「……店内で騒いでいるのにそんな事を言うんですか?」
男の言葉に奏太は呆れながら問い返す。
営業妨害だというのに関係ないというのか、と。
「ふん。営業などこの世界が邪神の手に落ちたら出来なくなるだけだ」
「はぁ? なんでそこに邪神が出てくるんだよ」
「勇者様が邪神と戦う決意をしてくださった。その戦力にキマエルを連れに来ただけだ」
「あ、キマエルってやっぱり強いんだ?」
誠が何気なくキマエルに尋ねる。キマエルとしてはなんとも答えにくい。
「弱くはないとは思いますが……。ある程度は治癒魔法も使えますし」
姉妹ほどの力はなくとも、回復役としてもそれなりに優秀だ。
「そういえば、お前の師匠とかいうのは回復魔法が使えるのだったな」
キマエルの言葉に、男はキマエルが弟子入りした理由を思い出し、視線を滑らせ、きららで止める。
きららは思わずびくりと体を反応させ、それが答えとなった。
「お前か、お前にも来てもらおうか」
「い、嫌です」
「そうですよ。何勝手なこと言ってるんですか」
奏太はきららの前に立ち、男からの視線を切る。きららはその後ろでほっと息を吐いた。
「勇者が戦う決意をしたとの事ですが、そんな事にボク達を巻き込まないでください」
「我々が負ければ、世界は終わるぞ?」
「ボクはそう思いません」
「……現実が見えていないガキはこれだから」
吐き捨てて、四人を見る。
「いいか。これは俺たちに残された最後のチャンスだ。各国の王も各地の神殿もその戦力を勇者の元に集めている。これですべてを終わらせるためにだ。世界を救うためのごっこ遊びなど、その後にしろ」
「魔族は?」
「あぁ"!?」
「魔族には声をかけたのですか?」
「……いや、声をかけてない」
「本当に世界を救う気があるんですか?」
「……勇者様がすべてを人族で終わらせるとおっしゃったからな。魔族の力は必要ないのだろう」
神に仕える者として、そこは複雑なのだろう。少しだけ声に力がなくなった。
「その勇者は本当に勇者なんですか?」
奏太の質問に男が纏う空気が一変し、キマエルがとっさに奏太の前に立ち、無手ながらも構えた。
「ガキ。いくら子供でも言って良いことと、悪いことがあるんだぜ?」
「……真偽の確認を取っただけで、そこまで殺気立つなんてずいぶんと余裕がないんですね。噂の勇者に問題でもあるんですかね?」
「っのっ!」
「ソウタ師匠! 煽らないでください!!」
前と後ろのやりとりにキマエルが若干泣きそうな声で制止をかける。
誠は苦笑して、奏太を見る。
奏太は物腰とかはわりと洗礼されてるし、ですます口調のおかげで柔らかいイメージがあるが、根っこの部分はどちらかというと切れ味の良い刃物だ。
必要な者と不要な者の判断が差し迫った時、それをためらうことが出来る。
今も、この世界の人間を切り捨てている。
その勇者が偽物と知りながら、見捨てている。
(きららを誘ったのも不味かったんだろうなぁ……。しかもあんな高圧的に)
はぁ、とため息をつく。そしてきららと目が合ったので、曖昧に笑った。
(俺ときららは、判断出来ないタイプなんだろうなぁ)
たぶん最後まで判断出来ずに、巻き込まれてしまう。下手をすればそれで自分や仲間が傷つくかもしれないと分かっていても。
冷徹過ぎても駄目だし、優しすぎても駄目だという事なのだろう。と自分たちを選んだ神Aを思い出す。
「あのさ、お兄さん。俺たち、あんまり争いごとってしたことないんだ。ケンカだって口げんかならともかく、手や足を使ってなんて、もうホント小さい頃くらいにしかしないような、そんなへい……いや、ボケーっとした国から来てるんだ。動物の死骸だってまともに見られないような根性なしなんだ。悪いけど、戦いの場で役に立つとは思えないし、そんなところに仲間をつれてもいけない。悪いけど、諦めてよ」
誠の言葉に男は一瞬軽蔑するような視線を向けたが、それを消して、キマエルを見た。
「明日まで神殿にいる。お前は来い。お前が神殿騎士になった理由を忘れていなければな」
男はそう言って立ち去っていく。
静かに扉が閉まって、客からもほっと息が紡がれた。
「あーもー……怖かったぁぁ。いっそ、塩撒いちゃう!?」
涙目のきららの言葉に、なんで塩なんだろうと思いながらもキマエルは曖昧に笑い、男が立ち去った扉を見つめた。
その様子を三人は密かに見つめ、決断の時が来たんだと理解していた。
夜、五人は向かい合う形で座っていた。
今日ばかりはアドバイスの仕事はお休みと扉の前に張り紙を貼り、従業員はもう帰して、本当に五人だけが、店の喫茶スペースに居た。
「キマエル。貴方の心の内を聞かせてもらえますか?」
静かな奏太の問いかけに、キマエルは膝上にあった手を握りしめる。
「……勇者が現れたと聞いた時、もしかしたらこうなるかもしれないとは少し思いました」
ぽつり、と静かに話し出す。誰も口を挟まず耳を傾ける。
「自分は、確かに勇者と共に戦いたいとそう思ってました。でも、師匠達と一緒にいるうちに考え方が変わってきました。邪神族と戦うのも重要だけど、師匠達がやっているような、生きる希望を喜びや楽しみを人々に与えるのも、同じように、下手をしたらそれ以上に大切なんだって……。だから、自分は、師匠達の後をついて行こうって決めました。人々のためにはそれが一番なんだって感じたからです。師匠達の活動はわかりにくいし、効果が疑わしいと思われる事も多いだろうから、自分は、聖女の息子というのを汚さない範囲で出来うる手伝いをしようと決めたんです。だから、自分は行きません」
きっぱりとキマエルは言い切った。
「そう」
奏太も静かに頷いて、キマエルを見た。
決心した顔がそこにあった。もう心は動かないだろう。そう思わせていた顔がふいに崩れる。
「……そう、心に決めてたんです。でも、……姉さんと妹が一緒に行くと聞いて、心が揺らいでます」
四人に顔向けできなくてキマエルは徐々に顔をうつむけていく。
「自分は、ずっと、人々の役に立ちたいと思ってました。そのために、命を投げ出す覚悟もありました。嘘じゃありません。でも、気づいてしまいました。自分は……俺は、他の誰よりも、姉と妹を助けたいんだって……。誰を犠牲にしても、それこそ俺の命を使ってでも二人が助かるのなら、それがいいって。今まで二人が戦場に出る事なんてなかったから気づかなかった。いえ、きっと、二人が大事に安全なところで守られているから、俺は戦いに行けたんだって、『みんなのために』って言葉で自由に動けていたんだって気づきました」
キマエルは立ち上がり、四人に勢いよく頭を下げた。
「破門にしてください。師匠達にはお世話になりっぱなしで、恩なんてまだ全然返しきれない恩知らずですが。お願いします」
向けられた頭にミチルは唇を笑みの形にした。
「どうせ、もうすぐ破門にする予定だった」
「え!?」
ミチルの言葉にキマエルは驚きのあまり頭を上げて見つめてくる。
「ええ、実は、まぁ、そうだったんです」
「そう……だったんですか」
苦笑と共に同意した奏太に、キマエルは笑った。一人で空回りしていたのだと知った。
「キマエルはさ、俺たちがなんでこんな活動しているか覚えているか?」
「確か、故郷に帰るため……でしたよね?」
「そ、神の力を復活させないと帰れない」
誠は頷いて、笑う。
「私たちのはあくまで利己的。キマエルの考え方と相容れない」
「世界を救うっていってもあたし達は邪神族と戦うなんて気持ちこれっぽっちもなかったよ」
「むしろ、逃げ回りたいくらいだったからね」
「そういう意味ではキマエルの、みんなのために世界を救うっていうのは俺たちにとっては『重い』んだよな。俺たちはそんなもののために活動してるわけじゃないのにって」
「……すみません」
ミチル・きらら・奏太・誠と続いた言葉にキマエルは謝った。
「だから、今のキマエルの方が俺は好きだな」
「そうだね。家族のためだって言う理由は分かりやすくていいよね」
「あたし達も家族に会いたくて頑張ってるもんね」
「同意」
先ほど、自分を否定した時とは逆の順番で、今の自分の考えを肯定する四人にキマエルは戸惑った。
「俺は、弟子はいらない。でも仲間は欲しいと思う」
誠は立って、三人を見た。
三人は誰も否定をせず、むしろ小さく頷いた。
誠も小さく頷き返し、キマエルの前に立ち、右手を差し出す。
「もし、キマエルがさ、心の中も、頭の中も覗かれても良いって思うのなら、握手しようよ」
「……えっと?」
「俺たちの六番目の仲間になってくれると嬉しいなって」
にぱっと誠は笑う。
よくみる愛想笑いとは違う、心からの笑顔だった。
「……六番目?」
キマエルは思わず順番に目で数を数えた。
知らない五番目がいるらしい。
もしかしたら、その人を喪ったから、邪神族と戦うのを極端に嫌がっているのかもしれないと思い、右手を見つめた。
「……俺は、姉妹のために命をかけますよ?」
「おう」
「……今の俺でいいんですか?」
「今のキマエルだからいいんだろ?」
「仲間になっても、俺は、姉妹を助けるために行きますが?」
「おう。反対しないよ、俺たちはもちろん。大事な者のために戦うってのは、男としては当然だろ?」
「そこは男も女も関係ない」
「そうだよぉー。女だってやる時はやるんだから」
誠の言葉にミチルときららが口を挟む。そんなやりとりにキマエルは小さく笑って、誠の手を取った。何の気負いもなく、むしろ、軽くなった心で。
ぴりぃ。
一瞬の静電気のように何かが繋いだ手から流れてきて、瞬間目を閉じる。
そして、その場に、見知らぬ女性が立っていた。
黒く長い髪。整った目鼻立ち。
美しい少女とも言える女性は微笑み、カーテシーを取る。
【初めまして。トモと申します】
「は、は、初めまして」
一瞬、頭を真っ白にしていたキマエルだが慌てて挨拶をした。
その顔はどこか赤い。どうやらトモに見とれていたらしい。
(トモは五番目の仲間)
ミチルの声が耳とは違う場所から入ってきて、キマエルは戸惑い、ミチルを見た。
(トモは実在しない。ん……? 違う、言い方間違った。えーっと、実在はする)
(実在はするけど、肉体は存在しない……かな?)
今度は奏太の声が聞こえてきて、キマエルはすぐに思い当たった。
「これ、もしかして! 師匠達、これでやりとりしてました!?」
二人の唇は全然動いていない。未だに耳に音は入ってこない。頭の中で直接響くようなやりとりだ。たぶんここに他の誰かがいたらこの声は聞こえないと理解出来た。
(せいかーい)
(言ったろ? 心も頭の中も覗かれるって)
【無意味に覗く趣味はないのですが……】
きらら、誠と続く言葉にキマエルは納得の方が強かった。時々ある、あうんの呼吸すぎる原因はこれなのか。と。
誠の手が離れても、トモの姿は消える事はない。
「……え? 実態がないって……?」
先ほど奏太が言っていた言葉を思い出してキマエルは目の前に居る彼女を見た。
トモはそっとその手をキマエルの腕につけようとして、するりと通り抜ける。
【一種の幻覚です。この姿はミチルさまが作ってくださいました】
(キマエル。会話、こっちの方で出来そうですか?)
奏太に問われて、キマエルは口を手で覆いつつ閉ざした。
(……聞こえ、ますか?)
恐る恐ると言った様子だがばっちりと四人には届いている。四人は頷いた。
誠は先ほどの椅子に戻り座り、キマエルにも座るようジェスチャーする。
(キマエル。勇者は本物ではないです)
(……師匠達が本物ですよね?)
(もう師匠じゃねぇけど……。うん。俺たちが本物)
誠が頷くと、奏太は続ける。
(邪神族は、人族が思っているよりもずっと人族に紛れています。この店にも来たようですよ)
(本当ですか!?)
(トモが認識できなかったのが証拠。逆に言えば、一番危険な相手が認識出来ない)
【すみません】
(勇者がただの偽物の可能性もあるけど、邪神族の可能性も高いとボク達は睨んでる)
(……なんのために……って聞くのも馬鹿ですよね。罠ですか?)
(君と君の姉妹、および人族の大々的な戦力。これがなくなったとなれば、人族はガタガタ。邪神族が攻めてくる)
(……はい)
(それでも、ボク達は手を出すつもりはない。まだ魔族はいるし、君たちが知らない大陸には君たちが知らない種族も多く居る)
奏太の言葉にキマエルは目を大きく見開いた。
目の前に世界地図が現れて、新他陸を示し、そこが拡大さるとそこに住む人々の男女の写真が現れる。
キマエルはもはや言葉も出ない。
今、自分に起こっている事は、ずっと先、何千といった先にある未来の魔法だと思った。
(キマエル。ボク達はボク達の目的のために死ぬわけにはいかない)
(はい。この世界の事は、本来、この世界の住人がすべきです)
奏太の言葉にキマエルはよどみなく答える。
突き放した言葉にキマエルが覚えた感情は、安堵だった。
たとえ、自分たちが死んだとしても、この人たちが居る。世界を守ってくれる。いや、救ってくれる。
「……絶対に死ぬな」
誠が硬い表情で、まるで命令するようにキマエルに言う。
「はい。善処します」
「最悪、姉妹を連れて逃げ帰る」
「はは。そうですね」
ミチルの言葉にキマエルはそれもいいなと思った。そんな自分に笑って、立ち上がった。
「先輩が、今頃イライラして他の人に迷惑をかけていると思うので、行きます」
「うん。頑張って」
もう一度頭を下げるキマエルに、今度は誰も何も言わなかった。
部屋を出ても、追いかけることはしない。
する必要がない。
いつでも心は繋がっているのだ。
(さって。どうする?)
(まずは魔族側に連絡だろうね。人族の言う勇者を知っているのか、とかかな。勇者が誘うなって言ってるのなら、話が来ているとは思わないけど。はぁ……面倒な事になったなぁ……)
(がんば!)
(ファイト)
(……二人とも、お願いだからその他人事っていう雰囲気は止めようね)
(戦争の知識などない!)
(男子は戦国物とか三国志とか好きなんでしょ? そっち向けじゃん)
(あのなぁ……。俺だって、わかんねーよ!! 任せた奏太!)
(任せるなよ! 本当に!)
四人はしばらくそんな内容で会話を弾ませた後、店の片付けを始める。
(問題は、勇者が『話が大きくなり出して、引くに引けない騙り』か、そうじゃないか、だよな。今のところどっちだと思う?)
(邪神族だと思う。今のうちに人族の希望を絶ちたいんだと思うよ。魔族は、『勇者』が来たことにより、かなり立ち直っている。新大陸の人々は元々邪神族の影響をあまり受けていない。今、人族に立ち直られると困る)
(……盤面がひっくり返る?)
(分かりません、そこまでいけるかは!)
ミチルの言葉にほうきで掃きながら奏太は何かのゴロの様に否定する。
(しかし、力をそぐという意味では、達成できると思う。勇者は未だ表に出てこない。そのくせ、絶望を味わっていた村々がゆっくりとだけど立ち直ってきてる。その上、適正を重視しない店が現れた。邪神族が偵察に来たという事は、無視できなかった事だと思う。……あ……)
新たに思い当たった事があったのか、奏太は実際の口の方でも、声を出していた。
三人が掃除の手を止め、奏太を見た。
(……下手をすると、邪神族がボク達を殺しにくるかも……)
(((…………)))
あり得る。そう思うと四人は深いため息をついた。
いつもありがとうございます!




