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異世界転生してバニーガールを流行らせます  作者: 江保場狂壱
第5章 乱れるギルドの風紀
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第31話 うどんを作りました

「……いかがでしょうか?」


 妙齢の女性だが、うら若き乙女のように恥じらうのは、未亡人のツァールトだ。

 彼女は副ギルドマスターのマギーが用意した、黒いメイド服に着替えてある。

 全体的に丸みを帯びた顔だが、愛嬌と色気が入り混じっていた。

 それに体の線はともかく、豊満な胸は地味なメイド服でも隠しきることはできていない。


「……ええ、なかなか似合っておりますよ」


 男の象徴を失った私だが、彼女の姿を見て、亡くしたはずの息子を思い出す。

 ああ、息子は股間のあれね。夢の中でも感触を覚えている。

 もっとも今の私は完全な女性なので、手を出すことはないけどね。


 ツァールトの様子を男性職員たちがちらりと見ていた。

 今一階にある掃除用具を入れている部屋の前で説明している。どこを掃除するのかマギーが説明しているのだ。

 その横でちっちゃなゲッティンがあくびをしている。大人の話など退屈で仕方ないだろう。


「……そうだ、小さな子供を集めて、保育所を作ろう」


 私は頭の中にナイスアイディアが浮かんだ。ギルド加入者には未亡人が多い。生活のために商売をする人もいるのだ。

 裁縫ギルドなどもいろいろいるが、料理ギルドは料理の腕があれば金が稼げるのである。

 

「ほいくじょ……、とはなんでしょうか?」


 マギーが初めて聞く単語に、質問する。


「子供を集めて面倒を見る施設ですよ。主に働くお母さんのために必要なものです」

「それで具体的に何をするのですか?」


 彼女が攻寄る。おそらく私の話は有益になると思ったのだろう。


「子供たちを集め、歌を歌ったり、一緒に遊んだりしますね。それに簡単に文字を教えたり、物の数え方を教えたりします。これは学校とは違い、本格的ではないですけどね」

「……なるほど。では、ギルド加入者の子供を集め、我ら料理ギルドが責任をもって、教育する場所を作ればよいのではないでしょうか?」

「それだと学校になりませんか? あとお金もかかりますし」

「問題はないでしょう。それに賢い子供が増えれば、ギルドの運営に役立ちます。先行投資というものですよ」


 マギーの答えに、私はちょっと意外だと思った。精々子供を、ゲッティンを預かる程度でしか考えていなかったのだ。

 それがマギーは話を飛躍させるとは、少々、この世界の住人を見くびっていたようである。


「え? おともだちができるの?」


 ゲッティンは目を輝かせている。私は座り込み、彼女と同じ目線で話した。


「そうですよ。今日はまだですが、明日にでもあなたのお友達はできます」


 マギー曰く、その話を未亡人たちに話せば、賛成してくれるという。それほど日々の生活は大変なのだ。

 職員が通達すれば、すぐにでも預けてくれるという。毎日彼らが迎えに行けばいいのである。


「それはそうと、ツァールトさん。さっそくお仕事をお願いします」

「はい、わかりました」


 マギーに言われて、ツァールトは掃除に向かった。モップとバケツを持ち、床を掃除する。

 大きな尻をぷりぷりと揺らしており、その後姿はなかなか色っぽかった。

 私は職員にゲッティンを任せ、マギーと一緒にマスターの部屋に戻ったのだ。


 ☆


「マスター! あの女をなんとかしてください!!」


 お昼休み、私は調理室で料理を作っていた。保育所というか、学校の件はすぐにマギーが組み立ててくれたので、明日から作れる。

 私は今日麺類を作ることにした。小麦粉を練って作っていたのだ。

 うどんなら、塩と水を混ぜればよい。小麦粉を器に入れ、食塩水を混ぜながらこねる。

 固くなるほどになったら、しばらく寝かせ、板の上に乗せて、載せ棒で伸ばし、細く切るのだ。

 ひやむぎなら、さらに細く切ればいいのである。

 スパゲッティに使うものなら、鶏卵を混ぜればいいのだ。麺類ができれば、料理のバリエーションは増える。


 醤油がないから、かけうどんとかは、無理だがぶっかけうどんなら簡単だ。それとざるうどんに、焼うどんもできる。

 今回はうどんを作り、魚醬を使ったぶっかけうどんを披露していたのである。魚醬は癖があるが食べられないほどではない。

 他の職員たちは、初めての食感に戸惑いながらも、おいしいと大評判だ。


 そこに他の女性職員たちが、不機嫌を隠さず、私に訴えに来たのである。


「あの女とは誰の事ですか? もしかして私でしょうか?」

「違います! なんでマスターの文句を、マスターに訴えるんですか!! 今日から働いている雑務の人ですよ!!」


 ツァールトのことだ。名前を呼ばず役職で呼んでいるのは、彼女らが貴族だった頃の癖が抜けないためだろうな。

 私の場合は前のマスターに認められたから、表立って不満は出さないだけだろう。


「ツァールトさんのことですね。彼女が何かしでかしたのですか?」

「いいえ、何もしてません! ですが、彼女がいるだけで男性職員はまったく仕事をしなくなったのです!!」


 職員曰く、ツァールトは普通に掃除をしているだけだ。床をモップで書けたり、ガラス窓を雑巾で拭いたりと、普通に働いている。

 それを男性職員がにやにや笑いながら、眺めているというのだ。

 別に色気を振りまいているわけではないが、何しろ体つきがエロい。胸や尻がやたらと強調されており、地味な衣装でもむせ返るような色気を抑えきれないのだ。


「仕事をしないと言ってもねぇ……。そもそもここのギルドは私が就任する前は、ろくな仕事がなかったじゃない。今はそれなりですけど」

「確かに否定はできません! 前はマッケンゼンさまのワンマン経営でしたが、今は違います! さぼっては困るんです!!」


 男性職員には彼女を口説くのも、いるという。その度に彼女は頬を赤くして、やんわりと断るのだが、なかなか諦めない。

 女性職員が割って入り、引き離すというわけだ。


「それにあの女のいいわけも見苦しいです! 明日になればすべて丸く収まると言っているんですよ! 雑務しかできない人間に何ができるというんですか!!」


 職員の差別発言に、私はカチンときた。そしてその職員を睨みつける。

 彼女もそれに気づいたのか、がくがくと真冬の中でビキニを着たように震えていた。


「……あなた。これ以上、口を開かない方がいいわ」


 他の職員たちも、私におじけづいたのか、それ以上何も言わなくなった。


「この件は私が何とかします。それよりも皆さんもいかがですか? 私が作ったうどんという食べ物です」


 そう言って私はうどんを披露した。彼女たちは初めて食べるうどんに対して、好意的な印象を受けたようである。

  うどんは、食べ方はもちろんのこと、日本全国では様々なうどんが存在しているのだ。

 単純ゆえに様々な調理法がある。

 持てる知識を利用して、うどんだけでなく、他の麺類を広めよう。それに乾麺も作りたいしね。飢饉にも対応できるし、食料の基金も可能になる。


 しかしツァールトさんが問題を起こすとは思わなかった。いや、ズンブフ村の長老も似たようなことを言っていたな。

 最初は彼女をめぐって男たちが騒いでいたが、すぐに収束したという。まるで伝染病が終息するみたいだったと小声で教えてくれた。

 それほど男たちはツァールトの色気に惑わされたのだという。


 明日になれば解決するというが、どういうわけだろうか。

 ズンブフ村でも同じようなことが起きているという。彼女には何か秘密があるかもしれないな。

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