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第80話 うさ耳魔女ウサリーとまぼろしネズミ 前編

「どうだわさ、このタンポポで作った花輪?」


 うさ耳魔女のウサリーが、タンポポで作った花輪を俺様に見せた。白くてまん丸いウサギだが、顔は人間に近く、赤いチョッキを身に付けている。赤いとんがり帽子を被り、白い耳がぴょこぴょこ動いていた。

 前は黒いローブを着ていたが、イメージチェンジをしたそうだ。俺様にはどうでもいいことだがな。


 そうそう、ここはエアツェールング王国の王都の中だ。そこの森の中に魔物であるまぼろしネズミの俺様は来ていた。

 人間の住む町は高い城壁に囲まれているが、小柄な魔物である俺様たちは抜け道を使ったのだ。

 この辺りの森は、俺様たちの住む野と比べると、綺麗な花が見つかるのである。大抵野生の花は魔物に食い散らかされていた。だから踏みつぶされて立ち上がったような形ではなく、美しく儚げな風貌であった。


「ああ、いいんじゃないの? 俺様にはどうでもいいことだし」


 俺様は気のない返事をした。事実、俺様にとっては興味のない話である。

 ウサリーはむっとするが、そっぽを向いた。すると臀部に激しい痛みが走る。

 何か鋭い針のようなものが突き刺さったのだ。


「だめですよまぼろしネズミさん。女の子のお話を無下にするなど許されません」


 優しくも力強い口調の女性だ。相手は真っ白いチンチラである。身体は大型犬ほどで、額に一本の角が生えていた。ピンク色の長い耳が動いている。

 いっかくチンチラという魔物だ。チンチラに角が生えただけの魔物だが、目の前にいるのはネームドモンスターのシスター・チララというメスだ。人間の修道女が身に付ける頭巾を被っている。ちなみに胸には六芒星を模ったペンダントを身に着けていた。

 時折親指と人差し指で三角形を作る。破壊神を崇拝する祈りだそうだ。ちなみに破壊神はドクメント帝国では、ヘルシャフトという名前で人間の補佐をしているという。


「いでで、何をしやがる!!」

「品のない言葉は慎みなさい。あなたはウサリーさんとふたりっきりなのですよ。もっと彼女を大切にしなさい」

「いや、シスターも一緒じゃないか」

「私の事は案山子かかしか、何かと思っていてください。おふたりは気になさらず、かくれんぼをしたり、馬跳びをしたり、喉が渇けば泉の水を飲み、お腹が空いたらタンポポをたくさん食べてくださいな」

「もう、シスターったら♪」


 なぜかウサリーは顔を真っ赤にした。シスターの話がさっぱりわからない。なんで人間の住むところまできて、かくれんぼだの、馬跳びなどせねばならないのだ。まあタンポポを食べるのは問題ないな。人間の作る料理はうまいが、野生のタンポポはあれはあれで、美味だからね。


「ほらほら、ウサリーさんはとても悲しそうな顔をしていますよ。こういう時はちょっと考え事をしている最中なのです。どうしたのと訊ねなさい」

「すみませんシスター。俺様はこいつが悲しそうな顔には見えません」


 シスターは目が悪いのだろうか。なんとなくだが額の角に青白い火花が散る。彼女は一般的ないっかくチンチラと違い、破壊神の裁きのいかづちを使えるのだ。その威力は破壊神の墓石を破壊する力を持っているという。


「……ウサリーどうしたの」


 俺様は投槍な口調で言った。するとウサリーは見るからしょんぼりとした表情になる。


「あたち、ちょっと考え事をしているんだわさ」


 先ほどのシスターが言った言葉と同じでした。


「ふぅん、そうなのか。用事が終わったらさっさと帰ろうぜ。ここは人間の領域だ、あいつらに見つかったら殺されても文句は言えないぜ」


 その瞬間、俺様の尻に電撃が走った! やったのはシスターだ。電気を身にまとった角で俺様を刺したのだ!!


「ふふふ。この期に及んでふざけた回答は望んでおりません。人間が来ても大丈夫ですよ。私の裁きの雷で、こんがりローストにしてやりますから」


 うわっ、なんて残酷なんだ!! いいや、人間相手なら問題はないな。むしろ彼女の方が正しいね。


「……さっきから何を考えているんだよ」

「うん、あたち願い事をしているんだわさ」

「願い事ってなんだ? 太ったからダイエット―――」


 グサ。


「ぐえええええええ!! 頭刺された! 血が噴き出てる!!」

「ふふふ。黙ってお話を聞きなさい」


 見た目は可愛らしいチンチラだが、シスターは行動派で容赦ないのだ。

 そんでもってウサリーは俺様に降りかかる暴力の嵐など気にも留めないでいる。


「うんとね、いつも、いつも、いつまでもアンタと一緒にいられますようにだわさ」


 ウサリーはもじもじしている。一緒にいられますようにだって。てっきり結婚か何かと思ったぞ。それなら問題はないな。


「ああ、いいよ。一緒にいるくらい、どうってことはないさ」

 

 するとウサリーの目はまんまるくなった。何を驚いているのだろうか。シスターはニコニコしている。上機嫌だ。


「ねえ、そのこと、もっと一生懸命に願うだわさ!」

「ああ? なんでそんなこと―――、いいや、願うよ。これから先、いつも、お前と一緒にいられますようにと!!」


 シスターは目を光らせながら、角を見せつけている。返答を間違えばその角が容赦なく襲い掛かるだろう!!


「本当にそう思うだわさ?」

「うーん、本当にそう思っているよ。一緒にいるだけなら問題はないしね」

「―――!? じゃああたち、この先、いつも、アンタと一緒に、一緒に―――」

「なんだぁ? 魔物がこんなところに忍び込んでいるぞぉ?」


 ウサリーの言葉はさえぎられた。相手は人間の男だった。二十代の若者で、品のなさそうな連中だ。日焼けした肌に、シャツ一枚で麻のズボンを穿いた与太者のようなたたずまいだ。

 背後には気の弱そうなやつらもおり、びくびくと飼い犬のように首輪に鎖で繋がれ、引っ張られてきた感じがする。


「おうおう、ネズミにウサギにチンチラじゃないか。ずいぶんかわいくて弱そうな魔物じゃないか」

「しかも言葉をしゃべっていたな。魔物のくせに気持ち悪いったらないね」

「それにいつも一緒にいたいだってさ。魔物のくせに人間さまと同じプロポーズなんかしているよ、胸糞悪いものを見たな」

「くっくっく……。王都に魔物が忍び込んでいるんだ。殺したっておとがめなしに決まっているぜ。さっさと殺して楽しもう」

「ああ、なるべくいたぶって殺そうぜ。蹴り飛ばすのもよし、高い崖から何度も突き落とすもよし、手足をバラバラにして泣き叫ぶ声を堪能するのもよしだな」


 人間たちは邪悪な笑みを浮かべていた。なんとなくだがこいつらはこの国の人間ではないと思う。少なくとも王都の人間にこんな気分の悪い発言をする奴はいなかった。

 ウサリーは涙目になっている。先ほどの言葉を邪魔されたからだ。プロポーズとか言っていたが何のことだかさっぱりわからない。


「……ふふ、うふふふふ。ウサリーさんの告白を邪魔したばかりか、侮辱する発言。破壊神ヘルシャフトさまの名において許しませんよ」


 シスターは乾いた笑い声をあげる。ヤバイ!! この人がこの状況の時は、メチャンコ怒っている証拠だ!!

 ああ、こいつら、終わったわ。


「ああん、チンチラの化け物が何を言っているのかな~? ヘルシャフトは皇帝陛下の愛人の名前だろ?」

「ひひひ。こいつのケツ穴に鉄の槍を突き刺してやるんだ。ぴくぴく痙攣する様をたっぷり楽しませてもらうかな」

「俺は毛に火をつけたいね。くるくるのたうち回りながら死ぬ様を見物したいよ」


 こいつらシスター・チララのことをまったく理解していない。正直こいつらを前にしても恐怖は沸いてこない。むしろハーゼひとりの方がもらしそうである。


「人間どもよ、自分の愚かさを思い知りなさい!!」


 ピカァ!!


 グエエエエエエエエエエエ!!


 シスターの角が光った。広範囲で電撃が飛び散る。男たちはあっという間に体がしびれ、泡を吹いて倒れて行った。


「ふぅ、ひさしぶりの電撃で魔力がすっからかんです。一休みさせてください」


 シスターはぺたりとしりもちをついた。息苦しそうである。シスターに喧嘩を売るなど馬鹿としか言いようがないね。無知は恥だな。


「……ところで先ほどの返事だけど、あたちはいつも一緒にいたいだわさ」

「ああ、さっきの返事ね。俺様も一緒にいていいと思っているよ」

「まぁ、ウサリーさんまぼろしネズミさんおめでとうございます! では次の満月の日に結婚式を挙げましょう。タンポポの花を摘んで、耳にさすのです。大魔女さまや、ウサリーさんのお姉さん、他にも大勢の方々がお祝いに来るでしょう!!」


 シスターがとんでもないことを口走った。ええ!? 結婚式だって!? なんでそんなことになったんだ!!


「ふふふ、結婚と言っても特別なことをする必要はないですよ。先ほども言ったとおりにいつも一緒にいるだけでよいのですから」


 シスターはニコニコしていた。ウサリーはもじもじしている。俺様は取り返しのつかないことをしてしまった。逃げ出したい!!


「逃げたら串刺しの刑ですよ?」


 シスターの鋭い目が突き刺さる。もう逃げられない。俺様は観念した。


「ぐぐぅ、ががががが!!」


 倒れた人間たちが起き上がった。まるで操り人形のようである。いったい何事かと思った。

 するとこいつらの身体から黒い煙が上がった。煙が晴れると姿はまったく変わっていたのだ。

 黒い毛に覆われ、目は赤く、牙の生えたあんさつざる。

赤く牛のように大きく、額が金槌のように盛り上がったとっしんドッグ。

そして巨大なカラスの魔物、スニークカラスへ変身したのだ。

どれも俺様には敵わない魔物だ。シスターならなんとかなるが、今は魔力切れでどうにもならない。


「ウサリー、お前はどう思う?」

「だめだわさ。あたちの魔法じゃ無理だわさ」


 ウサリーは涙目である。大魔女さまの弟子だが、自分の力量を知っているのだ。

 ちなみに魔物になっていない人間もいるが、腰が抜けてて逃げ出せないでいる。


「……ウサリー。お前だけでも逃げろ」

「バカ言うんじゃないだわさ! もうあたちたちは一心同体、死がふたりを分かつまで一緒だわさ!!」


 そんな大したものだったのか。まあ、どうでもいい。どうにかしてこの場を切り抜けないと。


「あら、これはいったいどういう状況かしら?」


 後ろに真っ白い髪の褐色肌の人間の女が立っていた。

今回のお話は『しろいうさぎとくろいうさぎ』を参考にしました。

アメリカのガース・ウィリアムズの作品です。

いっかくチンチラは動画サイトで見たチンチラがかわいかったので出しました。

モデルはドラクエⅢのいっかくうさぎですね。

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