第25話 航行
「はい。これ。技見表。」
トゥイは眉をひそめ、「技見表?なんだそれ?」と不思議な様子で本をみた。
「まー簡単に言うと、歴代の朱雀様たちが使っていた剣技や作法についてまとめた本よ。」
「いいよいいよそんなの。なりゆきで戦うからさ。」と手で払いのける。
ミンリンは少しガッカリして「はぁ~。少しは真面になったと思ったら…やっぱし変わってないわねー。」とため息をつき続ける。
「いい?この本は古い書物や参考書を元に私が作成したの。本来であれば前朱雀様に教わるのがセオリーだけど、今回は戦死してしまった異例の事態で決闘や四神集会も早く執り行う事例のないケースだったのよ。それでチョンテイ様にも確認を取って是非渡して欲しいと頼まれたの。だから受け取って。」
差し出した本を受け取り、トゥイは数ページパラパラとめくる。
そこには図や説明が分かりやすく丁寧に書かれていた。「すげぇな。」とトゥイは驚愕し「ありがとう!大切にするよ!」とニカッと笑って見せた。ミンリンは少し顔を赤くして「と、とにかくそれで少しは勉強しなさいよね!」と照れを隠すように忠告した。
「そろそろ行くよ。」
「えー。もう行っちゃうの?」
「次はいつ帰ってくるの?」
悲しそうに兄弟たちはトゥイを引き留める。
トゥイはグッと気持ちをこらえて荷物を持ち兄弟たちに背を向ける。
「たまには顔みせなさいよね!いつでも帰ってきていいんだから。」
「なんだよ(笑)。そのかあちゃんみたいなセリフ(笑)。」
「何よ?私だって家族みたいなもんんでしょう?」
「それもそうだな。じゃあ…みんなまた会おうな。あばよ。」
トゥイは捨て台詞を吐いて少し振り返った後、前を向き家族たちを後にした。短い里帰りも終了。だがその僅かな時間はトゥイにとっては充分リフレッシュしたとても充実した時間となったのだ。
「充電完了!行ってくっか!」
青空を見上げ、自らに気合を入れると迷わず目的地へとトゥイは走り出した。
「遅い…」
トゥイ以外の残りの三人は小舟に乗り「老巢」へ行く待機をしていた。リーウはまだ到着していないトゥイに不満げでご立腹だった。すでに三人の荷物は詰め込んでおり出発の手筈は整っていた。
「あんのトサカ野郎…とっとと行こうぜって言ったのはどこのどいつだよ。」
舟の側面を人差し指でコツコツと小刻みにつつき、ハオはリーウと同じくイライラを募らせていた。残るシュエンは苗刀を肩で支え「ふぁ~。」どうでもよさそうに呑気にあくびをしていた。
「お~い!みんなぁ~!」
3人が一斉にトゥイを見る。そんな笑顔で近づいて来るトゥイがハオは許せず、怒りをあらわにした。
「てんめぇ…!いつまで待たしゃ気が済むんだ!こっちはとうに準備できてんだよ!だいたい…」
殺気を感じたのか、ハオはハッとなり後ろを振り返る。
「朱雀殿。勿論。遅れてきたということは我々三人を納得させるだけのそれ相応の理由があるんでしょううね?」
表面では笑っているようだが、リーウ目の奥底は笑っていなかった。そして案の定トゥイの遅れたのは「実はよぉー。向ってる途中で大好物の肉まんが食いたくなってよぉー。赤都名物『赤肉包』を買ってきてたってわけ!」となんともくだらない理由であった。
「あー!もちろん!皆の分を買ってきてっから!よかったら一緒に…」
それを聞いたリーウは今度は笑顔で渾身の銀杖を三度振りかざす。
「すんませんでした…。」と頭の上にいくつものたんこぶを乗せトゥイがリーウに頭を下げた。ハオとシュエンはあーはなりたくないとおぞましくみていた。
「コ、コホン!分かればいいのです…分かれば…」とやりすぎたをごまかすように咳払いした。
「ふんじゃあ行こうかね?『老巢』へ!航行だ‼」
トゥイは胸のあたりで拳を鳴らし、一同を鼓舞した。四神たちは舟を出した。それぞれの国の未来を背負って…。




