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異世界転生してバニーガールを流行らせます  作者: 江保場狂壱
第5章 乱れるギルドの風紀
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第32話 ひさしぶりのお客様

「やぁやぁ! ひさしぶりなのであーる!!」


 昼下がり、私がマスターの部屋で書類とにらめっこしていると、外から銅鑼の鳴るような声が轟いた。

 外を覗いてみると、下には筋肉ムキムキで、上半身裸の中年男が手を振っている。黒い短パンを身に着けており、角刈りにカイゼル髭を生やしていた。


 元料理ギルドマスターのルドルフ・ド・マッケンゼンである。私と料理勝負をして負けた後、マスターの座を強引に押し付けたのだ。

 今の私が苦労しているのは、彼の責任である。


 そういえばマッケンゼン氏の背後には何か大きな山みたいなのがあった。それは魔物の死骸だ。

 巨大なニワトリに、魚の尻尾が生えた豚。さらに人間の手足を持った牛であった。


「……マッケンゼン様おひさしぶりです。その、背後にあるのは……」

「うむ、おみやげであーる! 貴殿の噂は吾輩の耳にも届いているのであーる! よって手土産を持ってきたのであーる!」


 土産で巨大な魔物を三匹も捕ってきたのか。見た感じ大型バスほどの大きさだぞ。簡単には倒せないだろうな。

 余裕しゃくしゃくなのが、逆に怖い。チート能力を持つ私でも難しいと思う。


 私は頭を抱えながらも、一階へ降りた。


 ☆


「のわっはっは! ハーゼ、ひさしぶりで何よりだ! 時にそなたの格好は何だ? まるで大魔女のようではないか! 城の討伐隊に槍を向けられても、文句は言えんぞ!!」


 豪快に笑い飛ばしながら、彼は私の背中をバンバンと叩く。もろ体育会系で、一国の将軍を務めたとは思えないな。


「これはバニーガールと言って、私の信念なのです。例え王様が抗議をしても変えるつもりはありません」


 本当は日常で着るつもりはなかったのだが、いつのまにか普段着になってしまっている。

 それにしてもこの人はバニースーツを見てエロい目を向けないのだな。どこかずれているね。


「そうかそうか! そなたが覚悟を決めているのなら、吾輩は何も言わん!! むしろ面倒が起きたら吾輩を頼るがよい、いつでも力になるのであーる!!」


 そう言ってマッケンゼン氏は胸を叩いた。なんとも頼りがいのある言葉だろうか。

 やはりチート能力を持っても、長年の経験を積んだ猛者には敵わないということだな。


「ところでその魔物たちはいったい……」

「うむ、先ほども言ったように、手土産であーる! 巨大なニワトリはチキンドラゴンという立派なドラゴンの亜種であーる! 羽ばたくだけで村ひとつ吹き飛ばす威力を持っているのであーる! 魚っぽい豚は、ピッグシャークという海の殺し屋であーる! サメやクジラはもちろんのこと、漁船や客船をかみ砕いてしまうのであーる! 最後に牛の魔物はミノタウロスであーる! 森の恵みを喰らいつくし、村を潰して楽しむ悪賢いのであーる! 一個師団では返り討ちに遭う魔物たちであったわ!!」


 その魔物をマッケンゼン氏が屠ったのだろう。ニードルボアやカワハギ熊を狩ったことはあるが、あれは野犬を相手にしている感じだ。狂暴だが心構えさえあればなんとかなるレベルである。

 しかしチキンドラゴンたちはヒグマのような圧迫感があった。素人では太刀打ちできず、おたおたしている間に襲われる感じだ。

 もちろん今の私でも倒せると思うが、正直楽勝とは言えないだろう。


「ここまでどう運んで……、いや、風船魔法がありましたね」


 重いものを軽くする魔法だ。もちろん途中で鳥とかに襲われるだろうが、彼は気にした様子もない。あっさりと追い払ったのだろうな。


「うむ、これらはハーゼ殿の手土産であーる! 解体人を呼べば肉も取れるし、羽根や骨、皮などはよそのギルドに売ればいいのであーる! これだけで金貨千枚は硬いのであーる!!」


 金貨千枚ですか。あっさり稼いでしまったよ。もともとマッケンゼン氏がマスターの時は、その手の魔物を狩り続けた。肉などは焼くだけで無駄にしてしまうが、素材を売って経費の足しにしていたのである。


 回収人たちがぞろぞろと出てきた。コッホを中心に解体人が倉庫へ運んでいく。

 

「ありがとうございます、マッケンゼン様。ギルドの運営にはお金はいくらあっても足りませんからね」

「のわっはっは! 風の便りは届いておるぞ、そなたが抜本改革を果たしたそうではないか! 見た事のない料理を編み出すだけでなく、職員や加入者の教育に力を入れているとか!! 吾輩でもなし得なかった偉業を達成するとは、吾輩、感激であーる!!」


 マッケンゼン氏は男泣きをした。今までろくなことをしなかったのだが、彼は運営の仕方を知らなかったのである。

 それに彼についてきた職員たちは、マッケンゼン将軍として慕っていたのだ。

 ギルドとしては問題ありだが、関係は良好だったのである。


「あら、ハーゼさん、お客様ですか?」


 本部からツァールトが出てきた。表が騒がしいので様子を見に来たのだろう。

 どこか陰りのある表情を浮かべていた。おそらく女性職員たちの風当たりが強いためだ。


「ん? そなたは新入りであるか? 吾輩はルドルフ・ド・マッケンゼンであーる! 元ここのマスターだったのであーる!!」

「そうですか。私は今日からここで雑務として働かせてもらっているツァールトと申します」


 そう言ってツァールトはぺこりと頭を下げた。彼は元将軍の肩書もあるのに、どこか無感動である。


「……そなたは、ハーゼ殿の知り合いかね?」

「はい。元はズンブフ村に住んでおりましたが、ハーゼさんを頼ってここに来たのです」

「ふむ……。そんなにハーゼ殿が気に入ったのであるか?」

「そうですね。この方の伴侶になりたいと思う次第です。もちろん女同士なので無理ですが」


 すると女性職員が笑った。小ばかにした態度である。そりゃそうだろう、女である私の伴侶になりたいなど、酔狂にもほどがある。


「……そうか。なら安心するのであーる。ハーゼ殿なら貴殿をあらゆる敵から守ってくれるのであーる!」


 そう言ってマッケンゼン氏はツァールトの肩をポンと叩いた。

 どうも彼は目の前の未亡人を見ても、平然としているようである。まるで裸体の彫像を相手にするかのようであった。


 そして私に近づき、小声でつぶやいた。


「おそらく今夜、何かしらの出来事が起きるはずである。そなたはそれを受け止める義務があるのである」


 そうつぶやいた後、回収人たちが大きく手を振って、歓迎の声を上げていた。

 コッホにシュナイダー、アールツトなどがマッケンゼン氏を歓迎している。


 いったい彼の言葉は何だったのだろうか? ツァールトはぺこりと頭を下げた後、仕事へ戻っていった。


「さあ、ハーゼ!! 今日はそなたの作る料理で宴をするのであーる!!」


 マッケンゼン氏の言葉に職員たちは大いに沸くのであった。

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