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誓いの果て  作者: のの
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17/77

戦地コッツウォート⑥

 クラウス達が通り越したところで、テオグラード達は大通りに入った。



 すぐに、コッツウォートの王と第一王子の首の刺さった槍が地面に倒れているのが目に入った。

 キリウェルは、テオグラードを抱え込みながら通り過ぎる。

 何も持たないテオグラードにキリウェルが、武器や金目のものをテオグラードに渡していく。

 魔術を使うとなぜか体調が悪くなるテオグラードを気遣いながら進む。

「テオグラード様、体調が優れませんか?」

 少しふらつくように歩くテオグラードに、キリウェルは心配な顔で話しかける。


 その時、悲鳴や怒号が大通りに響く。


 大通りに入ったばかりのテオグラード達は、仕方なくまた第二所領側へ急いで戻ることにした。


 馬車を先頭に王都から、先ほどの隊列が戻ってくるが、隊列の後ろには王都にいた異形が連なるようについて来ていた。

 さらに後ろでは、弓矢を構える勇者の旗を掲げる兵達が馬に乗ったまま待機している。

 テオグラード達が隠れた辺りで、馬車を先に逃がす為にフレール兵は、敵を迎え撃つ。


 クラウスの兵は、戦地に躊躇なく入っただけあり、順当に敵を倒す力を持っていた。

 しかし、異形との戦いは苦戦した。

 すばしっこい四つ足が兵達をすり抜け、馬車へと向かう。

 馬車を引く馬が嘶きをあげ、止まってしまう。馬車を守る兵達が異形と戦うなか、1台の馬車に異形が飛び込む。

 悲鳴と共に、血だらけの待女が馬車から投げ出される。

 他の馬車にも異形が飛びつくと、馬車から待女達が慌てて逃げ出す。

 リリアーナと待女、少数の兵が、崖に沿って上に続く道を登り森の中へ逃げ込んだ。


 異形が数体リリアーナ達を追いかけ、第一所領の森の中に消えていった。






「リリアーナ!」

 クラウスは、誰もいない馬車を見て呆然とする。

 しかし、敵の攻撃で探すことが出来ない。

 クラウスは、ただ目の前の敵と戦う事しか出来なかった。



 異形をなんとか殲滅させ、クラウスは、息を吐いた。

 リリアーナが心配だが、負傷者が多く、兵達を探索に動かすことが出来なかった。


 これ以上戦闘を続けることが不可能と判断したクラウスは、一旦コッツウォートを出ることを選択した。

 リリアーナの護衛としてつけていた兵達が、リリアーナを守っているだろうことを願った。

 明日、リリアーナの探索をすることにした。

「すまない。リリアーナ。」




 静かになった大通りを、テオグラード達が様子を見ながら出てくる。王都に向かう方は、人も異形の姿も見えない。

 反対は、遠くに4台の馬車がバラバラに止まっていた。

 そちらにも人や異形の姿はなかった。

 キリウェルは、テオグラードの背に手をあて進もうとした瞬間、膝をつき苦しみ始める。


「キリウェル!」


 手を伸ばしたが、黒い霧が竜巻状になり、そこには、黒い狼がいた。

 後ろを振り向くと、ミッヒやカイ達も狼や鷹になっていた。


 手を伸ばしたまま、固まってしまっているテオグラードに黒い狼は、頭ついて進むよう則す。

 テオグラードは、我に返りキリウェルの指示に従った。


「ごめんなさい。」

 テオグラードは、倒れている兵の側に落ちている巾着と短剣を拾い上げる。こぼれ出ていた金貨を巾着の中に入れ、自分が腰に着けている薬入れに押し込む。この金貨は、戦いに参加する前金だろうと思った。

 家族に持っていくはずのお金を盗み、テオグラードは打ちひしがれていた。

 また、黒い狼がお尻を頭つく。

 テオグラードは、ふらつく足で斜め横断するように前へ進む。

 死体につまづき倒れ込む。

 黒い狼が、服を引っ張りテオグラードを起こそうとする。

 テオグラードが立ち上がり前を見ると、赤い毛色の狼が案内するようにゆっくり進み始めた。

 他の狼も、前や後ろ、左右にもテオグラードを守るようにいる。

 銀色の狼がテオグラードや赤い毛色の狼を追い越して行く。


 もう大通りを半分過ぎ、第一所領へ向かう枝分かれしている坂道がはっきり見えてきた。


 先頭を行く銀色の狼が立ち止まりテオグラードを見ている。左目に大きな傷があり、残った右目で鋭く回りを確認すると危険を知らせる遠吠えをあげる。


 銀色の狼を先頭に狼達が、戦地を疾走しはじめた。


 テオグラードも黒い狼と共に走り出す。


 冷えきった空に、馬の嘶きが響きわたる。

 

 2本の矢が少年に向かって空を切る。

 黒い狼がテオグラードに体当たりし、テオグラードは顔から雪に滑り込んだ。矢は力強く、テオグラードの少し先の雪を掻き分け地面に突き刺さった。

 狼の悲痛な鳴き声にテオグラードが振り向くと、一匹の狼の肩に矢が突き刺さり、前のめりに倒れ込む。すぐに赤い毛色の狼が傷をおった狼の前に立ちはだかり、遠い兵士に向かって威嚇している。


 兵士がまた弓矢を構えるのがテオグラードには見えた。テオグラードはすぐに何かを唱えると空に向けて手を挙げた。


 風が地面の雪を舞い上げ兵士の狙う先は白い壁となった。テオグラードは傷ついた狼と赤い毛色の狼に手を向けると力尽きて雪に倒れ込む。黒い狼が咆哮をあげると、テオグラードを引きずるようにして服に食らい付いている。ミッヒがテオグラードを担ぎ上げ、後ろを振り向く。


「カイ、行くぞ!」


「ああ、すまん。」


 後ろを行くカイの肩には矢が突き刺さり、顔をしかめながらミッヒの後を追う。


 まだ白い壁は追っ手を遮っているが、先程より勢いがなくなっていた。


 銀色の狼と黒色の狼が他の狼たちと連携し、テオグラードを担いだミッヒを先導していく。

 森に逃げ込み弓矢の射程から外れる。





「誰の魔術だ!?」

 第二砦を出てヴァルの元に向かうナギが思わず声をあげる。

「ありゃ、テオ坊の魔術だな。」

「だな。」

 ガビとゴビが困ったように言う。

「あんな凄い魔術があるなら、敵と戦うのに使えるぞ!」

「ああ、そうだな。」

 アーチの勝機を見いだしたかのような声とは裏腹に、ナギは冷たく答えた。


 まったく、王位継承者があんな魔術持ってたら邪魔なんだよ。

 アーチを除く、三人は別な考えで白い壁を見ていた。




 弓矢を構える勇者の旗を持つ隊列が、少数ながら、大通りを外に向かって疾走して行く。白い壁がやっと消えたのだ。

 マントの男も大柄な男も、その隊列にはいなかった。

 すでに二人は、コッツウォートから姿を消していた。

 残った兵は、皆空虚な目をしていた。

 操られるように、大通りを疾走し、前を行くクラウスの兵達に追い付こうとしていた。


 クラウスは追ってに気付き、少数の敵兵と見て戦うことを決断し、兵達を叱咤し、雄叫びをあげ敵兵に突進していく。


 しかし、敵兵は、横からの弓矢の攻撃であっという間に殲滅された。

 リルの兵だ。


 リルの隊列が、森に消えていく。


 テオグラードも第一所領の森へ消えていき、リリアーナと出会う。


 クラウスは、妹を見つけられないまま去っていく。


 こうして戦地となったコッツウォートは、負けはしなかったが、国王と第一王子、他国では第三王子も処刑されたと噂が流れ、壊滅状態と思われた。



 テオグラードは不安の中、リルは葛藤の中、クラウスは失意の中、三人はそれぞれの道を進む。


 それぞれの役目を果たす為に。



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