『兄が婚約破棄をされまして』【漫画原作原稿、没案】
『兄が婚約破棄をされまして』
【ストーリー】
○舞踏会会場
たくさんの参加者の中、一人の男がドレスを着た女性の肩を抱き、ユージンを突き飛ばす。
デュハン「ユージン・クラシェック! 貴様のような男、メルティーナ嬢は相応しくない! この場で婚約破棄しないならば決闘を申し込む!」
ユージン「ひええぇ……!?」
○翌日、とある屋敷。
新聞で『決闘を恐れ、婚約破棄を選んだ臆病者!』と書かれる兄にプンスコ怒る少女……の皮を被った妹ダイアナがその新聞をテーブルに叩きつける。憤慨。
ダイアナ「信じられませんわ、あの尻軽女! 公爵家のディュハンを誑し込んで、兄さんとの婚約をなかった事にするなんて!」
※『ダイアナ・クラシェック。ユージンの妹』のようなテロップ?で十分かと思います。
リーガル「ユージンは閉じこもったままなのかい?」
※『リーガル・ラシード。ユージンの幼馴染みで親友』のようなテロップ?で十分かと思います。
ダイアナ「ええ! 夕飯も朝食も手つかずです。あの食べるの大好きな兄さんが……」
リーガル「メルティーナ嬢には相当入れ込んでたからなぁ。かなり貢物もしていてし」
ダイアナ「ますます許せない……! なんとかしてギャフンと言わせたい!」
地団駄を踏むダイアナ。
N『ここは二つの強力な武力国に挟まれた小さな王国、オルレオス。四つの公爵家から王を選定するのが習わしであり、デュハンとメルティーナはその公爵家のご子息ご令嬢であった。
クラシェック伯爵家はその国王選定の儀にて投票権利を持つ、数少ない伯爵家の一つ。
今回のユージンとメルティーナの婚約は、誰が見ても分かりやすい政略結婚である』
ダイアナ(デュハンのやつ……どういうつもり? 我が家といざござを起こしたって、あいつに利益なんかないと思うんだけど……。いえ、あんな奴らどうなってもいいわ! そんな事よりも兄さんをなんとかしないと! このままだと恥をかかされたまま自殺しそう)
ダイアナ「兄さんに新しい婚約者を探しましょう! リーガル、手伝って!」
リーガル「いいよぉ。幼馴染がへこんでるの見るの悲しいしね。まずはどうしようか?」
ダイアナ「婚約者のいない方を調査ね。そのあと、その方が出るパーティーを梯子して声をかけて話を聞く」
リーガル「ふむ、正攻法だね」
N『こうして二人はユージンの婚約者探しを開始した。しかし、一ヶ月経っても婚約者になってくれる女性は見つからない。そして——』
※リーガルが忙しなく働くダイアナを優しい眼差しで見ていたりする。
○クラシェック家、二階、ユージン部屋の前。
扉の前に憤慨するダイアナの姿。
ダイアナ「兄さん! いい加減部屋から出てきて! ご飯もあんまり食べないし、仕事も滞ってるし! それでもこの家の跡取りなの!? しっかりしなさい! ちゃんとお嫁さんを探しなさい!」
ユージン「……」
ダイアナ「ごるぁ! なんとか言いなさい!」
扉を蹴飛ばすダイアナ。
ユージン反応なし。
リーガル「ユージン、ダメ?」
ダイアナ「ダメだわ、出てこない」
リーガル「困ったねぇ」
リーガル、ユージンの部屋の扉を軽く叩きながら
リーガル「ねぇ、ユージン、デュハンの目的が分かったよ」
ダイアナ「?」
リーガル「アイツ、メルティーナ嬢と結託して、ウィズ公爵家の国王候補に成り代わろうとしているんだ。学生時代同じクラスだったシェルエッティ・ウィズ公爵令嬢、覚えてる?」
ダイアナ「学生時代からデュハンが執拗にアピールしてた、ちょっと地味で大人しいご令嬢よね。いつもお兄様で、今回の国王候補の一人であるシャルル様の後ろに隠れてるような……」
リーガル「そうそう。多分デュハンは昔から国王になりたくて、シェルエッティ嬢にアピールしてた。でも相手にされず卒業になり、いよいよ半年後には次期国王選定が始まる。それで焦って、メルティーナ嬢と結託して今回の事を思いついた」
ダイアナ「? 今回のって、兄さんの婚約破棄の件? あの二人と国王選定になんの関係があったの?」
リーガル「これを見て」
リーガル、ダイアナに新聞を手渡す。
ダイアナ、新聞を開いて目を見開く。
ダイアナ「夜会で大喧嘩!? メルティーナとデュハンが!?」
リーガル「そう。新聞に載るほどにね。多分ここで『完全に二人の仲は終わった』と思わせて、メルティーナ嬢がシャルル様にアピールしに行く流れだと思うよ。いやはや恐ろしいね」
ダイアナ「つまり、兄さんとの婚約破棄は『フリーになる』ために仕組まれた事? シャルル様にも婚約者はいたんじゃないの?」
リーガル「ところがどっこい、そのシャルル様の婚約者にデュハンが手を出してる事が原因で、新聞に書いてある大喧嘩に発展したんけなのよ」
ダイアナ「うっわぁ……。でもあからさますぎない?」
リーガル「それと理性は別物ってね」
ダイアナ「最低ね」
ガチャ、と扉が開く。
中から死んだような顔のユージンが出てきて、二人は驚く。※食事が喉を通らない日々が続いていて、ぽっちゃりが痩せてイケメンになっている。
ユージン「シェ、シェルエッティ嬢は……」
ダイアナ&リーガル「?」
ユージン「落ち込んでおられないのか? ずっと言い寄ってくるデュハンに心動かされていたのに……」
ダイアナ「そうなの!?」
ユージン「……デュハン……許せない……シェルエッティ嬢はあんなに悩んでいたのに……!」
ダイアナ&リーガル「……」
きょとんと顔を見合わせるダイアナとリーガル。すぐに笑顔になる。
N『自分の事ではなく、シェルエッティのために奮起したユージンは、数日後、とある夜会に参加する事にした。もちろん、ダイアナとリーガルも一緒に』
○舞踏会場。
ドレス姿でリーガルとユージンにエスコートされるダイアナ。
シェルエッティを見つけて、話しかける。
ダイアナ「お久しぶりです、シェルエッティ様」
シェル「まあ、お久しぶりです。ユージン様も、婚約破棄以来体調を崩されていたとお聞きしましたが……ずいぶんお痩せになられましたのね」
ユージン「あ、ああ、お恥ずかしながら……。あの、シェルエッティ様は、大丈夫ですか?」
シェル「え?」
ユージン「デュハンの事……ずっと悩んでおられたでしょう? ……えっと、その……」
シャル「……少しあちらでお話ししませんか?」
ユージン「!」
ダイアナ&リーガル「……」
顔を見合わせて満足そうな顔をするダイアナとリーガル。
ユージンとシャルエッティを見送って、少し離れたソファーで一休み。
リーガル「良かったねぇ、上手くいきそうで」
ダイアナ「あとはデュハンとメルティーナをどう地獄に突き落としてやるか、ね」
リーガル「放っておいても自滅しそうだけど……主にデュハンは」
ダイアナ「ダメよ! 私が許せないわ! うちの兄さんに恥をかかせて馬鹿にして! 私とリーガルだってここ一ヶ月、行かなくていい夜会にまで足を運んで大変だったじゃない!」
めちゃくちゃニコニコしているリーガルに気づくダイアナ。
それに気づいて睨み上げる。
ダイアナ「なに笑ってるの」
リーガル「うん、大変だったけど楽しかったからね」
ダイアナ「は?」
リーガル「ねぇ、ダイアナ。僕たちも婚約してしまう? 君とは元々婚約の話もあったし……」
ダイアナ「え? えっ! なに言い出すの!?」
真っ赤になるダイアナ。
リーガルはダイアナの手を握る。
リーガル「“人のために怒れる人”って、素敵だと思うんだよね」
ダイアナ「っ……」
顔が近づいてくるので、後ろへ仰反る。
場面が変わり、ユージンとシャルエッティのところへデュハンが近づく。
デュハン「おいおいおいおい! なんでユージンがここにいる? ……ユージン、だよな? 痩せた? あ、まあ、いい」
ユージン「デュハン」
デュハン「シェルを娶るのは俺だぜ。お前みたいな腰抜け、シェルに相応しくない。分かってんだろう?」
ユージン「お前、メルティーナと恋人になったんじゃないのか」
デュハン「ああ、彼女とはもう別れた。やはり俺にはシェルしかいないと思ってな」
ダイアナ「はあ? そんな話今更誰が信じるっていうの!」
飛び出すダイアナ。追ってくるリーガル。
険悪な空気と、野次馬の楽しそうな眼差し。
デュハン「事実さ! だからユージン、シェルに近づかないでもらおうか!」
ダイアナ「なに言ってるのよ。あなたシェルエッティ様のなんなの? 恋人でもなんでもないじゃない。どの立場からそれが言えるの?」
デュハン「なんだと……? 女のくせに生意気だ!」
ダイアナ(え?)
デュハン、テーブルからワイン瓶を掴み、ダイアナへ振りかざす。
誰もそこまでやると思っていなかったので驚愕。
周囲から悲鳴も。
ダイアナに当たる直前、リーガルが左腕でワイン瓶を受け止める。
ワイン瓶は割れて、中身はリーガルにかかる。
ダイアナ「リーガル!」
リーガル「……」
デュハン「……っ」
睨みつけるリーガルにたじろぐデュハン。
しかしすぐに睨み返す。
ユージン「デュハン! 貴様! 俺の妹に! リーガル! 大丈夫か、怪我は!?」
リーガル「んー、ちょっと服切れた。けど大丈夫」
ユージン「決闘だ! デュハン、もう許せない! シェルエッティ嬢を振り回し、妹と親友に暴力を振るわれては俺だって——むぐ!」
リーガル、ユージンの口を塞ぐ。
リーガル「デュハン、とても個人的な事なのだけれど」
デュハン「あ?」
リーガル「今回の件、一番腹が立っているのは僕だと思わない? 幼馴染の親友は傷つけられ、その妹を絶賛口説いている最中を邪魔され、挙句その想い人を瓶で殴られそうになる。君は僕の大切な人を傷つけすぎた」
デュハン「……!」
手袋を投げるリーガル。笑顔。
ざわつく会場内。
おずおず拾うデュハンに満足気な顔をしたあと、リーガルはダイアナの元へと戻ってくる。
リーガル「ギャフンと言わせてくるね」
ダイアナ「……ええ、この件が終わったら婚約の手続きに移りましょう!」
○庭へ剣を持って移動。
バトルシーン。
リーガルが勝利。
ダイアナに跪いて求婚(あえてセリフなしなイラストだけとか妄想滾るんですがどうでしょう)
ダイアナN『この決闘で、デュハンはウィズ公爵家よりシェルエッティ嬢に接近禁止を言い渡される。しかしそれでは終わらず、あの器の小さな男はメルティーナが王妃になるためシャルル様に近づいた事も暴露。まあ、素晴らしくみっともない道連れで、二人とも失脚した。これはあとになって分かった事だけど、シェルエッティ様は兄の事が学生時代から好きだったんですって。だからデュハンに言い寄られてとても困っていた。兄とシェルエッティ様はもちろんその後無事に婚約。さらに、公爵家シェルエッティ様と婚約した兄は国王候補に選出された。選ばれるかどうかは分からないけれど、妹として兄の事は精一杯応援するつもりだ。そして、私は……』
草原を駆ける馬。ダイアナとリーガルは密着して二人乗り。ダイアナの手にはバスケット。
ダイアナ「きゃー! 風が気持ちいい!」
リーガル「でしょー? やっぱり遠乗りはいいよね」
草原に布を敷いてバスケットからお弁当を出して二人でイチャイチャ。
ダイアナN『私にも、素敵な婚約者が出来ました』
終わり
読み切り用に書いて送ったけど没ったやつです。
多分普通に私がいつもの十万文字の一作として書くのも少々物足りないので、中編ならちょうどいいかもしれない?
今見るとまあ確かにこりゃあ没やなぁ、と思う。
というわけで供養。
漫画原作の書き方、多分これから需要も増えると思うので参考までにこちらに載せる事にしました。




