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異世界転生してバニーガールを流行らせます  作者: 江保場狂壱
第一章 どうしてこうなってしまったのか?
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第六話 揚げ物は出来立てが命だよね

「それではみなさんに料理を教えましょう」


 私は職員たちを再び調理場へ集めた。もうじきお昼だ。ついでに昼食も作っておく。

 隣にはマギーが立っている。まるでマネキンだ。


 調理台には野菜や肉、小麦粉などが置かれてある。すべて市場で購入したものだ。

 もっとも仕入先はてんでばらばらで、値段にばらつきがあるという。

 しかも品質も同じだ。これは後できちんと統一させなければならない。


「まずは揚げ物を作りましょう。これはマッケンゼン氏が食したものです。まずはパンを砕いて粉を作ってください。そしてイモの皮をむき、煮てください」


 作るのはコロッケだ。イモを柔らかくし、塩で味付けする。それを小麦粉でまぶし、溶き卵で包める。パン粉をまぶし、油で揚げた。


 それを数十個まとめた。職員たちに試食してもらう。

 全員恐る恐る口にしたが、皆驚いていた。


「すごい。ふかしイモとはまったく違う」

「このサクサクした触感がなんとも面白いよ」

「前のマスターが、マスターの座を譲るのもわかる気がするね」


 みんな感動していた。マギーも食べているが、無表情だ。

 すると彼女は私に向けて、親指を立てる。満足そうでなりよりです。


「これはコロッケというものです。基本的にイモを使いますが、中には引き肉などを入れる場合もあります。さらにカボチャなど色々あるのです。まずは基本のイモから作りましょう」


 そう言って職員たちに作らせる。ほとんどがぎこちない手つきで作っていた。

 まあ、私も頭の中のレシピを参考にしているだけで、作り慣れているわけじゃない。

 それでも彼らは懸命にコロッケを揚げてくれた。


「皆さんもお気づきでしょうが、揚げ物は作るのは手間ですが、一度にたくさん揚げられるのが特徴です。未亡人など人手のない店には最適な料理と言えます。もっと簡単にフライドポテトというものがありますが、今作りましょう」


 そう言って私はイモの皮をむき、適当な大きさに切る。それを油で揚げ、塩をまぶす。

 あっという間に完成した。


 職員たちはすぐに口に入れる。コロッケの前例があるので、躊躇なしだ。


 みんなフライドポテトをおいしそうに食べていた。コロッケよりさらに簡単であり、軽食に最適だからだ。


「コロッケはそのまま食べてもおいしいですが、パンに挟んで食べてもおいしいですよ。さらにシチューなどにいれても大丈夫です」


 みんな感心していた。


「他にも素揚げといい、衣をつけずに野菜や肉を揚げることもあります。あと天ぷらといい、水で溶いた小麦粉にからめて揚げる料理もあります。どちらも大量に揚げられるので、手間がかかりません」


 私が揚げ物を提案したのは、手間がかからないためだ。もちろん下ごしらえは必要だが、人手がかからない。


「それと油料理の後始末ですが、油は3回か4回が限度です。捨てる場合は、そのまま捨ててはいけません。綿に浸して吸い取ってもらいます。それを燃料の代わりにするのです」


 ちなみに綿は一般に流通しており、結構安価で手に入る。童話に似た世界だが、きちんとした歴史公証などされておらず、神のご都合主義がほとんどだ。

 昨日の夜、職員の教育に必要な情報を検索し、マギーと共に調整したのである。


「すごい……。油を使った料理もすごいけど、後始末もきちんと考えているなんて……」

「前のマスターはひたすら珍しい食材を焼くだけだったからな」

「そうそう。豚亀や、チキンリザードを狩れとか無茶を言うからね」


 豚亀は豚が亀の甲羅を身に付けた魔物で、チキンリザードは、とかげにニワトリのトサカと翼、鳥の脚が付いている魔物である。

 どちらも一般人には手強い魔物だが、前のマスター、マッケンゼンなら一撃で仕留めたそうだ。

 なんとも無茶な行為を要求するものだな。私なら一撃で屠れるが、私を基準にしてはいけないね。


「私の料理の引き出しはまだまだあります。ですが今のままではいけません。ギルドに入会金さえ収めればそれで終わりにしてはいけないのです。私は料理ギルドを変えます、いいえ、今までの悪習を叩き潰し、新しく生まれ変わらせるのです。変化を嫌うならどうぞここから去ってください。私はあなたたちを引き留める資格などないからです」


 私は力を込めて宣言した。職員たちは一瞬固まったが、すぐに気持ちを引き締めた。


「私たちはマスターハーゼについていきます!!」

「どうせ俺たちは貴族の部屋住み身分、どこにも居場所はありません!!」

「それならハーゼさまの元で見た事のない世界を見たいです!!」


 あれ? この人たち、しれっとなんか言ったよ。貴族の部屋住みだって?


「はい。私を含めて、彼らは貴族出身です。もっとも次男や娘なので家に居場所はありません。私の実家シュピーゲル家は侯爵ですが、私自身は3女なので問題はないです」


 そうか。どこか気品があると思ったら、貴族の関係者だったのか。

 するとマッケンゼンも貴族だったのかな?


「あの人は元将軍で、息子に跡を継がせて料理ギルドを作ったのです」


 あの人、将軍だったのか!? なんでそんな人がギルドを作ったのだろうか。まったく意味が分からない。


「力だけはあるんですよ、力だけは。魔物の大群を一掃する実力はあるのです。それを前国王さまが手綱を握っておりましたね」


 ああ、なるほどね。というか前国王というと、今の国王とは違うわけだな。

 

「次は仕入れ先の農家などを視察します。私の狙いはすべてをひとつにまとめることです。そのためならどんな手段も取りますから」


 私はそう決意するのであった。

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