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異世界転生してバニーガールを流行らせます  作者: 江保場狂壱
第8章 まぼろしネズミはとっても不幸
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第53話 土鑑定人登場

「みなさ~ん、集まってくれましたか~」


 ハーゼがのんきそうな声でギルド職員たちに呼びかけた。ここは料理ギルドの本部だ。まぼろしネズミの俺様は魔物だが、堂々と人間の前に立っている。

 何しろこちらには人質がいるのだ。相手はグレーテルと言い、一国のお姫さまである。俺様はいつでも握りつぶせる立場にあるのだ。

 ごめんなさい、うそつきました。本当は心臓がバクバクいってて、息苦しくて死にそうです。いっそ殺してくれ。


「ちょっと! 力が入りすぎですわよ、もう少し優しく扱いなさい!!」


 アッハイ。青髭の獣のぬいぐるみに命令された。どちらが上か、わからない。


 目の前にいる人間たちは似たような服を着たやつもいれば、屈強な体つきの人間もいる。

 似たようなのは、ギルドの職員で、ごつそうなのは、回収人という職業らしい。

 人間は役職というものを付けて、自分を着飾るのが理解できないな。


「マスター。重要な話があると聞いたでゴワスが、どういうものでゴワスか?」


 一番身体が大きい、ハゲ頭の男が訊ねた。なんとなく伝説の魔人、デーモンスリーのジルコニア・アイに似ているな。向こうは頭にターバン巻いた巨人だけど。


「コッホさん、今説明しますね。実は私はこれから北にあるシュピーゲル領へ行かなければなりません。なぜならグレーテルさまが、かの魔人バニーガールのバーニーによって、身体を氷漬けにされ、魂はそこにおられるまぼろしネズミさまの持つ、ぬいぐるみに移されたのです」


 するとコッホを始めとした人間たちは、一斉に俺様の方を見た。正確にはぬいぐるみのグレーテルを見据えている。

 うぅぅ、こいつら俺様に対して、殺意を向けてます! 吐いてしまいたいし、大きい方ももらしたいです!!


「ひぃぃぃぃ!! あまり強く握らないで、くださいまし~~~!! いくらわたくしの生殺与奪があなたにあっても、いたぶられるのは、やめてくださいまし~~~!!」


 グレーテルがもがきまくる。何自作自演してやがるんだ!! 俺様は力なんか込めてないだろう!!

 しかも悪乗りしてやがる! こいつの性格の悪さを垣間見た気がしたよ。


(こういうのは、第一印象が大事ですよ。人間を屁とも思わない残酷な魔物であることを、自己主張しないとね)


 ハーゼがこっそり耳打ちしてくれました。はい、余計なお世話です!!

 つーか、人間たちの殺意がますます増しました。怒りで熱気が数度上がった気がします。

 特にハゲ頭の大男に、槍のようにやせ細った男、鳥のようなガスマスクを被った小男は瞋恚しんいに燃え上がってますよ。


「グレーテルさまに対してなんたる真似を…、許さんでゴワス」

「いますぐ、あのネズミを殺したいミャー。マスターは許可してくれんかミャー?」

「無理だべさ。それができるなら、マスターがやってるべ。オラたちは手出しできねえだよ」

「うおおお!! ぬいぐるみのグレーテルさまを自由にいじれるなんて、なんて羨ましい、いや妬ましいんだ!!」


 がきんちょがわけのわからないことを叫んでいたら、コッホたちに殴られた。

 イラっとくるから、殴られた姿を見て、ザマァと思ったね。


「さて、シュピーゲル領に行くのは、理由があります。私はかつてその地を支配したヴァイスシュネーの住む天空城へ赴き、そこの主を倒さなければなりません。そうすることでグレーテルさまの呪いを解くことができるのです。ついでに言えば、家名としてヴァイスシュネーを使いたいという気持ちもありますね」


 すると職員たちは驚きと喜びの入り混じった声を上げた。

 まるで建物自体がびりびりと揺れており、巨人が直で揺さぶっているような感覚であった。


「あの呪われたヴァイスシュネーの、家名を継ごうとするなんて……、マスターは何を考えているんだ?」

「でもマスターならやりそうだよね。だってマスターだし」

「ぬいぐるみのグレーテルさまをいじらせてくれ!!」


 がきんちょはまた殴られた。空気が読めないやつだ。

 するとコッホが前に出た。


「それでマスター。おいどんたちの誰を連れて行くでゴワスか?」

「そうだミャー。いくらマスターが強くても、シュピーゲル領はものしゅごーく、冷えるミャー」

「んだんだ。しかも魔物もすんげえきついべ、誰かついてかねえと、だめだべさ」


 まあ、そうなるわな。正直ハーゼひとりでも問題ない気はするけどね。だってハーゼだし。

 その時、俺様の口が突如動き出した。自分の意思ではなく、何かに乗っ取られた感じだ。


「だめだ! お前らは一切ついてくるな!! 俺様とヴォルケ、ハーゼ以外は認めない!! だってこいつが苦労するところを見ないと、むかついてしょうがないからな!! いーっひっひっひ!!」


 なんだって~~~!! 今のは俺様じゃないぞ!! まるで自分の声じゃないみたいだ!!


『ふふん、ミーのビューテホーな演技に、ブリリアント酔いしれたかしらん?』


 頭の中に声が響いた。バーニーのものだ。いったいどういうつもりなんだ!?


『ユーはシャイボーイだから、ミーが代わりに答えてあげているわけなのよん。ほら、最初は出だしが肝心、感心、勧進帳かんじんちょうでしょう? お礼なんかノーセンキューよん』


 いらね~~~!! 余計なお世話だ!! ああ、コッホたちの顔が真っ赤になっている! 額の血管がみみずみたいに浮き出てますよ!!


「はっはっは! 困り顔のお前らを見ると、胸がスカッとさわやかだね!! かわいそうだからひとりだけ同行を認めてやるよ。ただし俺様が選ぶけどな!!」


 すると俺様の身体は勝手に動きだす。指を突き出し、大声を上げた。


「そこのお前、ついてこい!!」

「え~、あたしですか~?」


 俺様が指さした先はひとりの女がいた。なんとも不服そうな声である。

 いったいどんな奴だろうと思ったら、そいつは前に出てきた。


 俺様はそれを見た瞬間、魔物の仲間だと思った。なにしろ相手は人間の女では髪はピンク色で、癖毛だ。牛乳瓶みたいなぐるぐる眼鏡をかけていた。

 だが、そいつのおかしいところはそれじゃない。なぜならブリッジしているのだ。あおむけの状態で、両手と両足を床につけているのである。

 さらにピンク色のビキニの水着を着ていた。明らかに尋常じゃないな。


「あら、エリザーベトじゃない。ギルドに来ていたのですね」


 マギーが意外そうな口調で答える。というか、なんでいるの? という侮蔑のニュアンスが込められている。

 あの女は滅多にギルドに来る性質ではないようだ。まあ、俺様も初対面で言うのもあれだが、こいつを毎日顔を合わせるのは勘弁してほしいと思う。

 マギーと目が合ったが、親指を立てていた。変なところで心が通じたね。


「う~んとね、今日は最高の土の匂いをかぎ取ったわけですよ。最初マスターがどうでもいい話をしたときは、そのまま帰ろうと思いましたけどね」


 エリザーベトはブリッジしながら答えた。ハーゼの危機に無関心のようである。

 すごい自己中心的な女だと思った。全員目が死んでいる。あれで通常運転なのだろうな。


「……こいつはどういう人間なんだ?」


 俺様はハーゼに訊ねた。するとハーゼもため息交じりに答える。説明するのが嫌でたまらない感じだね。


「彼女はエリザーベト・ド・ヨルク。この国の宰相フローリアン・ド・ヨルクの姉です。ここのギルドでは土鑑定人という役職で働いておりますが、大の土マニアで、珍しい土を探すのが趣味なんです。でもそれ以外にまったく興味を抱かない変人なのですね」

「その通りです! 珍しい土と出会えなかったら、さっさと帰りますので、覚悟してくださいな」


 ハーゼの顔色が暗い。なんか苦労してそうだな。万能無敵なあいつでも手に負えない人間がいるのは、意外だね。


「そんなわけで私はこれからシュピーゲル領へ向かいます。ヴォルケとエリザーベト、まぼろしネズミさまと一緒にね。その前にお城に赴き、ヘンゼル陛下に報告します。ギルドはマギーに任せますので、皆さんは自分の仕事をしてください」


 ハーゼはみんなにそういうと、ぺこっと頭を下げた。

 殺気立った職員たちはそれを聞いて、落ち着きを取り戻す。

 なんとなくだが大魔女エヴァンジェリンさまに似ていると思った。


 ふと俺様の身体が動き出す。またバーニーが俺様を操っているのか?

 俺様は両手の人差し指を伸ばして手を組み、ハーゼの後ろに回る。

 こいつは尻を突き出しており、俺様の指は勝手にそいつの尻穴に指浣腸をしたのだ。


「うぐっ!」


 ハーゼの様子はわからない。しかし職員たちは青ざめた後、赤く変化させた。あきらかに俺様に対して怒っている。

 ハーゼはゆっくりと首を向けた。笑顔だが、そいつは肉食の魔物が獲物に対して向ける笑みであった。


「……終わった後の、おしおきターイムが楽しみだわ」


 ああ、俺様終わった。心臓を鷲掴みされたような錯覚を覚える。

 どうして俺様は生きているんだろう。どうして俺様は死なないのだろうか。

 もう泣けてくるね。

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