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異世界からやってきた褐色銀髪美少女のお世話をすることになったけど、よく見たらちんちんがついているんだが返品不可とのことで後悔してももう遅い  作者: なすび
2本目っ!

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39 俺がコイツでコイツが俺で

『ピンピンピロピロ♪ ピンピンピロピロ♪』


 ――夕陽がウチに遊びにきた翌日。


「んあぁ……もう朝か……よ」


 頭上から甲高い機械音が鳴り響く。

 早朝にセットしている、スマホの目覚ましアラームだ。


 アラームよりも早く起きるのが習慣化した俺は、久方ぶりに聴くアラームを止めるべく、布団の外へ手を伸ばす。

 指先に触れる硬い板の感触。

 液晶を下から上へなぞることで、耳障りなアラームは鳴りを潜めた。


「んぁ? なんか、俺のスマホでかくなってねぇか?」


 6:00と表示されたスマートフォン。

 いつもは俺の手の平の上にすっぽりと収まってしまうはずのソレは、今日に限っては両手でも持て余してしまう程に大きい。


 あわてんぼうのサンタクロースが俺のためにPro Maxを買ってくれたのだろうか?

 なんて――んな訳ねーか。


「っていうか……声……高くなってね?」


 乾燥した空気で喉を痛めてしまったのか?

 いや――喉を痛めて声が低くなることはあっても、高くなることはないだろう。


 明らかな異変を感じ取り、俺はモゾモゾと布団から起き上がる。

 10月の渇いた寒気が、下半身(・・・)右肩(・・)から直に熱を奪い去っていく。


「さみぃ……やはりおかしいぞ。俺の腕、こんなに細かったか?」


 二の腕をさする手が眠気眼ねむけまなこの視界に入る。

 視界に映るそれは、人並みに筋肉のついた成人男性のそれではなく、力を入れたら折れてしまいそうな、華奢な子供のソレ。


「ま、まさか……!?」


 だんだんと眠気が去っていくことで、スリープモードから復帰した俺の脳味噌も冴えわたり、脳裏に嫌な予感がよぎる。

 布団の上から飛び起き、居間の一角に置いてある姿見の前に立つ。


 しかし俺の目の前に現れたのは――20数年見続けた冴えない成人男性の顔ではない。

 代わりに映っていたのは――


 ――初冬の乾燥した空気をもろともしない、瑞々しい褐色の肌。

 ――寝起きにも関わらず、絡まることなく指の隙間を流れていく滑らかな銀髪。

 ――眠たげに半分閉じているにも関わらず、零れ落ちそうなほど大粒な瞳。


 ――そして、10人中10人が魅了されるであろう、可愛らしく整った顔。


 俺はこの美少女――否――美少年の顔を知っている。


 ルカになってる……!?

 ってことは、ルカは……!?



「もしかして俺達――入れ替わってるううううぅぅぅぅ~~~~っっっっ!?!?!?!?」



 まだ住民が寝静まっている早朝の下町に――ボーイソプラノの絶叫が響き渡った。



挿絵(By みてみん)



***



「おいルカ! 起きろ! 大変なことになってんぞ!?」


 俺は短い足をバタつかせながら畳の上を走り布団に戻ると、もっこりと膨らんだ掛け布団を剥ぎ取る。

 予想通り――そこにいたのは無精ひげを生やした、鏡の中でしか見たことのない成人男性。


 ルカの魂が入っているであろう日比野太陽の肉体を、非力な腕で懸命に揺さぶる。


「んぁ……おはよ……たいよぉ……あれ? 目の前に、ぼくがいる?」


「違う! 俺達入れ替わってるんだ!」


 俺の声で舌足らずな喋り方をするルカは、乾燥した目元をグリグリと擦りながら上体を起こす。


「(うおぉ……ルカの視点から見る俺、かなりデカいな……)」


 ルカはもぞもぞと寝間着のスウェットのゴムを引っ張ると――


「本当だ……たいようになってる……!?」


「ちんちんで認証するな!」


 普通は顔とかだろ。

 確かに毎日銭湯で見せてるけど。


「ん。たいようの太陽(息子)が見えちゃってる。戻さないと」


「あっこら止めろ! 皮を引っ張るな! 健全な男は朝起きるとだいたいこうなってんだよ! お前もいつか分かる時が来るから!」


 太陽サン(sun)だけに息子サン(son)ってか?

 やかましいわ。


「ん。たいようの場合、太陽というより火星(仮性)だけど」


「やかましいわ」


 いや、マジでやかましいわ! ほっとけ!

 それに男の7割は仮性だって高須院長も言ってたし!


「んで。心当たりはあるんだろうな?」


「ん。仮性は主に、親からの遺伝、らしい」


「俺が仮性包茎の話はもういいんだよ! 俺が聞きたいのは、なんで朝起きたら、お前と身体が入れ替わってるかについてだよ!」


 漫画やアニメならいざ知らず。

 現実世界で身体が入れ替わることなどありえない。

 となれば――自ずと容疑者は絞られてくる。


 なんでもありの魔法を操るルカに容疑がかかるのは、当然の流れと言えるだろう。

 俺(ルカボディ)は眠たげな瞳を更にジト目に細め、ルカ(太陽ボディ)を睨みつけた。


 するとルカは「ん~」と、記憶を掘り起こすように、人差し指を顎に当てながら斜め上を見るポーズを取る。

 普段のルカの顔でやると可愛い仕草なのだが、成人男性のつらでやられると無性に殴りたくなってくる――が、俺の顔面なので我慢した。


 ただでさえ汚い面を更にボコボコにするのは得策ではない。


「あ……思い出した。昨日、グラウシュトゥーレン、飲んじゃった」


「グラウシュトゥーレン?」


 聞き馴染みのない単語だ。

 異世界語だろうか?


 いや待て……どこかで聞いたことがあるぞ……。

 あれは確か……。




『ん。戒律でグラウシュトゥーレンは口にしてはいけないことになってる』




 脳裏に蘇る、昔の記憶。

 思い出した。

 ルカがこの世界に来たばかりの時に、ルカに好き嫌いやアレルギーを聞いた際に返ってきた言葉だ。


「ん。あれ」


 ルカは台所を指差す。

 その先にあったのは、昨日遊びにきた夕陽が、料理に使った赤ワインのボトル。

 昨日までは僅かに残っていたはずだが、今は空っぽになってる。


「まさか……酒を飲んだのか!?」


「ん。ごめんなさい。ブドウの絵、描いてあった……ブドウジュースだと思った」


 ルカ曰く――昨晩ルカは、喉の渇きで目を覚ました。

 麦茶を飲もうとした所、冷蔵庫に美味しそうなブトウジュースを発見、それがワインだと知らず飲んでしまった――とのことだ。


 それ以降の記憶は、全てなくなっているらしい。


「ん。巫女の血族、グラウシュトゥーレン飲むと、クラクラして、魔力が暴走する。それで、〝2人の魂を入れ替える魔法〟、使っちゃった、みたい」


「なるほどなぁ……」


 ルカは下戸げこの血筋で、酩酊めいていした勢いで魔法が誤発動してしまうから、酒を飲んではいけないならわしになっていたのか。


「おいおい勘弁してくれ。最近のコンプラは厳しくて、未成年飲酒や喫煙はご法度なんだ。アニメ化できなくなったらどうするんだ」


 それに肉体入れ替えネタも、声優さんの負担が大きいから避けた方がいいと言うのに……。


「ん。40話近く投稿して、未だ書籍化の話すら来ていないのに、アニメ化の話をするのは……杞憂」


「はい、仰る通りです」


 って、しょうもない話をしている場合ではない!

 原因が分かったのなら、とっとと元の肉体に戻らなければ。


「じゃあ元に戻す魔法を使ってくれ。今日も仕事なんだ。こんな状態じゃ仕事にならん」


「ん。むり」


「…………へ?」


「この魔法は、発動から24時間で元に戻る。けれど――24時間経つまで、絶対に戻らない」


「なん……だと……!?」


 ルカから絶望的な事実を突きつけられ、俺の顔は絶望で青ざめるのであった。




 という訳で――ドタバタ入れ替わり編スタート!

 次回へ続く!


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