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終章「永遠のプリンセス、らしいが」・第12章 プリンセスになれない者たち
「ねえ、森岡くん」
政界プリンセスがふと思い出したように言う。
「わたしたち、永遠のプリンセスにはなれなかったね」
森岡は、言葉の意味を測りかねて、少し首をかしげた。
「会長の娘さんも、海外部門トップも、義理の兄も、外資の友だちも。
みんな、何かの“お殿様“か“お姫様”であろうとして、どこかでこじらせてる気がする」
彼女は自分の胸を指さした。
「わたしは、ただの『そこそこ優秀な一般職』でいいやって、ようやく思えた」
「わたしも、『現場叩き上げの取締役候補』で十分ですね」
二人は、顔を見合わせて笑った。
ビルの上層階では、新しい経営計画のドラフトが作られている。
その紙のどこかに、「政界」「外資」「創業家」「元華族」といった単語は、きっと慎重に言い換えられて載るのだろう。
けれど、森岡と政界プリンセスには、あの日の会議室と、甘いハレムの空気と、こじれた劣等感の匂いが、いつまでも生々しく残っていた。
それを物語として語れる人間がいるなら、この騒動も、少しは意味を持つのかもしれない。




