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悪役令嬢は魔王と婚約して世界を救います!  作者: 水神 水雲
第3章 闇の精霊との契約(4歳)
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28-1 闇の大精霊とは?


「おとめげーむってなんだっけ……」


 独り言を零しながら目を開けると、真っ先にパパの姿が視界に飛び込んできた。


「大丈夫か?」

「ぱぱ……」


 大きな手で優しく頭を撫でられて、その手が気持ちいいなぁとにまにま笑ってしまう。


「あれ……なんでウィズねてるの? ここどこ?」

「魔力鑑定の時に魔力が暴走した、覚えてないか?」

「そっかぁ……」

「怪我の方はもう既に治癒術士に治してもらった、痛む所はないか?」

「うん、大丈夫」


 言われてみると記憶が甦ってくる。そうだ、私の魔力が暴走して傷だらけになって、そこをパパが助けてくれたんだ。


「ここは城の客室だ、屋敷に連れて帰りたかったが、五月蠅い奴等が帰してくれなくてな」


 お城の客室……?

 改めて自分の状況を確認すると、私は大きなフカフカのベッドに寝かされていて、パパはベッドの隣の椅子に腰掛けながら私の頭を撫でてくれていた。


 天窓付の高級そうなベッドだぁ、天井に描かれている油絵の神話画をぼーっと眺めながら、この絵画を売ったとしたらプロテインが何個買えるだろうなんて意味の無い事をぼんやりと考えているうちに、段々と意識が鮮明に戻って来た。


 そうだ、私魔力鑑定の後に気絶して……それで、そのあと闇の精霊のアイビーに出会って。


「はっ! パパ! 大変! 凄いの! ウィズにね! 精霊さんが取り憑いていました!」

「精霊? お前はまだ精霊と契約していないだろう?」

「それがね、生まれた時から側に居たんだって!」

「どういう事だ?」


 ベットから飛び起きて、闇の精霊の事をパパに説明した。

 闇の精霊が産まれた時から側にいたという事、そしてその精霊に何度も私は助けられた事がある事。普段は闇の精霊は創り出した空間に引きこもっていて、外には出てこないと言っていた事。


 興奮気味に語っていると、パパの顔が段々と険しいものに変わっていく。


「闇の精霊……そんな精霊は聞いた事がないな」

「そうなの?」

「ああ、魔王討伐の旅をしていた最中でもそんな話は聞いた事がない」


 パパでも知らないんだ、闇の精霊さんは相当珍しいのかな。


「それに、こちらの意思とは関係なく勝手に契約済みとは……怪しい限りだ」

「でもねでもね! かわいかったの!」

「可愛い姿の奴の本心が必ずしもそれと同じとは限らない。現にその精霊が魔力鑑定を拒絶したせいでお前の魔力が暴走して怪我を負ったんだろう」

「でも…」

「他には何か言っていなかったか? 例えばどういった力を使えるか、等は」

「言ってたよ! えっとね~気配を消せるでしょ~眠らせるでしょ~」


 パパは腕を組みながら話を聞いていたけど、目が言っている「地味だな」って! わかるぅうう!! 私もパパみたいに派手に攻撃出来る魔法を期待してたんだけどね!

 まだあったと自分の手をポンっと叩いてアイビーの教えてくれた事をパパにも教えた。


「あっ、あと時を止めたり、過去と未来を見る事が出来るって言ってたよ!」


 ガタンッと大きな音を立ててパパが座っていた椅子が地面に倒れた。

 パパは驚愕を浮かべ立ち尽くしたまま、私を凝視していた。


「時を止め……未来予知?」

「ぱぱぁ?」


 やっぱりパパも私の魔法が地味でビックリしてるんだね、せめて肉体強化できて筋肉もりもりになれる魔法がよかったね。

 しかし、パパは青ざめた顔をして私の心配とは真逆の言葉を叫んだ。


「そんな奇跡のような魔法は聞いた事がないぞ!」

「へ……?」

「ウィズ、お前の魔力値は相当高い……恐らく、大精霊が見えてしまう程に」


 パパは椅子にどかりと座り直すと頭を抱えてしまった。

 えっと、実はもう水の大精霊のポセイドンの姿を見る事が出来るんだけど、ポセイドンの事はメティスとの秘密だからパパには言えないね。でもそっか、私がポセイドンが見えていたのはやっぱり魔力が高いからなんだね。


「俺の子だからな、魔力の高さは遺伝するかもしれないと思っていたが……まさかそんな厄介な精霊に好かれていたとは」

「アイビーは厄介なの?」

「過去や未来を覗ける精霊がいるだなんて知られれば……貴族共は喉から手が出る程にお前の力を欲し、利用しようとしてくるだろうな」

「えー? こんなに地味なのにー?」

「その力を地味だと感じているのは、お前が純粋な証拠だ。ウィズ、俺が許可するまで絶対のその力の事は他へはバラすな」

「う、うん」

「その精霊が魔力鑑定を拒んだお陰でお前の正式な鑑定結果は出ていない事が幸いしたな。精霊はそれを計算したうえで拒絶したのか、それともまた別の理由があるのか……」


 パパは腕を組んでからしばし考え、何かに気づいたようにハッと顔をあげると私に詰め寄ってきた。


「その精霊は、ウィズが赤子の時から側にいたと言っていたな?」

「うん!」

「お前の事を見ていたのか? それとも力を授けただけか?」

「なんかね、眠っていない間はずっとウィズの事見守ってたっていってたよ」

「ならっ」


 パパは突然私の両肩を掴んで詰め寄ってきた。その迫力に驚いて目がまん丸になる。


「あの日はっ、レベッカが襲われた日はどうだったか分かるか?」

「ママ、が?」

「お前はレベッカと同じ馬車に乗ったな? その時の事件も終始、その精霊は見ていたのなら何か手がかりがっ」


 あ……そっか、あの時確かに私は襲いかかって来たならず者を眠らせる事ができた。つまり、アイビーの力を使ったいたという事。じゃあ、アイビーはあの日の事はずっと見てたって事?


 ママと弟君の事があの後どうなったかも、アイビーなら知ってるかもしれない?!


「パパ! ウィズを殴って! 気絶してまたアイビーに会って聞いてくるから!」

「子どもに手をあげる位なら舌を噛んで死ぬ」

「でもーっ!! アイビーのいる所に行くのに眠る以外のやり方で会える方法ウィズしらないからっ」


 何で気づかなかったんだろう?! もしかしたら二人の重要な手がかりをアイビーは知ってるかもしれないのに!

 二人の生死を、見ていたかもしれないのに!

 もうこうなったら自分で気絶するしかない! っと柱に頭でもぶつけてみようかと考えた時、パパは何か察知したように出入り口の扉に振り向いた。


「ウィズ、この話はまた今度だ、屋敷でしよう」

「で、でも早いほうが」

「いや、らしくもなく焦ってしまった。この状況だ……まずお前の精霊について調べる事の方が先決だったな」


 パパは立ち上がると足早に扉へと向かい、ドアノブを引いた。


「うわっ?!」

「わっ?!」


 その瞬間、エランド兄様とメティスが部屋の中へ倒れ込んできた。


「エランド兄様! めちす!」


 二人は転んだ拍子に床に打った腕や足を擦りながら、恐る恐る仁王立ちしているパパを見上げた。


「盗み聞きとは関心しないな」

「す、まない……そんなつもりはなかったんだが」

「ウィズの目が覚めていないのに離れたくなかったんだよ」


 パパは深く溜息をついてから、メティスへ視線を向けた。


「丁度良い、確認しておきたい事がある入れ」

「なんの話を?」

「それはこれからする」


 メティスはパパを睨みながらも部屋の中へと入ってきて、それに続いてエランド兄様も入って来ようとしたけど、パパはエランド兄様の目の前に立ちふさがった。


「ご遠慮願おう」

「俺が居たら不都合でもあるのか」


 パパの行動に驚いた様子のメティスと、訝しげにパパを見上げているエランド兄様。


「俺の娘に関する重要な話だ、他大勢に聞かせるつもりはない」

「俺が子どもだから誰彼構わず口外すると言いたいのかっ」

「馬鹿にしている訳じゃない、信用していないだけだ」

「っ!」


 パパは扉に手を掛け、エランド兄様の入室を拒んだ。


「ウィズが目覚めたら知らせるようにファンボスに言われていたんじゃないのか、そこに隠れているお前の護衛にでも命じて連絡してくるといい。遣いが来るまでには話は終わらせておく」

「っ俺は」


 扉の隙間からエランド兄様が心配そうに視線を私に送ってくる。

 エランド兄様は私が心配で扉の前で待っていてくれたんだよね。私は勿論エランド兄様を信頼しているし、大事なお話をするのなら尚更一緒にいて欲しい! さあ今こそ子どもの我が儘全開にエランド兄様も一緒じゃないと嫌! と駄々をこねる時だ……なんて思うんだけど。

 チラリとパパの顔を見つめた。

 顔色が、あまり良くない気がする。私が闇の精霊の魔法について説明してからだ。

 その後直ぐに扉を開けてメティスだけを招いたから、きっとその話の延長で何か話があるんだろう。パパが今エランド兄様に聞かせられないと思った話をするなら、今は大人しくパパの言う事を聞いておこう……それでもしも話せる内容だったら私があとでエランド兄様に教えてあげればいいもんね。


「エランドにーさま、心配してくれてありがとう、ウィズ元気だよ!」

「ウィズ……」

「あとでまたねっ」


 食い下がって堪るかと意地になっていたエランド兄様は、私の言葉を聞いて悔しそうに目を伏せながらも一歩引いた。


「お前は入れ」


 パパはエランド兄様が諦めた事を確認してから、廊下で待機している鎧姿のポセイドンにも声を掛けた。


「…………」

「主を俺の前に一人で送り出してもいいならここに居ろ」


 パパの挑発とも呼べる言葉にポセイドンも無言のまま部屋へと入ってきた。

 全員入った事を確認し、パパは扉を閉めて魔法の杖を振りかぶった。


「凍れ」


 バキバキと氷は音をたてながら部屋一面を覆い尽くし、部屋はあっという間に壁も天上も床も氷張りになってしまった。

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