只今、監獄ダンジョンに到着しました。
この世界は全て『魔素』から成り立っている。
魔法とは『魔素』を具現化したものであり、ダンジョン内のモンスターや鉱物、植物も全て『魔素』をダンジョンという巨大な『設計図』に基づき構築されたものである。
人類にとって必要なモノは全てがこの『設計図』により構成されており、食物も『設計図』に基づき構築されている。食物の『設計図』としての役割を果たしているのが通称『食の木』である。
『魔素』を地中や空中から取り込み『物質』として食材に構築させている。『食の木』が一つの『生命の設計図』である。
全ての食材には『種』が無い。稀にダンジョンの宝箱から発見されるが、『食の木』からなる実には種は存在しない上、成木の移植すれば枯れてしまう。
そんな、貴重な食の木を増やす方法は2つある。一つは、食の木が寿命を迎える時に実の代わりに苗木が出来る。それを採取し新たに植える方法と、もう一つはスキルを使用して増やす方法だ。
スキル名は『苗木』エクストラスキルである。このスキル持ちは移植する事はできない食の木から挿し木を作り、苗木まで育てることが出来る。
なので多くの『苗木』スキル持ちは国や領主のお抱えとなり、一代限りではあるが農民だろうと準男爵の爵位を賜るほどの高待遇を受ける。
貴重な苗木は全て「世界苗木法」による適正価格で売買されており、どんな大国だろうが売買には必ずハンターギルドもしくは商業ギルドを通し「世界苗木法」の規定に添わなければならない決まりとなっている。
普通の草木にも使用価値がある。
『魔力』の元でも有る『魔素』が多く含まれているためポーションの原材料などとして使用されている。
だが、直に体に入れ続けると魔力過多による「魔力酔い」や「魔力暴走」を引き起こす原因となる為、ポーション以外では体内への摂取はほとんど無い。
また『ポーション生成』スキルなしでは高品質なポーションは作れないので、このスキル持ちも市井では当たりスキルとされている。
スキルは努力などにより取得出来るモノもあるが、特殊なスキルは生まれ持ってのモノが多い。
魔法も同じだが『魔法の書』と言うものが存在し、火や水など一般的な魔法に関しては値が張るが生産できる為、誰でも取得可能となっている。
ただ、貴族や大商会がこぞって購入している事情から入手が難しく、さらにダンジョンなどで発見された特殊な『魔法の書』や生産不可能な『スキルの書』はオークションなどで高額取引され、近隣諸国でも話題となる。
モンスターには『ダンジョン系』と『進化系』の2種類が存在しており『ダンジョン系』は名前通りダンジョンから溢れ出したモンスターの事で、基本、繁殖はなく倒すと魔素の塊『魔石』を残して消え去る。
稀に、魔力を帯びた牙や角、鱗や肉などを残すモンスターもいるが、かなり高ランクモンスターのため通常は有り得ない。
これに対して『進化系』とは、元々は普通の動物だった個体が、魔素が含まれている植物などを接種したことによって進化した動物を示し、討伐しても肉体は消えなく魔石は無いが、代わりに魔力を帯びた骨や皮などはハンターギルドで買取りされている。
ファンタジーで毎度お馴染み『モンスターの肉』だが、旅の途中で食べ物が底をついたなどの非常時のみに食べるぐらいで普段は食することは無いようだ。(がっかり)
買い取られた進化系モンスターなどの素材は武器や防具、魔道具にも使用されており、ダンジョンモンスターの『魔石』は魔道具のエネルギー源としても使用されている。
また、『魔石』意外にダンジョンなどで多く採掘される『魔水晶』は生活には欠かせない品であり、モンスターか鉱物かの違いではあるが両方とも貴重なエネルギー源として高額買取りが行われている。
ダンジョンや食の木密集地には人々が集まり村や街、国ができる。そのため数多くの都市国家が点在し、小競り合いが頻発する地域も珍しくない。
ダンジョンの数と質が『国の富』であり、食の木の保有数が『国の豊さ』と考えられている世界である。
ってな事を語っている合間に馬車が止まった。ようやく目的地に到着したようです。
足枷に手枷、奴隷の首輪を付けられて持たされてるのは用足し用の壺一つ。飯は1日パン1つ(カビ付き)と一緒に配給される水は木のコップに1杯のみ。手枷には『スキル封印』として『変化率0倍』が施されており、も〜気力がいっさい湧いてこない、とにかくじっと耐えること14日間。
いかがお過ごしでしたでしょうか?異世界生活の予定、大狂わせ中のユウト改めユイルと申します。
城から逃げるタイミングを逃して、魔法やスキルを封じられ連れて来られたのは、山の山頂にある牢獄である『ダンジョン』に収容されます。
そりゃ人権なんて無さそうなこの世界で、囚人を牢屋にただ入れとくなら働かせるのは理にかなってるかも知れないが、無実の罪で送られちゃーたまんねーなーオイ。
かなり心が荒んでおりますよ。(っけ!)
「さっさと降りろ」
兵士の怒鳴る声と同時に馬車の扉が開き降ろされる。
周りを囲われ一切外の景色が見えない護送馬車の中でも気が付くほどの傾きから、山道を進んでるのは分かってた。目の前には山頂に出来たカルデラ湖のような湖の真ん中に島があり周りには残雪があちらこちらに。
道理で寒い訳だ。意識が朦朧として事が数回、もう一度人生やり直すところだった。
道中では数名は亡くなっている。寒さで凍えた者、病にかかった者、モンスターの囮として使われた者。
立派な橋が架けられており橋の途中には大きな門が建っていた。
観光だったら感動モノの雄大で美しい風景だが、浸っている余裕はない。
見慣れない恰幅のいいおっさんが俺らの前に立ち
「俺はここの看守長だ。橋の上にある門を潜り、魔法陣が描かれている上をゆっくり一人ずつ歩け」
言われた通り進む。魔法陣に乗ると足元が光り『奴隷の首輪』も光った。
「全員通ったな。これにより首輪の設定が変更された。今からこの湖のから出た者は即死刑だ。理由関係なく首輪が締まる。中に居る看守に手を出しても締まるから覚えとけ。これからお前たちは、ダンジョンでの魔水晶の採掘をする。グリムモア王国のために一生尽くせ!詳しい事は監獄内でまとめ役が説明する。」
そう言うとさっさと帰って行った。
「お〜い!枷外すからさっさとこっち来い」
島の方から声がした。みんなズラズラ歩いて橋を渡る。
島の道はちゃんと舗装されており、橋からでは木々が邪魔して島の中が見えなかったが、中央には大きな広場があり、その奥には大きく口を開いた洞窟があった。
デカい。とにかくデカくておっかない顔したおっさんが現れる。
「俺がここのまとめ役をしとるグラドールだ。ここでの生活は一言で言えばハンターと同じだ。違いは現金はなく全てプレート決算となり毎月ここの維持費を回収される事と、こっからは逃れねぇてことだけだ。稼ぐヤツは酒も呑めれるし、時間はかかるが外から品も取り寄せれる。まずは枷を外す。外したヤツから渡したプレートに血を一滴垂らせ」
一人ずつ枷を外されながら順番に名刺サイズほどのプレートを渡され、血を垂らすために指を針でぶっ刺していく。ワイルド過ぎです。
「これからは、そのプレートが命綱だ。無くすんじゃねぇぞ」
プレートに血を垂らすと名前と-5000マール表示が浮かび上がった。
「毎月10000マール、外での金額として金貨1枚を徴収される。額が大きいがここの魔水晶は上物だ。濃度率は外の交換率と変わんねぇから、強えーヤツなら5日で稼ぎ出す。食いもんは魔水晶の換金時に食事代のコインと交換され、残りはプレートにマールとして加算される。追加の飯が欲しいヤツはプレートのマールで追加や変更すれば酒も飲める。食事コイン、通称『マズ飯』は最低食だ。1日3つしか交換されないが、これが無いと食堂で飯が貰えねから気を付けろ。今回は初めてだコイン1つやる。まずは飯食ったら1階層の案内と部屋割り、終わったらダンジョンの4階層まで連れて行く。」
確か銅貨1枚が100円、銀貨1枚が1万円ぐらいの価値で金貨は銀貨の100倍って『簡単ガイドブック“初めての異世界生活”』に書いてあったよな…って、えっ!って事は毎月100万円!高っ!!
「こん中で『ポーション生成』スキル持ってるヤツがいると聞いてるが?」
「あっ!はい!私です。LV.2です」
「ん?ガキじゃねぇか!何でこんなとこに連れてこられた。何しれかしたんだ?」
「んー大逆罪?」
「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「 !!!!! 」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
周りの視線が集中して痛いです。
「…おめ〜その年で…大物だな。まぁそんな大それた事して即処刑にされてねぇってことは冤罪だろうが、おいケイル!こいつを水汲み場とヤク爺の部屋を案内しとけ!おっ死んだヤク爺の代わりに薬を作らせる!案内したら4階層攻略と合流して案内しろ!他のヤツらは俺についてこい!」
洞窟内は思った以上に広く天井も高い、長く延びた道の左右には3階建ての建物がずらりと並んでいた。
入った直ぐに『換金所』と書かれた場所があり軍服着た人が5名ほど暇そうに座っている。
真っ直ぐ大通りを進むと中心辺りが少し開けており十字路には『新地区・ダンジョン・旧地区・換金所』とご丁寧に矢印と看板が立っている。案内人のケイルは左手側の『新地区』に進む。
「さっきの道を真っ直ぐ進むと転移水晶があり、さらに超えると2階層の入り口だ。ここら『新地区』は主に商人エリアで、囚人じゃない外のヤツらが監獄内で店を開いてる。『旧地区』は危ねーからまだ近づくんじゃねーぞ。住居スペースは主に壁に開けた穴の中だ。稼ぎのいいやつは新地区や旧地区の一部に家を借りて住んでいる。金額は高いが快適さは外の街と変わんねぇ。穴の入り口が多いから迷子になんなよ」
壁は段々畑の様に連なっており、中に入るとまるでアリの巣の様にあちらこちら穴や道が入り組んでいる。
左の壁穴の1階、一番奥の穴に入り真っ直ぐ進んだ突き当たりに来た。
「お前の部屋はここだ、前にいたヤク爺さんが使ってたモンはそのまま使っていいぞ。新しいモンが欲しけりゃ金貯めて商人達に注文しろ。外の5倍以上の値が付いてるがな」
ケイルが「〈ライト〉」と唱えるとで小さな光の玉がケイルの掌に現れた。机の上にあった筒状のガラス瓶に光の玉を入れると部屋全体が見えてきた。すごい。魔法や魔道具なのかガラス瓶もすごいが、穴部屋がスゴい。乾燥した草が所狭しとぶら下がっており。子供の身長になった俺なら真っ直ぐ歩けるが、普通の大人では掻き分けながらでしか前に進めない。
「本来なら6人部屋だが、爺さん一人で使ってたからこの有様だ、誰も入らねーし、使わねーだろうからそのままお前も住み着きゃいい。草は2〜4階層辺りに生えてんのを使ってたみたいだ。必要な水は食堂裏の水汲み場を利用しろ。水汲み場を案内したら飯食うぞ」
ヤク爺さんは3ヶ月前から行方不明になってる。「80すぎてたからな〜、ダンジョン内でポックリじゃね〜」とのこと。軽いです。
ちなみに薬爺さんではなくて名前が「ヤク」さんでした。
「おい!こいつがポーション作るのに水汲みにくるからよろしくな!」
洞窟に入って右側すぐが食堂スペースになっており。奥の調理場スペースを抜けると立派な滝が流れていた。滝壺から汲み上げれる様に紐付きの小樽が足元のおいてある。
じーっと睨みつけるおっさん(怖え〜)
「ユイルと申します。よろしくお願いします」
「料理長のセナルトだ」
……以上。
通称『マズ飯』食って他のメンバーと合流。ダンジョン内の案内をしながら4階層まで一緒に行き。各階層の入り口にある『転移水晶』に登録する。後は勝手に頑張んなとのことだ。
2階層は草原、青空が広がっていた。ダンジョン内なのに青空!ん〜異世界♡…あれ?畑仕事してる人がいる!ここダンジョンで合ってるよね!でも食の木しか食材が出来ないのに何育ててるんだろう?
新規収容者は俺を含めて53名。手下さん8名。手下さん達はちゃんと革製の防具と腰には剣を装備。新規収容者は背負籠とツルハシ、ボロい毛布、硬いパン1つ配給された。ちなみに俺だけピッケルだ。
「おめ〜ツルハシと同じ高さだから振るのは無理だろう(笑)」
酷い!俺の方がツルハシより30㎝は高い!…うん、多分20㎝は!
「初めに言っとくが変な気起こすんじゃねーぞ!4階層なんかで俺たちがヤられることはねー。何かあればお前達が犯人として全員刑確定だからな。分かったか!」
「はい!」
思わず、大声で返事をしてしまった。それも俺だけ。
「…いや、お前にヤられたなんてバレたら、逆に俺たちがお頭にヤられる」
今のステータスがバレているのか、この見た目なのかは知らないが俺の返事に対して微妙な表情をした。
2階層は『スライム』『ツノウサギ』ぐらいしか出没しない比較的平和なエリアだ。
3階層は少し開けた森の中に『ゴブリン』『コボルト』『レッサーウルフ』が出没。主に薬草はここでの採取で賄える。
4階層は『ゴブリン』『コボルト』『ウルフ』の上位種が出没。ここから魔水晶の採取が可能となる。
1階層は『スライム』だけで、見つけたら共同トイレである「ぼっとん」にインする。
ちなみこの世界のダンジョンの上階層には転移水晶以外は破壊不可などはなく壊したら壊れっぱなし。
なので1階層は壁に横穴掘って住居スペースが確保できている。
どのダンジョンもスライムが居なくなる階層からは丸一日放置された有機物、無機物、全てダンジョンに吸収される仕組みになっている。
逆に言えば、スライムが居る階層は物を放置しても、ダンジョンには吸収されない仕組みだが、スライムに吸収される危険があるとも言える。
そして下層階は『地殻変動』と称される「洪水」「大雨」「地震」「噴火」などがあり、破壊さらた部分は修復され、宝箱や魔水晶もリセットされるため『地殻変動』後はみんな張り切って採掘GO!
ここ3階層からは食の木が自生しており自分の食料としても良いし食堂や商人に販売もできる。(強奪されないように守死が必要)
だが、ダンジョン内の食の木はランダムに出没場所が変わり、なかなか発見できない。酒は換金所の役人に知られると五月蝿いので見つからない様に飲むことだとアドバイスされた。
(承知しました)ピシッ!(俺はまだ飲めんけど)
「今日はここまでだ。見張は三交代。見張以外は飯食ったらさっさと寝とけ」
ケイルの合図で各々寝やすい様に草を引き詰めたりしている。食事は出発前にもらったパンを1つ。横取りされる前に口に放り込んだ。硬くて水分取られるけど、カビてない分だけ美味しく感じる。
寝る前に小用するために草むらに入る。
(あれ?酒の匂いがする)
気になり香りがする方に歩いて行くとゴブリン5体が小さな酒樽抱えて寝ている。
寄りかかっている木を見ると、木に小さな酒樽がぶら下がっている。
(すげ〜これが食の木!)
採取してみたいがゴブリンが邪魔だ。戦うスキルや魔法が無いからここは手下さん達にゴマスリ用として使わせてもらおう。
〈ゴマスリその1〉
「あの〜」
「なんだ小僧、さっさと寝ろ」
「あっちでゴブリンが酒飲んで寝ていて、後ろの木を見たら酒樽が実っていて〜」
「なに!どこだ小僧案内しろ!」
手下さん3人と一緒に酒の成る木へGO!
ゴブリン達を瞬殺して木の下に来たが、届く範囲は全て採取された後のようで上辺あたりにしか残っておらず
「ちくしょー!枝が細くて足場が!」
3つしか収穫できていない。
〈ゴマスリその2〉
「あの〜そこの枝まで引き上げてもらえればあの辺りは届きますよ。軽いから、あれぐらいの枝の太さなら折れないだろうし」
「その手があったか!縄で引き揚げるぞ!」
すぐさま胴体に紐が括られグイグイ引き上げられる。
枝にまたがり小樽をひっぱる「ポン」取れた小樽はそのまま落とし、手下さんが下でキャッチする。
「ポン」「ポン」「ポン」「ポン」…意外と楽しい。
「次の枝だ!」隣の枝に移り「ポン」「ポン」「ポン」…なんか昔テレビで紐で繋がれた猿を椰子の木に登らせ、椰子の実を収穫される映像を見た事を思い出した…。
「すげー数取れたな」
「どうする?一度に運べないぞ」
「向こうまで運んでもその後どうすんよ…」
大量に採取されて喜んでいる手下さんに
〈ゴマスリその3〉
「アイテムBOX持ちですから、この量なら1階層に帰るまで預かりますよ」
「「「まじか!」」」
「おい小僧!起きろ、交代だ」
ドナドナより地べたの方が快適だったのかよく寝れた。
眠い目を擦りながら交代場所に行く。
既に交代した人たちがいる。やる事ないので生活魔法で乾燥させた細枝を焚き火に足していた。
「眠たいなら隠れてここでもうひと眠りしとくかい?」
「大丈夫です。ありがとうございます」
この親切な方はドナドナ仲間(収容者)であるサテスさん、元商人だ。
他所から来たから知らないことが多いと話すと、王都の事や食べ物の事、生活に使うスキルなど教えてくれた。
サテスさん自身の話もした。彼はライバルの商会に陥れられ店を潰され、サテスさんは監獄送りとなった。
「残された家族が心配だ」
知り合い達が奥さんと子どもを助けてくれている様だが、やはり心配だろう。ここは一生出られない監獄だから。
入れられている罪人の一部は冤罪であり、魔水晶採掘の為だけに無理やり収容されている。
ここの魔水晶は他国の魔水晶より品質が良く、数も多く採掘されるので今では国の重要な財源となっているが、元々は一つの国として栄えてた都市国家だったこの地をグリムモア王国が強引に併合させたという。
その後、ダンジョン内の街はそのまま監獄として使用されているため街の様な造りが残っており、収容人数が増えて壁に穴が開けられ今の形になったようだ。
買取り額は国で勝手に変更は出来ない取り決めになっている為、監獄内の物価を上げる事により、囚人達は採掘量を増やさざるを得ない状態になっている。
王国は人員を増強し、どんどん採掘させるのが狙いのようだ。収容すれば毎月金貨1枚、100万円分が徴収できる。生きていくには採掘に励むしか無い。今では5000人以上が収容されている巨大監獄となった。
下層は良い鉱物も多く取れるが、モンスターもかなり手強い。その為、現役ハンターや特殊なスキル持ちの人物が次々と無実の罪で収容される事が多発したらしく。
このことが原因で実力のあるハンターや有能な人物たちが挙って王国から離れていき、王国内ではハンター減少による討伐依頼の受注件数の大幅な減少が深刻化され、村や主要街道でのモンスター被害や野盗被害の拡大に拍車をかける事態となっていた。
また各地の食の木にも被害が続出、王都や都市部では深刻な食材不足に陥っている。
元々この国の食の木の保有量が少なかったこともあり、ここで採掘される魔水晶で食材や食の木を輸入を賄っており、魔水晶の採掘量を増やす手段として、さらにハンターや一般人を冤罪で収容。…お見事な「悪役王国」だ。
さらに魔人族はこの国を攻めたりしていない。攻めこもうとしている土地は昔から魔人族の領土で、侵略したのはこの国であり侵略された土地を魔人族が奪い返したという出来事はおよそ200年前の出来事だった。
やっぱり「あかん」勇者召喚だったわ。
この首輪についても教えてくれた。『奴隷の首輪』は『呪い』に分類される魔道具で『解除の鍵』で外れる。
稀にダンジョン内に出てくる宝箱から『解除の鍵』又は『解呪の鍵』が出土するので、宝箱目指して下層を進む猛者も多い様だ。
順調に進み、昼前には4階層の入り口まで到達した。
「ここから下の階層に魔水晶がある。お前達の稼ぎ場所はここからだ。下の階層の魔水晶の方が質がいいが、モンスターもそれなりに強くなる。戦いに自信のないヤツはすぐに逃げれる様に階層の出入り口辺りで採掘しとけ。まずは、転移水晶の登録を忘れるな。他の鉱物やモンスタードロップ品も換金所でも出来るが、商人の方が高値で買い取ってくれる。だが、魔水晶だけは換金所におろさねーと目を着けられるから気を付けろ。まだ時間があるから採掘したいやつはそのまま採掘しとけ、換金所は3の鐘から5の鐘と6の鐘から8の鐘までしか開いてね。んじゃ解散!おい小僧、お前はもう少しここに居ろ!おい、ガロウ!戻ってツマミ買って来い」
そう言い放つとケイルたちは早速に宴会準備を始めた。
この世界の肴って何だろう。とても気になる。
「今回はついてたぜ。まさか上物の酒の木が見つけたうえに小僧がいたから採取と運搬の手間が省けてよ〜」
ケイルが上機嫌で仲間と酒を飲み出す。
「枝ごと切り落としたらダメなんですか?」
枝を折れば簡単なのに。なぜしない?
「バカ!そんなことしたら品質が下がっちまうだろうが!酒の場合は他の食いもんと違って顕著に品質が下がるんだよ。下手すりゃ酸っぱくて飲めなくなっちまう!」
なるほど、品質が下がるのか。だから見かけに寄らず酒の実を丁寧に採取してたんだね。納得した。
ツマミが届き本格的な本格宴会開始。「残りの酒は後から部屋に取りに行く」って事で俺はドナドナ仲間であるサテスさんと同じくマイロスさん、フェスナさんと一緒に魔水晶を採掘してから戻る事にした。この二人も冤罪組である。
4人で警戒しながら採掘していく。途中でオレンジの食の木を発見したので俺が木に登り果実を落とす。収穫した果実は4人で山分けをした。
子供の頃はど田舎のじいちゃん家に暮らしていた事もあり木登りは得意だ。現在、メタボ気味なおっさんの体では無く、当時と同じ身軽な子供の体になった事で木にはするすると登れた。
「少し早いけど戻りますか。換金所や食堂も遅くなるとかなり混み合うと聞きましたから」
サテスさんの案に従い4人で1階層に戻る。
帰りは、転移水晶で1階層へひとっ飛び。楽チン楽チン。
換金所は6の鐘が少し過ぎたところだったのでまだ人は並んでいなかった。6の鐘とは14時にあたる。
ちなみにこの世界も1日は24時間。一年は365日だが、ひと月は全て30日で曜日と言う概念は無い。月は12ヶ月だが通常月とは別に年末年始を表す「歳神月」があり「神の1の日」から「神の5の日」、歳神様を祝い良い年を願う5日間である。これが過ぎると通常月として1年が始まる。季節的には日本の2月下旬、雪解けの季節で、一般生活では「一の月」「二の月」と簡略した表現で月を示すのが主流だが、本来「女神ティラ様の月」「武神ガデラス様の月」など正式月名があり主に王宮行事などに用いられている。
時間については生活魔法で『タイム』を取得出来れば、日にちや時間が正確に確認できるが取得者が少ないため、1の鐘の早朝4時から10の鐘の夜10時まで1刻(2時間)ごとに鐘がなる。3の鐘なら朝の8時、8の鐘なら夜の6時だ。
「ん?新入りか?」
「はい」
「まずカードを出して魔水晶を金属の板の上に乗せろ」
言われるがままカードを出し、魔水晶を乗せると目の前にステータスボードの様なパネル画面が出てくる。
『濃度10802M』
「端数は切り捨てになる。食事コイン2枚と8マールだ」
濃度100M=1マール=100円、マズ飯コイン50マール、つまり5000円
山岳地の食料は貴重だが1コイン5000円とは、こりゃ頑張らねば。
「他の品の交換も出来るんですか?」
「あぁ、そこの立て札に書いてある品は買取りは出来る。それ以外は商人達に売れ。次!」
食事コイン2枚とカードが返却される。
そのまま、4人で食堂に向かい「「マズ飯」を食べる。特にスープ、う〜んマズイ。マズイはずだが、まともな食事が嬉しく感じてしまう。
みんな護送中よりましだと笑って食事をした。コインと一緒に追加料金を払えば、水や肉、酒、卵、追加のパンなどが食べれるそうだ。
3人は同室で、本日収穫したオレンジは部屋で召し上がるそうな。じゃないと古参の方々に横取りされちゃうからね。どこでも弱肉強食の世界です。
「部屋に仕切りがあるから今はまだ寒さに耐えられそうですが、ここは山岳地ですし、冬は極寒の寒さになるため早めに毛布や防寒着を購入しといたほうが良さそうですね。夏は比較的過ごしやすそうなのは救いですが」
「ここの商人も冬季は山道が閉鎖状態なので遅くても八の月までしか営業してないと聞きましたよ」
「キャラバンはひと月毎に訪れるそうですよ。やはり年の最後は八の月みたいですね。買いそびれないよう注意しなければ」
流石は元商人さん達、どこからその情報仕入れて来るの?一緒にドナドナされて来たのに、これからも色々情報をいただこう。
本来は空いてるベットにランダムに入れ込まれるらしいが、同室になれたのも冬を越せなく亡くなられた方が多く空室が増えた事で選べれたそうだ。
いつの間にか食堂が混み出したので本日は解散となった。
明日も4階層で採掘予定だが、朝はどこも混み合うので現地集合にした。俺だけ別部屋だから仕方ない。
まずは、ここでの生活基盤を整える。頑張らねば、脱出前に凍死確定になってしまう。がんばれ俺!
決意を胸にして、新たな俺の生活拠点となる薬草いっぱいの穴部屋に帰った。




