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双鏡の君へ 2 ー輪廻編ー  作者: ゆら。


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室町時代ー約定


夜。


琴之の家。


小さな灯りが、土間に揺れている。


荷はすでに半分ほどまとめられている。


琴之は、黙って紐を結んでいた。


――影が、戸口に落ちる。


振り返るより先に、気配で分かる。


琴之は立ち上がり、深く頭を下げた。


琴之「……来てくださったんですね」


爺は返事をせず、しばらく土間を見つめる。


やがて低く言う。


爺「行く前に、言っておく」


琴之は、顔を上げない。


爺「戻ったら――

 孫を迎えに来い」


琴之の指が、僅かに震える。


ゆっくり顔を上げる。


琴之「……本当、ですか」


爺「一年だ」


琴之「……」


爺「一年以内に戻れ。

 戻らねば、その時は諦めろ」


琴之は、深く頭を下げる。


琴之「……はい」


爺「戻れ」


琴之「必ず」


短い沈黙。


爺は背を向ける。


爺「敦乃には、言うな」


琴之「……はい」


爺は戸口で一度だけ立ち止まる。


振り返らずに言う。


爺「お前は、愚かだ」


琴之「……光栄です」


一拍。


爺の肩が、ほんの僅かに揺れる。


低く鼻で息を吐き、そのまま去っていった。


戸が閉じる音だけが残る。


琴之は一人、包みを胸に引き寄せる。


琴之(……帰る理由が、また一つ増えた)


灯りは、静かに揺れていた。


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