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異世界転生してバニーガールを流行らせます  作者: 江保場狂壱
第二章 意外な人が仲間になるのですよ
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第十話 狩りの後に……

私は素早く北の山に移動する。自分の身体なのに、信じられなかった。

 気分は某アンドロイド少女のようだ。「んちゃ!!」と地球を素手で破壊できそうな気がする。

 それをやったらこっちが破壊神になるので、やらないけどね。


 さて森の中は深い。深いだけに深いな気分になる。マギーから前もって情報をもらったから、大体わかる。

 前世のように物忘れすることもない。それだけでもかなり嬉しかった。

 人と普通に会話できるし、声も普通に出せる。緊張もしないし、どもらない。異世界転生して最高だと思った。


 だからこそ、私の考えたことを実行すべきだ。前の世界は道徳がひどかった。勉強よりも常識を教えるべきなのに、まったくできなかったのである。

 いや、人の悪口を言うのはやめよう。人の悪口を言うことは、他人も自分の悪口を言っていいということだ。

 因果応報は実在するのである。


 前に荒らしに騙されたが、その荒らしは他の人にも叩かれ、孤立したと知ったとき驚いた。

 その癖そいつは全く学習能力がなく、同じことを繰り返したから呆れている。

 私はそいつを反面教師とし、誠実に生きることを決めたのだ。


 耳をすませば、どんな生き物が住んでいるかわかる。さすがにどんな種類があるかはわからない。マギー曰く、ニードルボアにカワハギ熊はもちろんのこと、うさ耳を剣として扱う、うさ耳セイバーや、頬張った木の実を鉄砲のように吐き出す、ビーハイブというリスの魔物がいるそうだ。


 この場合、体の大きい魔物を探せばよい。姿かたちはマギーが図鑑を見せてくれた。

 ハリネズミのような猪に、二足歩行のアライグマだ。

 大きさや色などを記されており、発見すればわかるという。


「さて、探しますか」


 私は気配のする方へ向かう。


 森の奥には大きな滝があった。そこでニードルボアが大群で水を飲んでいる。

 初めて見るが、なんとも狂暴な姿だろうか。バチバチと無数の針を鳴らしている。

 これは一般人には無理だ。回収人でも難しいだろう。


 特にニードルボアの針は槍のように鋭く、間合いを開けないといけないらしい。

 弓矢で額を狙わなければいけないそうだ。

 それなら私はまったく問題ない。まず適当な石を数個拾う。


 それを親指で弾く。ニードルボアの額に決まった。

 全員ふらふらと倒れていく。他の仲間は恐れて逃げていった。

 ニードルボアは10匹きっちりいる。こいつらを持ち帰ろう。


 これらは風船魔法で軽くするのだ。重い荷物は大抵その魔法を使うらしい。

 ワープ魔法は難しいので、王宮魔術師でないとできないそうだ。

 マギーに教わったがすぐにできた。彼女は結構驚いていたな。


「グルルルル……」


 茂みの中から巨大なアライグマが現れた。カワハギ熊だ。

 二足歩行だが、愛嬌がまったくない。狂暴なヒグマのようである。

 さらに両手には大型動物の頭蓋骨を持っていた。


 しかし、私には恐怖心はない。ニードルボアと同じく倒せると確信している。

 私はすぐに小石を使い、カワハギ熊の眉間を撃ち抜く。

 

 ふらふらとよろけて、どさっと地面に倒れた。

 こちらは逃げ出さず、私に向かって怒りの表情をあらわにしている。


 手に持った頭蓋骨を私に投げつけた。かなり大きく、当たれば痛い目に遭うだろう。

 だが私には通用しない。投げられた頭蓋骨はまるでスローモーションのように見える。

 逆に頭蓋骨をつかみ取り、カワハギ熊に投げつけてやった。

 

 顔面を打たれ、慌てだしている。

 その隙に人数分の獲物を狩るのであった。


 ☆


 約束の数を達成し、風船魔法でぷかぷかと獲物の身体を宙に浮かせた。

 カラスなどの鳥が獲物を横取りに来るが、追い払えばいいのである。

 

 一息入れるために、水を飲んだ。とてもきれいでおいしい水だった。

 人心地つく。すると森の奥で声が聴こえる。

 なんというか腹の鳴る音だ。誰かお腹を空かせているのだろうか。


 獲物を茂みの中に隠すと、音の鳴る方へ向かう。

 さらに鬱蒼とした森で、あまり立ち寄りたくないところだ。

 ある程度歩くと、目的地に着いた。


 それは苔に覆われた大岩であった。これから音が聴こえる。

 いったいこれはなんだろうか?

 すると大岩に目が現れた。ぱっちりと丸い目が出てきたのだ。


「ん~? アンタ誰だい?」


 驚いた。言葉を発したぞ。こいつは魔物だろうか。もしかしたら人喰いの巨人だろうか。

 それに自棄に甲高い声だな。ヘリウムガスを吸った後の声みたいだ。


「私はハーゼ。人間です。あなたのお名前は何ですか?」

「なまえ~? なまえってなんだい?」


 そこからかよ!! というか魔物はあまり名前に興味がないのかもしれない。


「……ところであなたはどこから来たのでしょうか? この森に昔から住んでいるのですか?」

「違うよ~。オイラ、上から落ちてきたんだ~」


 そう言って岩男は右手で天を指した。まさか雲から落ちたのではあるまいな?


「オイラ、雲の上に住んでいたんだよ~。のんびり暮らしていたんだ~。でもある日落ちちゃったんだよね~。それでずっとここに座っていたんだ~」


 ずっと座っていたか。彼は仲間が助けに来るのを待っていたのだろう。何ともけなげなことだ。


「するとあなたは仲間を待っているのですか?」

「なかま~? なかまってなんだい?」

「……」

「オイラ、こんな暗いところ怖くてさ。だからじっとして動かないでいたんだ。あんたはオイラに何の用があるんだい?」


 なんかこいつ、仲間意識がまったくないようだ。魔物の考えは案外そうかもしれない。


「ところであなたは何も食べずに、過ごしていたのですか」

「う~ん、確かにお腹は減ってるけど、我慢できるよ~。雲の上じゃ、雲苔くもごけという苔を食べてたしね~。オイラの身体に生えてる緑色の苔は苦いけど、食えなくはないよ~」


 やはり魔物だから栄養の取り方も違うようだ。おそらくこいつは人など喰ったことはないだろう。

 そもそも証拠の骨などがない。村人は彼の空腹音に恐れをなしただけだ。

 恐怖で人喰いの巨人を生み出したのである。人の想像力が一番怖いのだ。


 しかし雲から落ちて何年たっているか不明だが、見つけた以上放置するわけにはいかない。

 私は思い切って、彼を誘うことにした。


「あなたは行く場所がないなら、私と一緒に行きませんか? 人間の住む村ですが、私が口添えをしましょう」

「ふ~ん。別にオイラ、やることないし、ついていくよ」


 あっさり決めおった。こいつ自分の意思がないのではないか。石に見えても意思がないのはどうかと思う。


「じゃああなたに名前を付けてあげましょう。雲の上から来たから、ドイツ語でヴォルケという名前にしましょうね」


 昔読んだネーミング辞典を参考にした。うん、なかなかだと思う。

 ヴォルケは名前の概念を理解していないが、嬉しそうだ。


「う~ん、オイラ、ヴォルケなのか。うん、気に入ったぞ」


 こうして私はヴォルケを連れて行くことに決めたのであった。

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