41 TSモノは主人公の精神もどんどんメスになっていく過程に興奮するのだ
【前回のあらすじ】
ルカと太陽の肉体が入れ替わってしまったが、仕事には行かないといけない。
そこでルカの念動力の魔法を使うことで、車を動かし、現場へと出動したのであった。
「ん。日比野です。現場に、入りました。これから、始業します」
道路交通法ギリギリアウトのスピードと、道路運送車両法ガッツリアウトの走行方法により、俺達はなんとか最初の現場に到着した。
対向車とぶつかりそうになったとき、空中に5メートルくらい飛んで避けた時は流石に死を覚悟したぜ。
ジェットコースターよりもスリリングだった……おっぷ。
唯一のメリットと言えば、ガソリン代が浮いたことくらいだ。
地球に優しいエコロジカルな魔力エネルギーの賜物である。
「ん。電話できた」
「……あ、ああ……結構いい演技だったぞ」
「ん。毎日、たいようが電話してるの、見てたから」
涎の胃液割りを唇から垂らし、トイレを掃除する前に便器にゲロを吐こうか検討していると――ルカが始業開始を告げるための電話を終え、掃除道具一式が入ったポリバケツを持ってやってくる。
「よし、何はともあれ現場に到着して、上司への電話も済んだ。早速仕事を始めるぞ!」
「ん。今日は、ぼくも沢山、働く」
少し休んだら体調も回復した。
例え体が小さくなっていようとも、長年培ってきた清掃スキルでルカに遅れを取る気はない。
ポンチョの袖を腕まくりし、意気揚々とゴム手袋を装着した次第であったが――
「ぐ、ぐぐぐ……手が届かない……!」
「ん。高い場所、ぼくがやる」
――洗面台の鏡をクロスで拭こうとするものの、背丈が足りず……。
ならば低い位置を担当しようと、床のモップ掛けに取り掛かろうとするも――
「んぎぎぎ……ち、力が入らん……!!」
「ん。ぼくが絞る」
――力が足りずにモップの水を絞る器具を扱えず、完全に役立たず状態だった。
「な、なんて脆弱な肉体なんだ……」
震える指先を見下ろしながら、己の無力さに打ちひしがれる。
ここがトイレでなければ、絶望のあまり膝から崩れ落ちていただろう。
「ふんふんふーん♪」
一方ルカは、いつもより背が高く、力があるのが新鮮なようで、楽しそうに掃除をしていた。
「(俺から掃除スキルを取ったら……果たして何が残るんだ?)」
己の存在理由について自問自答しながら、俺は鬱々と、ルカに絞って貰ったモップで床を磨くのであった……。
***
「ん。大人1人と、子供1人」
――半日後。
なんとかかんとか全ての現場を回り帰宅した後、俺達は1日の汗を流すべく銭湯へ来ていた。
普段から俺がまとめて入浴料を払っているので、ここでもルカに俺の演技をしてもらっている。
「何その喋り方? キモ」
「が、がーん……」
受付の番台ギャルは、相変わらず俺に対しては当たりが強い。
ルカは普段の喋り方を酷評され、ショックを受けていた。
生まれた頃から「可愛い可愛い」と言われて育ってきたので、キモいと言われることに耐性がないのだろう。
ごめんな……俺が可愛くないばっかりに……。
「あっ♪ ルカきゅんは別だよ~♪ わたし、ルカきゅんの喋り方大好き~❤」
などとダブルスタンダードをかましてくる番台ギャル。
だが――今日に限っては、今あんたが猫なで声で喋りかけている相手こそ、怨敵である日比野太陽本人なんだぜ。
「(あっ、そうだ)」
このチャンスを使ってちょっと仕返ししてやるか。
俺はニヤリと笑うと、喉の調子を整えてから、普段のルカの喋り方を真似るように――
「ん。まりな……いつもエッチな目で見てくるから、嫌い。話しかけてこないで」
「が、が――――んっ!?!?!?」
番台ギャルは、愛しのルカきゅんに拒絶されたショックで、カウンターの上に突っ伏して白目を向いてしまった。
口から魂みたいなものが漏れている。
「へへっ。いい気味だぜ」
コイツには日々辛酸を舐めさせられているからな。
これくらいの仕返しは許されるだろう。
カウンターの上に涙の水溜まりを作っている番台ギャルを後に、俺達は男湯に入場したのであった。
「(可愛い子ぶって他人をおちょくるのは気分がいいな。なんかTS漫画の主人公みたいで)」
……いや。
よく考えたらルカは男だからTSじゃなかったわ。
***
――かぽーん。
脱衣所で服を脱ぎ、浴室のシャワー台の前に、ルカと並んで座る。
ルカの服装はポンチョ1枚のみだから、脱ぐとあっという間だった。
「ん。今日は、ぼくが、たいようの体、洗う」
「え?」
長い銀髪にシャワーの流水を当てていると、ルカが風呂椅子を90度回転させ、こっちを向いた。
「日頃のお礼」
そういうとルカは、俺の風呂椅子も90度回転させると、俺の頭部にシャンプーを乗せた指を這わせてくる。
「まぁ、たまにはこういうのもアリか」
常連客からしたらいつもの光景だ。
逆にいつものように、俺がルカ(太陽ボディ)の頭を洗う方が不自然に思われてしまうだろう。
なので、俺はされるがままにルカに身を預けた。
「お゛~、ぎも゛ぢ~」
「ん。ぼくの声で、おじさんみたいな喋り方、しないで」
「うす。すんません」
悪かったな。
おっさんみたいな喋り方で。
しかし仕方がないだろう。
俺の手が大きくて、ルカの頭が小さい事もあり、頭皮が満遍なくマッサージされるのだ。
声が漏れるくらい気持ちがいい。
ヘッドスパってこんな感じなんだろうな。
「ん。流す。目、瞑って」
丁寧に頭を洗って貰った後。
ルカは泡立てたボディタオルから回収した泡を、手のひらに乗せ、俺の全身を優しく撫でまわしてくる。
少しこそばゆいが、これもまた悪くない気分だ。
「ん。どこか痒い所、ある?」
「じゃああばらの当たりを頼むわ」
「あばらのどこ?」
「ギターで言うところの5弦のあたり?」
「ん。分からない」
――さわさわさわ。
「ひゃははっ!? おいっ! あらば骨でストロークすなっ!」
「ん。ペグでチューニングする」
――くりくり。
「あっ/// お、おいっ/// そこはマジでヤバいっ/// ひゃんっ///」
「ん。チューニングで、可愛い声になった」
立場は逆転しているが、いつもと同じじゃれあいを繰り広げながら、俺達は銭湯を満喫したのであった。
ちなみにその光景を覗き見していた番台ギャルは、興奮のあまり鼻血を漏らして男湯で失神し、常連のおじいちゃんに介抱されていた。
乳首をこねくり回されて喘いでいるのが、実は俺だとカミングアウトしたかったが、そしたら本当にショック死してしまう可能性が出てきたので、止めておくことにした。
営業停止になったら俺達も困るからな。
という訳で――ついに次回、ドタバタ入れ替わり編完結!
果たして太陽とルカは、元の体に戻ることが出来るのか!?
乞うご期待!




