戦地コッツウォート③
テオグラードの意識が戻った時、辺りは暗くなり結構な雪が積もっていた。
「寒い!痛い!」
寒さで震えた体を激痛が襲った。
何が起こった!?
そうだ!凄い爆風が起こって、横に飛ばされたんだ!
テオグラードは、小さな木々の枝に引っ掛かるように倒れていた。
小さな木々の柔らかい枝がクッションとなり、テオグラードは大怪我を逃れていた。
テオグラードは、我に返り、頭をあげる。
「うわー!」
顔の前を両腕で庇う。
何も起きないので、そっと見ると、やっぱり目の前に、黒い狼がいた。
テオグラードは、慌てて立ち上がり、武器を探す。
喰われる!
やっと細い枝を見つけ振り回す。
「来るな!」
狼は、しつこく迫ってくる。しかし、一向に噛みつかれないことを不思議に思い、ゆっくりと狼を観察する。
「…犬?…じゃないよなー。」
コッツウォート内で、狼を見たことがなかった。テオグラードは、王室図書館で見た狼の絵しか見たことがない。
「でも、やっぱり狼だよなー。」
兄上が飼っていた?それで人になついている?うーん。
狼が襲ってこないので、やっと周りを見る余裕が出た。
「えーーーーーーーーー!」
テオグラードの周りには、いつの間にか20を超える狼がいた。
こっ、今度こそ喰われる!
細い枝をしっかり掴み。
どこに逃げるか考える。
急に後ろから、突き飛ばされて、テオグラードは顔から雪に突っ込んだ。
振り向くと、目の前に銀色の狼がいた。
喰われる!っと思った瞬間、ベロりと顔を舐められた。
「えっ。」
もう一度、ベロり。
「味見かよ。」
しかし、その後は、大人しく座っている。
「あはっはっはっ。」
急に、テオグラードは笑いだした。
「お前、アディに似ているな!」
アディと同じ左目に大きな傷があった。
なんだか、触っても大丈夫なような気がして銀色の狼の首に手を当てゆっくりと撫でる。
突然、黒い狼が銀色の狼に体当たりして、黒い狼が目の前に座る。
「なんだお前も撫でて欲しいのか?」
黒い狼を撫でる。
「なんか、お前はキリウェルみたいだな?」
テオグラードは、突如我に返る。
「キリウェル!」
「アディ!」
「ミッヒ!カイ!誰か!」
テオグラードの周りには、誰もいなかった。
「あの爆風だ。みんな同じように飛ばされたんだ!」
テオグラードは、細い枝で、雪をかきながら、探し回る。
「みんなどこ?」
慌てるテオグラードの服を、黒い狼が引っ張る。
「なんだよ。お前!遊んでる暇はないんだよ!」
テオグラードは、必死だった。
死体を何体か見つけた。
知っている顔はいなかった。
足に何か当たった。
それを見て、驚いて尻餅をつき悲鳴を上げた。
それは、ミッヒの弟ティムの頭だった。
急激に震えが襲った。
また、ティムが死ぬ瞬間がよぎる。
呼吸が荒くなり、息が出来ない。
「誰か…、助けて…」
か細い声が、呼吸の合間からこぼれでる。
黒い狼が、頭を擦り寄せる。銀色の狼が顔を舐める。
赤い毛色の狼が前に立ち頭を擦り寄せる。
狼達が、テオグラードを暖めるように体を寄せる。




