01.雷鎚ゲット
「日頃熱心に祈ってくれているからこれあげる」
唐突に神の声が聞こえ、聖女エライネの手元に片手持ちの戦鎚が現れた。
「え?」
農耕の神でもある雷神ピカドゥーンに今年の豊穣を願って祈りを捧げていたエライネは驚いた。
「強いよ、これ」
神の声はそれだけ言って聞こえなくなった。
「強いよと言われましても……」
聖堂の中でぽつんと一人、エライネは戦鎚を握りしめたまま茫然としていた。
戦鎚には、柄のところに<雷鎚ドンガラ>という刻印がされている。なんかよく分からないが、神からの贈物のようだ。
「とりあえずグウに相談してみようか……」
聖女エライネは金色の髪と緑の目を持つ19歳の美女である。グウ・タラ―というのは彼女が愛する勇者で、幼馴染である。子供のころには結婚の約束をしたこともあった。もっとも、グウ本人は忘れているかもしれなかったが。
エライネは聖堂を出て村はずれにあるグウの家に向かった。
正午をとっくに過ぎているのに、グウはまだ寝ていた。
小さな家屋の扉をあけ放つと、中からは男の体臭がむわーっと匂ってきた。エライネは思わずくらくらした。
「ちょっと! ちょっとグウ! 起きて! 起きなさいっ!」
グウの家の中は様々な衣服や物品がだらしなく散乱しており、まるで泥棒に荒らされたあとのようだ。
「んー? エライネかい? おはよう」
ベッドからグウを引きずり出して床に落とすと、ようやく目を覚ました。
「おはようじゃないわよ。いつまで寝ているつもり?」
「君の夢を見ていたんだよ」
「え?」
エライネはちょっとドキっとした。ぐしゃぐしゃの髪に寝ぼけまなこであっても、グウは整った顔立ちをしている。
部屋中に充満するグウの体臭が、またエライネをくらくらさせる。
「夢の中の君はとても追い詰められていて、それを僕が助けるんだよね」
「正夢だったらいいわよね! 今までに一度だってそんなことはありませんでしたけどっ!」
照れ隠しもあって、エライネはわざとツンケンしてグウの頭をつかみ、髪の毛をさらにぐしゃぐしゃにしてやった。
「で、どうしたの今日は?」
「そうだった! 神様から贈り物をもらったの。ほら、このメイス!」
「へえ? ちょっと貸してみて」
とグウが雷鎚ドンガラをエライネから受け取った瞬間、
「おっもっ!」
グウ・タラーはメイスを右手で支えきれずに、思わず床に落としてしまった。




