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19話 コンビニ店員

「あの、ほんとにもう気にしてないですから」


謝罪を受けいれた後も、二人の表情は優れなかった。


「今日はもう遅いですし、リエアへ行くのは明日にしませんか?」


二人は顔を見合わせ、俺の提案を受け入れてくれた。

俺は軽く挨拶をし、その日はログアウトして就寝した。


「っくぅう、今何時だぁ?」


目が覚めると布団の中で体を思い切り伸ばし、枕元に置いてあったスマホに手を伸ばす。


「もう、こんな時間か……」


時刻は昼の十二時を過ぎていた。

寝すぎたと思い起き上がろうとするが、体は俺の意思を無視して再び深い眠りにつこうとする。


しかし、朝食を食べそこねた腹の虫が、早く何かを食わせろと懸命に訴えている。


「飯、買いに行くか……」


前日に買ったパンと菓子類は、激しい戦闘の代償として俺の腹に消えた。

つまり、今の我が家には腹の虫を満足させるものが何もない状態だ。


昨日に引き続き、近所のコンビニに足を運んだ俺は店内を物色し始める。


(えーと必要なものは、弁当と飲み物それと――ん?)


雑誌コーナーの前、目に止まったのは一冊のゲーム雑誌だった。

【ヴァルセリア・オンライン】その文字を見た途端、俺は雑誌を手に取っていた。


ページを捲ると、

『ヴァルセリア・オンライン社運を掛けた一大アップデート』

と大きく書かれていた。


(社運を掛けたって、大げさだな)


大型アップデートに関しては、クリスさんでもまだ分かっていないようだった。

何か情報は載っていないかとさらにページを捲る。


「――じさん。おーじーさん!」


「うぉ!」


突然背後から声を掛けられ、慌てた拍子に雑誌を落としてしまった。


「もぉ、しっかりしろし」


俺の落とした雑誌を拾ってくれたのは、コンビニの制服を着たギャルだった。

彼女は拾った雑誌を俺に渡すと、そのままジーッと俺の顔を見ていた。


「あ、えっと、急に何を――って、立ち読みですよね、すみません」


なぜ彼女がこちらを見ているのか、少し考えて出した結論がこれだった。

俺の言葉を聞いたギャルは、ムスッとした表情を見せ、口を開く。


「もしかして……昨日のこと覚えてない?」


昨日?昨日は確か、ここで買い物して……あ!タバコの子か!?


「あ、あぁ……覚えてますともぉ。忘れるわけないじゃないですかぁ」


「嘘!絶対忘れてたし!」


意外にも鋭いギャルは、即座に俺の嘘を見破った。


「あの、俺に何か用ですか?」


正直、年下ってだけでもどう接していいかわからないのに、その上ギャルの相手なんて完全に俺の許容範囲を超えている。


「昨日、ちゃんとお礼言いたかったのに会計が終わったらすぐ帰っちゃうんだもん」


ギャルは少し拗ねたように視線を逸らし、答える。


「そうだったんですか?でも昨日ちゃんとお礼言ってくれましたよね?」


「あの時は、あの客への怒りとか助けてもらって嬉しかったとか、いろいろ感情が追いついてなかったの!」


彼女は「だからあれはなしっ!」と言って、


「だから……さ。ちゃんとお礼……言わせてよ」


そう言って、彼女は勢いよく頭を下げた。


「あの時、助けてくれてどうもありがとうございました」


今どきこんな律儀にお礼を言ってくれる子がいることに俺は心底驚いていた。

しかもその相手が、ギャルだなんて――


(人は見かけによらないって、こういうことだよなぁ)


俺はすっかり彼女を見る目が変わり、お礼を受け入れた。


「そんな大したことしてないんで、気にしないでください。でも、わざわざお礼を言ってくれてありがとうございます」


「ふふっ。私がお礼を言ってるのに、なんでそっちもありがとうなの?」


そう言って彼女は無邪気に笑った。


「そういえばその雑誌、おじさんゲームとかすんの?」


「ええ、最近始めたばかりですけどこれがなかなか面白くて」


そう言うと、彼女は興味があるのか雑誌をマジマジと覗き込む。


「ふーん、そうなんだ……あ、あのさ――」


「らーぶー、おつおつ~」


ギャルが俺に何かを伝える前に、背後から第二のギャルが突然現れる。

二人目のギャルはコンビニ店員の彼女よりさらに派手な化粧と服を着ている。


「らーぶーまだ仕事終わんねぇの?つーか、おいおっさんジロジロ見てんじゃねえよ!」


俺はまるで威嚇された小動物のように黙ることしかできなかった。


(ギャル、こっわ……はぁ、それにしても若い子に、おっさんおっさん言われるの辛いなぁ)


「こ、この人は、ただのお客さんだよ。ほらあっちで待ってて」


彼女がそう言うと、派手なギャルはイートインコーナーへ向かっていった。


「ごめんね。あの子ちょっといい方がきつくて、悪い子じゃないんだけど……」


ギャルはイートインコーナーを見ながら小声で話している。

俺は一刻も早く立ち去るため、彼女に気にしていないと伝え、その場を後にした。


「はぁ、やっぱり若い子と話すのは苦手だ……あの子帰り際に何か言ってたけど、何だったんだろうな」


ギャルは俺に何かを伝えようとしていたが、俺は逃げるようにその場を離れたので、彼女が何を言ってるか聞き取ることはできなかった。


(ま、数回会っただけのおっさんに話すことなんて大したことないだろ)


それにしても、今日はこの時期にしては蒸し暑くてさっきから汗が止まらない。


「はっ!まさかさっきのは汗臭いって言いたかったのか?……いや、まさかな」


とめどなく流れる汗をシャツで拭って、空を見る。


「あっついなぁ、こんな日は帰ってコーラでも……」


俺はその時ようやく気づいた。

俺がなぜ暑い中わざわざ外に出て、コンビニへ向かったのか。


「飯……買い忘れた……」

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