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ギザキの戦い 〜29〜

光と闇の狭間で戦うギザキの物語

29.飛翔

「ノィエぇぇぇぇぇぇぇ!」

 叫びながら、少女の名を叫びながらギザキは呪った。自分自身を呪った。姫を救えなかった自分。敵から愛しき者達を護れぬ自分。今また失おうとする自らの運命を。

「リぃタぁンんトぉっ!」

 呪文を叫ぶ。ノィエの言葉を信じて叫ぶ。

 天の総てに届けと、地の総てに響き渡れとばかりに叫ぶ。

 そして……祈った。呪文を唱え、願った。

 少女が……自分の手に戻る事を。祈った。全身全霊を掛けて願い祈った


 そして……願いは叶った。


 両手を握り締め、祈るかのような姿で落下していたノィエ。だが、ゆっくりとその速度が緩まり、やがて……上へと飛び上り始めた。空中を……自然界の力に抗う祈りの力が少女を、ノィエを上へと運ぶ。ギザキの腕の中へと。

 ノィエは両の手を広げ、その中に飛び込んだ。例えようの無い、眩しく、総ての穢れを払い切った、純真なまでの笑顔で。

「ギザキぃ! ありがとう! 私、わたし、信じてた! ギザキが……私を……」

 ノィエの言葉は光にかき消された。抱き合う二人の後ろ……鐘楼から幾筋もの光が伸び、広がり、やがて光の双翼となり……ゆっくりと飛び立った。光の鳳凰となって。

 鐘楼は……ただ一つ残り凛と立っていた鐘楼は鳳凰が飛び立つと同時に崩れ落ちた。まるでその役目が終るのを待っていたかのように。

 ゆっくりと……静かに……石埃をゆったりと巻上げて……

 光の鳳凰は鐘楼が崩れ落ちるのを悲しむように一声上げて、上空を舞い始めた。

「……あれは?」

 眩しく見上げるギザキ。鳳凰に手を振りながらノィエは応えた。

「輿入れよ。姉様の。書簡の中に在ったのよ。婿様……いえ、もう義兄様ね。義兄様から、『決闘が全て終わったら、この形代が鳳凰となって其方を我が館まで運ぶだろう』って。綺麗な虹色の羽根と一緒に。姉様、とても喜んでたわ。それだけの法力を持つ人なら……私も安心だし……ね」

 光の鳳凰の上に姫らしき手を振る人影。別れを惜しむかのように幾度となく、自分達の上空を周る光の鳳凰。だが、やがて薄暮へと色を変えようとしている遥かな空の彼方へと飛び去って行った。日が昇る方角へと……

 手を振り、涙を光らせるノィエと自分が成し遂げた事の総てを見つめるギザキを残して。

 そしてノィエはギザキを頼もしそうに見上げながらギザキにとっては不可解な事を言った。

「さて……と。私達の婚儀は当分お預けね。ギザキ」



 読んで下さりありがとうございます。


 この作はアコライト・ソフィアの外伝という位置づけになります。


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