表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転生してバニーガールを流行らせます  作者: 江保場狂壱
第8章 まぼろしネズミはとっても不幸
56/114

第54話 ヘンゼル陛下の暴露

「よく来たなハーゼよ。余はヘンゼル・ド・エアツェールング三世である!!」


 俺様は人間の城にやってきた。いや、罪人の如く、無理やり連れてこられたの方が正しい。

 入る前はなんて大きな建物だと思った。ヴォルケのような雲魔人が住んでいてもおかしくないね。白い石でできた山みたいに見えたな。

 あれがアリのような人間の手で作られたというから、驚くしかない。気の遠くなるような年月をかけて、コツコツと積み上げたのだろう。

魔物なら手っ取り早く、魔法で岩山の中を溶かし、部屋を作っている。味気ない無骨な造りが難点だけどね。


「ははぁ、ヘンゼル陛下。ご機嫌麗しゅう」


 ハーゼもひざを折り、頭を下げる。ひざまずく姿も高貴な感じがするね。相手は偉そうな若い男で王座に座ったままだ。こいつの方が強いのだが、人間は自分が弱くても、権力の強い方に逆らわないそうだ。

 ちなみにヴォルケと人間のエリザーベトも一緒だ。ヴォルケは白いワンピースを着ていたが、エリザーベトはハーゼと同じバニースーツを着ていた。

 これは俺様の指示、というかバーニーに命令されたんだけどね。遠隔操作で扱う操り人形にされた気分だ。


「事情は事前に手紙をもらっている。今回は余の妹、グレーテルが迷惑をかけたな。この件は余の責任である、なぜなら妹の悪だくみは耳に入っていたのに、それを放置したからだ。よって悪いのは余である、許してくれハーゼ」


 ヘンゼルという男は王座に座ったまま、尊大な態度で、謝罪をした。右には鎧を着た活発そうな男が立っており、左には銀髪で眼鏡をかけた神経質そうな男が脇を固めていた。

 眼鏡の男は、なんか顔が曇っている。その視線はエリザーベトの方に向けられていた。

 残念そうな人を見るような目つきだが、本人はまったく気づいていない。


「……姉上、その恰好は一体何なのですか?」

「フローリアン! 服装に無頓着なあたなが気づくなんて、すごいじゃん! おねーちゃんは、びっくらこきまろだわ!!」

「……あなたに服装の事で、言われる筋合いはありません」


 フローリアンと呼ばれた眼鏡の男は、こめかみをぴくつかせていた。エリザーベトはブリッジしたままなのはいうまでもない。こいつは赤いバニースーツを着ていた。ちなみに自主的に着替えたのだが、理由は以下の通りだ。


「まずこのスーツは素晴らしいわ! 背中が開いているから、大地の気を直に感じられるの! さらにこの頭に付けたウサギの耳! これを地面につけると大地の声がきれいに聴こえるのよ! そしてこのハイヒールという靴! 一見大地につける部分は少ないけど、網タイツのおかげで、大地の気を吸い込むことができるわ! これは世紀の発明で、作ったハーゼさまは最高よ! ヘンゼルはこの服を国民に配布するべきだわ!!」


 エリザーベトはブリッジしたまま、口から唾を飛ばしながら叫んだ。ハーゼと同じく、眼鏡をはずすと美人らしいが、残念な性格のため、男は寄ってこないらしい。本能でこいつはやばいと感じるそうだ。

 正直、俺様もこいつは魔物と呼ばれても、違和感はないな。

 ハーゼもその様子を見て、ため息をついた。こいつも苦労しているんだ。


「してそこの魔物よ。そなたが我が妹、グレーテルを人質に取っているのだな?」

「おっ、おうよ! これを見ろ!!」


 ヘンゼルに言われて、俺様はぬいぐるみのグレーテルを物のように突き出す。


「お兄様~、助けてくださいまし~」

「ふん、すべてはそなたの軽はずみな、行動のせいではないか。しばらくは不自由なぬいぐるみに身をやつし、反省するがよい。まぼろしネズミ殿よ、妹が反抗的な態度を取れば、容赦なく折檻しても構わんぞ」


 ヘンゼルは、くねくねシナを作る妹の助けを無視し、俺様に折檻してよいと冷酷に答えた。

 なんか同年代の人間と比べると、かなり落ち着いているな。大魔女さまみたいに堂々としている。魔王がいたら、たぶんあのようなものかもしれない。


「ねえ、親分」


 そこにヴォルケが声をかけた。今まで静かにしていたからびっくりしたな。


「なんだヴォルケ。おやつの時間はまだまだだぞ」

「違うよ~。ハーゼの目の前にいる男の人が、ハーゼのお嫁さんなのかい?」


 いきなり何を言い出すのだ。たぶん退屈な話が続いたから、我慢できなくなったのだろう。

お嫁さんは女性であって、お婿さんが正しいのだ。

 まあ、俺様としては人間のコイバナには、まったく興味はないがね。


「こら、ヴォルケ。陛下の前で不遜なことを……」


 ハーゼがしかるが、ヘンゼルはいきなり笑い出した。まるでピエロの曲芸を見たかのようである。


「はっはっは! 噂の雲魔人殿も、下世話な話には聞き耳を立てているようだな。残念ながらそれはあり得ない。なぜなら余の妻は……」


 そう言っていきなり立ち上がる。そしてフローリアンともうひとりの男の首に腕を回した。


「フローリアンとトビーアスのふたりだからな」


 俺様はきょとんとなった。だって俺様でも男と女が結ばれることは知っているんだぜ? 同性同士じゃ子供が生まれないことも、常識だと思っているぞ。

 こいつはいきなり何を言い出すのだろうか。


「まあ、ヘンゼル陛下は、宰相さまと将軍さまをお嫁様にしていらっしゃるのですね?」

「その通りだハーゼよ。もちろん結婚式は挙げてはおらぬがな。夜の営みでは、毎晩ふたりを取り換えて、楽しんでおるのだよ。あっはっは!!」


 ヘンゼルは呵々大笑いし、他のふたりは苦笑いを浮かべていた。

 ハーゼは真剣なまなざしで見ている。正直、俺様には理解できない世界だ。こういうのを、やおいと呼ぶのだろうな。意味はわかんないけど。


「きゃー! お兄様ったらいつの間に!! でも納得ですわ、鬼畜眼鏡のフローリアンに、熱血漢に見えて実はヘタレなトビーアスとなら、相性抜群ですわね!!」

「グレーテル……、何嬉しそうにしてるんだか……」

「誰が鬼畜眼鏡ですか。私が相手をするのはヘンゼル陛下のみです。この人間カワハギ熊と一緒にされては困ります」

「誰がカワハギ熊だ! それじゃ俺は人の服を脱がしたがるみたいじゃないか!!」

「おや違いましたか? あなたの数少ない美点だと思いましたがね」


 トビーアスとフローリアンの言い争いに、グレーテルはなぜか嬉しそうであった。マネギンたちも男同士の友情に黄色い声援をあげていたっけ。

 

「ふーん、そうなんだ。まあ、昔からヘンゼル陛下は女っぽいと思っていたから、男を嫁にしてもおかしくないわね」


 エリザーベトは心底無関心であった。こいつは自分の興味のあることしか、頭にないのだろうな。


「さて話は戻すぞハーゼよ。そなたがシュピーゲル領に向かい、呪われたヴァイスシュネーの住む天空城に赴くのは構わん。そこでそなたが呪いを解き、ヴァイスシュネーの家名を受け継いだのならば、そなたは公爵位を授けよう。領地はエアツェールング王国の領地全域の空だ。それでよかろう」


 話はすぐに決まった。ハーゼは何か考え事をしているが、俺様にはどうでもいい話だ。


 それにしてもヴァイスシュネーか……。確か大魔女さまと同類の力を持つって話だよな。俺様は大魔女さまからハヤブサの笛をもらっている。シュピーゲル領の一番奥にある山、ウソップ山にある跡地に、天空城の入り口があるという。

 俺様はそこで笛を吹き、伝説の魔人、デーモンスリーを召喚するのだ。


 しかし、あそこは北にある険しい山で、大雪が積もっているそうだ。さらに魔物も強いらしく、俺様としては行きたくないな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ