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異世界転生してバニーガールを流行らせます  作者: 江保場狂壱
第4章 加入者たちの意識を改革します
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第28話 まぼろしネズミは活躍しません

なぜ、こうなった?


 俺様の頭の中はクエスチョンマークで埋め尽くされていた。ちなみに俺様は草葉の陰に隠れている。

 そして向こうにはうさ耳魔女のウサリーと、ハーゼという人間が対峙しているのが見えた。

 おっと、俺様はまぼろしネズミ。赤い帽子に黒マスク、黄色いマフラーがトレードマークだ。この辺りを支配する偉くて強い魔物なのだぜ。えっへん。


 しかし、ハーゼのやつ、へんな恰好をしているな。ウサリーほどではないが、黒いうさ耳をつけている。自分は魔物だと主張しているのだろうか。どこかで見た記憶があるね。

 いやいや、そんなことはどうでもいい。問題はウサリーだ。

 あのうさ耳魔女は自分の実力を理解しておらず、大魔女さまと遜色のないハーゼに喧嘩を売るという、馬鹿な真似をしているのだ。


 この事がハーゼにばれたら、俺様は殺されちゃうよ?

 いくら大魔女さまが蘇生してくれても、トラウマはきっちり残るからね。

 俺様のように繊細な神経の持ち主は、何度も死ねば廃人になりかねないのだ。死んだことないけど。


「へ~、あれがうわさの人間なの~? ウサリーみたいな耳が生えているじゃないか~」

「そうだよね~。それにへんな皮があるし、あしもへんだよ」

「やっぱりあいつは人じゃなくて、大魔女さまのともだちかもね」


 ああ、説明が遅れたが、俺様の後ろには玉ねぎの魔物、マネギンたちがついてきていた。

 マネギンのマネビンが、俺様の雄姿を見て勉強したいと言い出したのだ。

 マネビンの奴、余計なことを!! しかし他のマネギンたちがきらきらと俺様を尊敬する目を向けるから、断れずにつれてきてしまったのだ。

 ふふ、これも強者ゆえの義務か。弱者を導くのも選ばれし者の役目よのう。


「親分さん、どうやら始まったようですよ」


 マネビンが急かした。いかん、自分に酔っていたぞ。どれどれ、ウサリーたちは何を言っているのやら。


 ☆


「わはははは!! あたちはうさ耳魔女のウサリーだわさ! 今日はお前の耳を引きちぎりに来たんだわさ!!」


 ウサリーが高笑いしている。あれ、ハーゼを倒すのではなかったのか?


「あら、かわいらしい魔物さんね。今日はわざわざ私と遊んでほしいのかしら?」


 ハーゼの方は余裕たっぷりだ。しゃべる魔物を相手にしても臆することがない。ある意味あの人間の力を見誤ったと思うね俺様は。


「むきー! なんなんだわさ、その余裕!! まるでいかにも私は大人ですと、自慢しているようだわさ! お姉ちゃんと比べると謙虚さがまったくなさすぎだわさ!! そうやってまぼろしネズミのやつを、骨抜きにしたんだわさ!!」

「別に彼をどうこうしたわけではないわ。それ以前に彼はネズミ。人間の私に惚れることなどありえないわよ」

「しらじらしいだわさ! そのうさ耳! 人間があたちのようなうさ耳を生やすわけがないだわさ! お前の正体は魔物、いいや、大魔女様と同じ、魔人なのだわさ!!」

「魔人ねぇ、大魔女なんて初めて耳にしたわ。後でまぼろしネズミさんに聞いてみましょう」


 そう言ってハーゼは俺様のいる方向を見た。そしてにっこりと笑う。

 いやー、ばれてるー!! はっきり目が合った!! こわーい、かえりたーい!!


「むきー! なんでまぼろしネズミに訊ねるだわさ! 大体お前はここで終わるんだわさ! そのうさ耳をむしり取って、ごめんなさい、私が悪うございましたと泣かせてやるだわさ!!」 


 するとウサリーは呪文を唱えた。


「マハリク、マハリタ、テクマク、マヤコン、シャランラ、シャランラ、ヘイヘヘイ!!」

「サ〇―ちゃんに、ア〇コちゃんに、メ〇ちゃんのパクリですか」


 なぜかウサリーの呪文を、ハーゼが突っ込んでいた。どれも初めて聞いたのに、なぜか懐かしい響きがしたね。


「いでよ! わがしもべ、鎧人よろいじんリグコ!!」


「リグ~コ!!」


 ウサリーが呪文を唱えると、空が真っ黒になった。そして雲が渦を巻き、雷が落ちる。

 その瞬間、地面が揺れた。後ろのマネギンたちも驚いていたが、マネビンだけは冷静だ。

 

 一瞬、視界が悪くなったが、すぐに回復する。そして目の前には巨大な甲冑が立っていた。

 全身が青色で、右手には斧、左腕には丸い盾があった。

 そして兜には赤いふさふさがドラゴンの尻尾のように揺れている。

 

 呪文ひとつでウサリーの命令に従う、生きた鎧だ。

 斧を振るえば、人間の家など一瞬でつぶれてしまう。

 盾は無数の矢や、丸太などびくともしない。

 それ以上に、足で踏んだだけで、人間は数人つぶされるのだ。


「わはははは!! 見るだわさ、このリグコの力を! こいつを見ておしっこがちびっても、あたちは笑わないだわさ! なぜならこの圧倒的な力に対し、人間も魔物も無力、何もできないお人形なのだわさ!!」


 ウサリーはますます高飛車にふるまっている。しかしハーゼはまったく動じていない。

 

「鉄〇2〇号のパクリですか。横〇光〇先生関係が多いですね」とわけのわからないことを、つぶやいていた。

 

 ウサリーはそれが気に喰わないのか、リグコをけしかける。

 正直、ハーゼが負ける想像がつかない。


「きっと息を吹きかけるだけで、リグコを粉砕するだろうな」


 俺様がそうつぶやいた。なんとなく口にしただけだが、突如つんざく音が轟いた。

 

 リグコがバラバラに吹き飛んだのである。ちなみにハーゼは何もしていない。立ったまま、笑みを浮かべていた。


「リクエストにお応えして、息だけで対処させていただきました」


 って、聞いてたのかよ! しかも、リクエストって、まじで息だけで倒しやがった!!

 やっぱりハーゼは魔人じゃねえか!!


「すごいや、親分さん。あの人間のやることを先読みするなんて」

「敵のやることを予測するのも、大切なんだね」

「さすがは親分さんだよ!!」


 マネギンたちは勝手に解釈し、俺様を褒めたたえる。

 やめて! あれは向こうが俺様のつぶやきを勝手に聞いただけなのよ!!


「むきー! あたちのリグコを一撃で粉砕するなんて!! どんなインチキを使ったんだわさ!!」


 ウサリーは長い耳をピクピク震わせていた。いや、インチキってなんだよ。お前はハーゼの力を理解できないのか。


「ふむ。なまじ大魔女さまの弟子であるゆえに、相手の力量を測れない……。親分さんとは格が違いますね」


 マネビンが言った。その通りである。俺様なんか遠くにいるのに、腰が抜けた。もう逃げ出せない。

 ウサリーの奴はわめきたてている。ここは逃げるか、許しを請うかするべきだが、あいつは興奮していて、冷静な判断が下せないのだ。


「ふふふ、あなたはまぼろしネズミさんが好きなのですね。だから、いいところを見せようと、わたしをまちぶせしたわけですか」


 ん? 今ハーゼは何を言ったんだ。腰の痛みで聴こえなかった。


「申し訳ありません。聞き逃しました」


 なぜかマネビンはにやにや笑っている。なんだというのだ?

 逆にマネギンたちは顔を赤くしたり、にやにや笑っていたりする。まったく意味不明だな。


「ななななな!! そんなわけないだわさ! まぼろしネズミなんてクズだわさ、ゴミだわさ、この世から消えてなくなればいいんだわさ!!」


 ウサリーの野郎、俺様の悪口を並べ立ててやがる。だが、なぜ焦っているのだろうか。

 それにハーゼはますます、いやらしい笑みを浮かべているぞ。


「好きな子にいじわるをしたくなる。年頃の男の子にはよくあることですが、あなたは逆というわけですね。かわいいです」


 そう言ってハーゼはウサリーに近寄った。ウサリーは身動きできず、そのまま捕まった。

 ハーゼにとってウサリーの身体は、人間が好むぬいぐるみほどの大きさなので、楽に持ち抱えることができたのだ。


「私はあなたの初恋を邪魔しませんよ。それにこの耳は付け外しが可能なのです。私は魔物ではないのですから」


 ハーゼはウサリーの耳に、息を吹きかけた。ウサリーは「きゃわわ!!」と叫びながら、気絶してしまう。

 ハーゼは丁寧に優しく、ウサリーを草の上にちょこんと置いた。


「さて、私はヴォルケの元にまいりましょう。今日は甘いものを用意いたしますので、お楽しみに」


 ハーゼは独白した後、ニードルボア以上の脚力で走り去った。後姿は全く見えない。あいつは人じゃないね。


 ウサリーは惚けたままだ。結局こいつでも、ハーゼの相手は無理だったのである。

 ショックで惚けており、声をかけるのも憚れるな。

 

「アハハ! ウサリーなんて口先ばっかりだね!」

「しょせんまぼろしネズミさまの足元にも及ばないよ!!」

「まったく身の程知らずだね!!」


 マネギンたちが騒ぎ立てると、ウサリーは泣き出した。噴水みたいに涙を流している。

 ちょっと、相手の傷口に塩を擦り付ける真似はやめなさい!!

 俺はそう注意するのであった。

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