ギザキの戦い 〜23〜 2
光と闇の狭間で戦うギザキの物語
夜。
闇の中でギザキは一点を見つめ、自問していた。
(……城を失い)
瞬きもせず。
(……国を失い)
闇の中の自分。
(……友を失い)
闇を見つめる自分。
(愛しき者を失った)
心の手が過去を鷲掴みにする。
(此処にいる……)
現在の境遇を否定する。
(何故、此処にいるのだ?)
此処にいる事を確認する。
(雇われたのだ)
今までの事を思い出す。
(……それだけの事だ)
それだけの筈だった。
(……この城の兵士)
相手が言った言葉の意味。
(この城を護り続けていく。聖宝を護る者……)
それが「聖なる戦士」と言う意味。
(此処にい続けるのか?)
傭兵として生き続けて来た。
(この場に留まるのか?)
留まる事を考える。
(……留まれば、戦う事ができない)
戦う意味。それは……
(……彼奴らを……仇を討つのだ)
それが此処まで生き長らえた意味。
(生き永らえたからこそ此処にいるのだ)
目を閉じ、心の揺らぎを掴み止める。自分の指を胸に突き刺して掴む。心を。
(……此処にはいられない)
決意が揺らいでいる。
(此処にいては……仇が取れぬ)
今までの決意に戸惑う。
(仇を取らねば……此処にいる事ができぬ……いる事は……)
戸惑いの理由が……認めたくなかった理由を悟った。
(そうか。俺は……此処にいたいのだ!)
しかし、その為には……
(明日……総て……決闘の総てが終る。そして……)
ほんの先の未来が心を闇へと導く。
(戻るだけだ。此処に来る前の……数日前の自分に。傭兵の自分に。仇を晴らす事だけを願う一介の傭兵に。数年間……あの日から戦い続けた……只の傭兵に)
闇の先の……先に在る物を抱きしめた。
(戻る為に……ここに戻る為に。この城の戦士として戻る為に……戻るのだ。傭兵に……)
何故か、今、此処にいる事が無性に……悲しかった。
不意に……部屋に忍び込む光を見つけた。扉を開け見ると山の端の空を黒を紫へ、暖かき赤へと変え、白に染めて登り来る太陽。
(……再び戻る。そのための……)
心を闇へと閉ざし、ギザキは覚悟を改めた。
「……勝つ。旅立つ為に……勝って見せる」
改めて誓う覚悟は……何故か悲しかった。無性に……悲しかった。
読んで下さりありがとうございます。
この作はアコライト・ソフィアの外伝という位置づけになります。
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