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第23話

体調が戻ってきました。

短いですが、少しでも更新せねば……。と。




「『適性』が、悪用されている?」

「そう。本当の意味で才能が開花されないように呪いっぽいのがかかってるんじゃないかなってのが、俺達四人の意見」


 誠は頬杖を突きながら目の前の人物にそう返した。

 最初に会った時は緊張した。今も少し緊張するが、それは大勢の中で会った時だ。

 今みたいに、彼と彼の家族だけになると、何故か緊張のきの字すらどっかに飛んでいく。

 というのも初めてミチルが彼らに会った時、相変わらずのあの対応でも、彼らは怒りもしなかったのだから、自分達が普段通りにやっても問題ないだろうって結論にいたったのだ。

 聞くと「不敬罪」という言葉は、神からの使者である自分達には絶対に適応されないらしい。むしろ、そう言って罰則出来る立場なのだと知った。

 そしていつも通りの対応をしたミチルの心臓は鋼鉄製であると三人は思った。


「なら適性は調べさせない方がいいという事でしょうか?」


 魔王の息子、王子イルズが誠に尋ねてくる。

 ミチルに一目惚れし、そして即振られたイルズ。今でもミチルの事が好きらしく今日もウキウキと勇者が来るのを待っていた。

 誠がやってきた時、落胆した様子を見せたので、誠は内心スマンと謝った。そしてもう一つ、諦めてくれと願った。

 イルズが居ると知っていたからこそ、ミチルは今日来なかったのだ。

 四人は帰ると決めている。だから本人が望むのならともかく、望まぬのなら、恋の手助けなどする気も無いし、妨害する方に力を貸すだろう。


 質問に誠は首を横に振った。

「俺達もそれは考えたんだけどさ。でも、才能があるって分かるんならやっぱりそれは知っておきたいよなっていうのも本音だよなって、なって」


 才能があるのなら知りたい。それは人間として普通の事なのではないだろうか。しかしその才能が完全に発揮される事はないのだろう。それはそれで辛いのでは? と、四人はその日の夜、無言で見つめ合っていた。

 もちろん、心の中での会話は非常に色んな意見が飛んでいたが、傍目にはただ黙って真剣な顔で見つめ合う、もしくはにらみ合っていただけだったので、何も知らないキマエルは非常に居心地悪そうにしていた。


「よし解散!」


 と誠の一言で四人がさっと何事も無かったように散っていった時、彼はもはや何がなんだか分からないという顔で四人を交互に見て、誰も居なくなった部屋で、慣れたと思う物の、立ち入れない絶対的な距離に、キマエルは少し、ほんの少しだけ、泣きそうな顔で立ち尽くしていた。

 そんな誠が知らないキマエルの泣き言は横に置いておくとして。


 好きだから才能が無くても良い。と思う者だって居るだろう。

 不器用で、たった一つの才能にしがみつきたい。と思う者だって居るだろう。

 こっちで勝手に判断すべき手はないと四人は結論をだした。

 

「だから、週に一回か二回、興味のある職業を体験させるのはどうだろうって案が出た」

「体験?」

「そう。文官の人が騎士のまねごとしたり、商人の人が教師をしてみたり」

「適性のない物を経験しろという事か」

「そ。で、一番重要だなって思うのは、やってみた人の意見を聞くことかな? 例えば文官だった人が剣すら振れなかったとする。そうすると今までだったらきっと『鍛えてから来い』ってなるかもしれないけど、でもそんな彼だって武器を変えれば戦えるかもしれない」


 銃とか引き金を引くだけでどうにでもなるものだってある。隠し武器というのだってある。

 

「商人は数字には強いから、もしかしたら計算については先生より教えるのが上手いかも知れないし、こういう道具があればもっと教えやすいと考えるかも知れない。時は金なりって思って、より効率的にって考えるかもしれない。そういう今までに無い考え方の違いっていうのが大事だと俺達は思うわけで。今までは「適性」の関係で、そういう意見っていうのも特にやりとりしてないんでしょ?」


 神から与えられた才能。それがない自分達が、才能がある人間に何かを言うのもおこがましい。


 そういう風潮があったはずだ。

 無意識にはあった。とトモが言ったので、あると四人は断言出来た。



「もしくは各部署にアンケート用紙を設置して、『あなたのご意見ご感想をお待ちしております』っていうのを置くのもありじゃないかって話になった。これについては、各村々でも、取り入れてもいいんじゃないかなって言う意見もあったよ」

「我々が国民の意見を聞かない政府だと思っているのか?」

「え? ああ、違う違う。そういうんじゃなくてさ。すんません、王様。そんなつもりじゃなくて、あー、なんていったらいいのかな? 例えば、『うちの母さんの料理が不味いので誰か教えてあげてください』とか。『うちの子がいたずら好きで困っているので、誰か良い案をください』とか。あ、いや、それは獣人のみんなだったら割と相談してそうだな。あ、じゃあ、『勉強ぎらいな子供を勉強好きにする方法教えてください』とかかな?」


 誠の言葉に魔王と王子はきょとんとした顔を見せた。


「最初のやつは、村一番の料理上手な人が料理教室を開いて、料理が苦手だっていう人に色々教えれば良い。二番目は、……勉強嫌いって中々根が深い問題だから、それこそ、村のみんなで意見を出し合ってああだこうだとやればいいかな? ああ、でもそうだ、陛下。俺達の最終的な意見としてはさ、適性があるからその仕事に就く、じゃなくて、好きな仕事に就きたいっていう気持ちがある人には、その仕事に就けられるようにはして欲しいかなっては思う」

「……分かった」


 魔王が頷くと、誠は少しホッとしたように笑った。


「適性がさ、使えるようで使えないっていうのが、この世界の人達にどう影響するか、俺達には正直よく分からない。その辺はきっと政治に関わる人達の出番だと思うから俺達の意見はあくまで一つの意見って事で」

「これからの未来を考えるに、重要な事実である事は間違いない。助かったありがとう」

「いえいえどういたしまして」


 そんな答えに肩の荷が下りた気がした。

 なんで俺がこんな大役をせねばならんのか。奏太の出番では無いだろうか。とは思うのだが。

 じゃんけんで負けたので文句は言えない。


「あ、あとこれ。きららから料理のレシピ」

「れしぴ?」

「そう。基本から応用まで色々あるって」


 本人のレシピもあるが、ネットで調べたレシピもある。

 あえて、同じ名前の料理をアレンジバージョンで二・三種載せてたりする。固定概念を植え付けないようにしたかったのだ。

 玉子を焼くというだけでも砂糖・塩・出汁・海苔など色々混ぜる物によって味が変わる。料理名も変わる。

 一部とは言え、それを載せていればもしかしたら、呪いを受けていても新しい何かを作り出そうとするのではないか、という希望があったのだ。

 新しい道具を作るよりも、新しい料理を作る方が簡単だときららは言った。

 特に料理の様に本能に直結するのできっかけさえあればどんどん発展するはずだ! と言い切った。

 本当かよ。と思うが自分達が住んでいた国の事を考えると環境さえ整えばあながち間違っていない気がするとも思えた。母親の味というのは、千差万別だ。


 では『環境』とは何か。

 火と水。特に火を使う料理がこの世界では弱い。ガスコンロの様な火の魔道具がもっと家庭に普及すれば、「失敗作」から生まれた新作料理も数多く出回るだろうときららは思っていた。

 まずは村に一つでも良い、その環境を作って欲しいと、レシピと共にきららの願いを魔王に伝えておく。

 きっと魔王はすぐに対応するだろう。

 レシピのコピーと共に村々には共同炊事場が作られる事になるのだろう。


 これらは魔族側だけの問題ではなく、人族側にも言える事だ。

 ただ、その対応は、同じようには行かない。

 勇者とは知られていない彼ら四人は人族側では大した発言力がないからだ。


「はい、これをどうぞ」


 奏太は紙の束を弟子入りした商人達に差し出した。


「これは?」

「アンケート用紙です。これを商人の適性を持っていない方々に配り、回答を貰うだけで、みなさんの悩みは随分と解消されると思います」


 奏太の言葉に彼らは手元にある紙を見た。


 性別 年齢

・毎日の生活の中で、一番労力を使うものはなんですか?

・こういうのがあると便利だな。と思うのはなんですか?

・不便だなと思うのはなんですか?

・毎日の生活の中で時間を短縮したいものはなんですか?


 等々。よくよく見れば同じ質問ではないだろうか? と思うものが言葉を変えて質問事項の中に並んでいた。

 これはこの世界には『改良』という言葉も『便利グッズ』も無いせいである。

 不便なのが当たり前。当たり前過ぎて、それを減らそうという意識も低い。いや、全く持ってない。

 だから何があれば便利かも分からないし、何が不便かもよく分からない。

 みんなにそれを意識して貰いたいために言葉を変えて何度も織り交ぜている。


「みなさんはボク達の考えが斬新だと思っているのでしょう。新しい商品を多く生み出す、そのコツを知りたいと言って弟子入りしてきましたが。そんなものはありません。ただボク達は、色んな会話の中で、自分達や周りが欲しい物を商品化してきただけです。そこには適性なんて関係ないんです。買う人、使う人の意見を聞いてそれを形にしてきただけ……。と、言っても、ボク達の国では普通の事なんですけどね。それがここでは弱い。だからまずは、適性に関係なく色んな人からコレの意見を聞いてきてください。そしたらきっと、新商品も出来るはずです」


 奏太は言って、もう一つの小袋を渡す。中には金が入っていた。


「みなさんのお仕事は終わりです。身勝手とは思いますが、残りの期間、新商品の開発に勤しんでください。ここにいる間はボク達もアドバイス出しますし」

「……あの、どうして急に……?」

「ボク達はすぐにみなさんが新商品を作れると思ってました。でも、どうやら『環境』が悪くそう簡単に上手くいかないと分かりました。新商品を作るための手順書みたいな物があれば良かったのですが、さすがにそういうのは無理ですし」

(作ったら作ったでそれ以外の方法が無いって勘違いしちゃいそうだし)


 奏太は内心ため息をつき、彼らを見つめる。


「ボク達がここにいるうちに出来るだけアドバイスをしようと思ったら、みなさんがここで働くよりも、ご自身の店に戻って貰って店の人と話をした方がいいと思ったんです。なので誠に勝手ながら、昨日付で皆様は退職という形を取らせていただきます。アドバイスに関してはお店が終わってから受け付けます。もちろん今日からです。数日でしたがお手伝いありがとうございました。みなさんはみなさんの職場で、頑張ってください」


 奏太はぺこりと頭を下げる。そんな姿にこれはもう決定事項なのだ、と彼らは文句一つ言う事無く同じように頭を下げ、店から出て行った。

 パタンと扉が閉まる音がすると彼らは一目散に自身の商会へと走って行った。

 残り日数でどれだけの助言が得られるか。それがこれからの未来を切り開く胆だと彼らは一秒でも早くと足を動かした。


「この世界の人間は商人であっても脳筋なのではないかと思う事多々有り」

「いや、あれは、儲け話をふいにしてたまるかっていう心理だから、やっぱり商人らしんじゃない?」


 マップに映し出された移動する光点を見ながらミチルと奏太は笑う。

 陸上選手さながらだ。などと思いながら奏太は腕を組み、唸る。


「彼らはあれでいいとして……、他はどうしたらいいのだろうね……」


 奏太の言葉にミチルは唇を引き締める。

 魔族は魔王に告げれば良い。しかし人族は違う。

 勇者と名乗れば一発で解決しそうな気もするが、暗躍しているであろう邪神族の事を考えればそれも不安が残る。


「……邪神こそが脳筋だったら良かったのに」

「あー……確かに、頭良さそうだよねぇ……」


 まだ見ぬ大いなる敵。出来れば一生出会いたくない敵の親玉は、思ってた以上に手強そうで、二人は同時に大きなため息をついた。



ブクマ・評価ありがとうございます!

ちょびちょびと頑張っていきたいと思います!

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