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悪役令嬢は魔王と婚約して世界を救います!  作者: 水神 水雲
第5章 魔王復活の儀式(6歳)
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39-4 生きたい貴方を尊敬する

「今の光は……ってそうだ傷口っ」


 慌てて確認すると、驚く事に傷口から溢れ出ていた血は嘘のように止まっていた。


「ま、魔法が成功したんだ! 血が止まったならポーションが効くかもしれない!」


 私はポケットからポーションの入った瓶を取り出すと、それを少年の口元へ当てた。


「これポーションなの、お願い飲んで!」

「…………」

「飲んで! 飲まないと死んじゃう!」


 口に当てても口の端からポーションが零れ落ちてしまう。自力じゃ飲めないかもしれない、でも無理矢理にでも飲んで貰わないと死んでしまう。


「一か八かっ」


 私は想いきり息を吸い込んで止めてから、ポーションの瓶を煽って口いっぱいに含んだ。


(せーーのっ)


 少年の顎を引いて口を開かせ、自分の唇を彼の口に押し当ててポーションごと思い切り息を吹き込んだ。


「うっ、ぐぅっ」

「はぁっ、けほっ、もう一回!」


 鼻も押さえないと、鼻から出てきてしまうかもしれない、兎に角体内に摂取してもらわなくちゃ効果がないのだから。

 もう一度同じようにポーションを口に含んで、少年の口に唇を押し当ててポーションを流し込む。


 なんとか飲ませられてるっ、全部飲んで貰えば助かるかも!


 三回目のポーションを飲ませて、残りのポーションも口に含もうとした時、私の腕がか弱い力で引っ張られた。


「……じぶんで、のめ、る」


 黒い髪の毛から除く金の瞳からは僅かに生気が甦っていて、しっかりと私の事も判別出来ているようだった。


「よかった! ゆっくり飲ませるからね、全部飲んでね」


 少しでも飲みやすいようにと少年の頭を傾けてポーション入りの瓶を口元に寄せて、飲ませる。

 ごくごくとゆっくりと自力で飲み干し、少年は力の抜けた腕を床に放り出した。

 じわじわと、ゆっくりだけどポーションが効いているんだろう。呼吸も落ち着いてきているようだ。


 ポーションで体力の回復は成功! あとは彼の自然治癒力の力を信じるとして、お医者さんか治癒術士さんに傷口を塞いでもらうまで患部に細菌が入らないようにしないとね!

 前世の保健体育の勉強がここで生きてくるとは思わなかったな~なんて考えながら、懐にしまっていたナイフを取りだしてスカートをビリビリと破り裂いた。ちょっと長めのを着てきていたから、短くなっても大丈夫だろう。

折りたたんで少し残っていたポーションを浸してから少年の患部にスカートを切り裂いた生地を乗せた。


「動いちゃ駄目だよ、絶対安静!」

「……おまえは」

「ん?」

「だれ、だ……名前は」

「私?」


 このままの体制だと身体が辛いのではと思って、少年の頭を持ち上げて私の膝に乗せて座高を高くする。

 ずっと私をボンヤリと見上げてくる少年に名乗るかどうしようか迷ったけど、悪い子には見えないし、子ども同士だからいいかなと思って、満面の笑顔で名前を名乗った。


「私はウィズだよ、ここにはちょっと誘拐されにきたの!」

「はぁ……? 何馬鹿な事言ってんだ」

「そういう貴方の名前は?」

「…………」


 少年は今までばっちり合っていた筈の視線を逸らして無言になってしまった。

 え? 私には名前を聞いてきたのに、自分では名乗らないの? 恥ずかしがり屋さん?


「名前が分からないとなんて呼べばいいのか分からないよー?」

「好きに……呼べばいいだろうが」

「そう? じゃあ、ドン・マッチョ君って呼んじゃおっかなぁ!」

「レグルスだっ」


 私の付けた名前が相当お気に召さなかったのか秒速で言葉を被せてきて、名前を名乗ってきた! かっこいいのにドン・マッチョ! マッチョのボスだよ?! 私が男だったら絶対にこの名前がいいのに!


「レグルス君、っていうの?」

「くんは、要らない……」

「じゃあレグルスって呼ぶね!」


 頭をわしゃわしゃと撫でながら嬉しいなぁと笑うと、レグルスは心底不思議そうな顔をしてきた。


「なんだ……そのアホ面」

「レグルスが生きてて嬉しいなぁって」


 レグルスの瞳が揺れ動く。


「生きていたからこそ、私達出会えたんだもんね!」


 レグルスは何か言葉を言おうとしたけど言えず、代わりに腕で目元を隠してしまった。


「まぶしい……」

「え? ここかなり暗いと思うけどな」

「馬鹿みてぇ……」


 ぽたり、とレグルスの瞳から涙が伝い落ちた事に気がついたけど、あえて気がつかないフリをした。


「絶対に生きてここから出ようねレグルス、外はここよりももっと眩しいよ」

「…………」


 頭を撫でると、レグルスは僅かに頷いた。

◇◇◇◇◇


作品を読んでくださりありがとうございます!


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