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ギザキの戦い 〜26〜 1

 光と闇の狭間で戦うギザキの物語

26.光と闇の狭間

 断末魔の悲鳴をあげたのは……仇敵、元外交大臣だった。彼は……自分自身も『生者』である事を忘れていた。

(愚かな……あのような愚かな者を狙い……愚かな者に縛られていたのか! 俺は!)

 自戒の念がギザキの呪縛を解き放つ。しかし……今は自戒すべき時では無い。

(魔獣を撃ち倒さねば……)

 魔獣はゆっくりと仇敵の身体を噛み砕き、呑み込んだ。飛び散った血飛沫も鬣の蛇、ヴィードラの触手が舐めつくす。ゆっくりと……

 そして死人達の匂いを嗅ぎ、死者である事を確認する。中に残った生者……呪符に意思を奪われて生きる屍となっている者を嗅ぎつけるとその者を喰らう。最期の……呪符の効力を上回る恐怖と痛みに最期の意思の証しである悲鳴を残しながら。

「くっ! ……ん? なにっ!」

 数人の敵兵を飲み込んだ後、魔獣は突如、苦しみ始めた。叫び、首を振る。天を睨み、地を威嚇する。濁ったままの瞳で。

 そして……ケルゼや鬣の蛇の首が変わり始めた。人面の様に……蛇の様に……再び、ケルゼの様に……

「魔水晶の……効果か?」

 融合の術が暴走し、蛇の顔が人面……仇敵の顔へと変わり……ギザキを睨む。

「おのれ……斯くなる上は……貴様も喰らい……ぐぇ……」

 蛇は元の顔へと変わり……更には喰らった死人らしき顔へとも変わり……狂い乱れ叫ぶ。それでも最後の指し示である『生者を喰らう』に従い、死者か生者かを判別するため、歩みを進めた。

 ゆっくりと……狂ったままに……

(せめて……敵のあの剣が取れれば……)

 敵兵が地に突き刺している黒き剣。だが、取る為には魔獣に近づかなければならない。死臭と違う匂いを嗅ぎつければ、魔獣は即座に襲い来るだろう。

(何か手立ては無いのか? 剣を……剣は無いのかっ!)

 狂い乱れる魔獣を避け、じりじりと退く。退く事しかギザキには残されていない。そして……いつの間にかギザキは広場の端、もう半足で崖下に踏み外すかという所まで追い詰められていた。

 為す術もなく、ただ退き、魔獣に喰われるのを待つだけの自分。今、この時ほど無剣である事が、自分が無力であると感じる時はなかった。


「ギザキぃ! 剣よ! 受け取ってぇぇぇ!」

 不意に聞えた声。それは……崩れた橋の向うの破口から剣、聖宝の光の鎖剣の柄を投げ渡すノィエの声だった。



 読んで下さりありがとうございます。


 この作はアコライト・ソフィアの外伝という位置づけになります。


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