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 家に戻ってきた翌日。

 いつも通り外に出て、朝日を浴びながら深呼吸をした。


「はっ……はっ……はっ!」


 エミルが訓練をしている。

 朝から真面目だ。

 俺もレベル9999になる前までは、彼女みたいに修行をしていた。


 あの頃は徐々に強くなっていく実感があって楽しかった。

 今は修行をしようが強くなることはない。


 ちょっとだけ悲しくなる。


「おはようライズ!!」


 エミルが俺に気付き、キラキラな笑顔を浮かべて挨拶をしてきた。

 何やらめちゃくちゃ機嫌が良さそうである。


「お、おはよう。どうした? 良いことあったか?」

「うん! みて分からない?」


 エミルがドヤ顔でそう言ってきた。

 見た目で何か変わったのか……?

 正直ぱっと見違いは見えない。

 もしかすると……


「ちょっと胸が大きくなった……?」

「ち、違うわよ!!」


 エミルは怒って雷撃を飛ばしてきた。

 違うのか……微妙に大きくなったと思ったんだが。


「本当に大きくなったとしても、良いことじゃないわよ! 動きにくいから、ちょっと小さくなってほしいくらいだわ」


 全国の貧乳さんを敵に回すようなことをエミルはいった。


「じゃあ何が変わったんだ?」

「分からないの? どう見ても、私の魔力が増えてるでしょ! それに体も軽くなってるわ! 明らかに強くなってる! ライズの釣りを見ていた成果が出てきたようね!」


 強くなった……のか?

 何度もいうが、俺は他人の強さを測るのがめちゃくちゃ苦手である。


 正直、見たままでは分からないが……

 まあ、本人が明らかに強くなっているというのなら、そうなのだろう。

 しかし、釣りを見ただけで強くなれるはずがない。

 毎日訓練をしてはいるが、それだけで明らかに強くはなれないだろう。

 それに魔力も増えたと言った。


 もしや……この前食べたあの巨大鮫の肉の効果か?

 強い魔物や生物の肉を食べると、稀に魔力が強化されることがある。

 そのおかげかもしれない。


「お兄ちゃん! おはよう〜」


 シーラも起きてきた。

 いつもよりご機嫌な様子だ。


「シーラ今、めっちゃ気分がいいんだ! 今なら前に作れなかった凄い物も作れそう〜ねーねー作っていい??」

「や、やめろ!!」


 何かヤバい物を作りそうな気配を感じたので、慌てて止める。


「えー」

「俺は可愛いぬいぐるみとかが見たいな」

「わ、私も」


 俺とエミルで必死に止めた。シーラは言われた通り、ぬいぐるみを一体作って、満足げな表情をしていた。


 しかし、シーラも今までにない物を作れるようになったようだ。

 つまりそれだけ魔力が強化されたっぽいな。

 やはりあの肉は、食べたものを大幅に強化できるほどの効果があったのだろう。


 あの巨大鮫はBランクの魔物くらいの強さと思っていたが、もしかしたらもっと強かったのか……?

 巨大鮫を俺が倒したのかと、怪しげな風貌のおっさんに聞かれて、正直に話してしまったが大丈夫だったのだろうか?

 ……まあ、大丈夫か。


 あのおっさん一人に知られたからと言って、いきなり俺が強いという噂が広がることもないだろう。

 考えすぎる必要ないか。


「さて、飯にするか」

「きょ、今日の朝ごはんはなに!?」

「やったーご飯だ〜。お兄ちゃんの美味しいから好き!!」


 飯にすると言ったら、エミルとシールが食いついてきた。すっかり餌付けしてしまったな。

 料理が美味しいと言われるのは悪い気はしない。

 俺は保存している食材を見て、何を作るか決める。

 ちょっと前に野生の猪を狩って、捌いたのを思い出した。


 肉を甘辛のタレに漬け込んでいたのだ。

 保存庫から猪の肉を取り出した。いい具合にタレが肉に染み込んでいた。


 これは是非とも米と一緒に食べたいな。

 この世界にも米は存在する。

 俺の住んでいる地域でも食べられていた。ただ、パンの方がよく食べられているので、米は結構高価だ。金はあるので問題はないけど。


 最初に米を炊く。

 炊きながら猪肉を焼いていく。

 猪の肉は豚肉に近い。この世界の猪は臭みも少なく、旨味が多くて非常に食べやすい。

 焼いているといい匂いが漂ってきた。

 後ろから視線を感じる。


「……おいしそ〜」


 エミルがじっと猪肉を見つめながらそう呟いていた。ちょっと涎を垂らしている。めっちゃ美人なのにちょっと台無しである。

 しっかりと焼いた。

 米が炊き上がるまで、焼き上がった肉は魔法で保温する。ちょうどいい温度を保つようにする。


「ま、まだ!?」


 待ちきれないのかエミルが叫んだ。


「もうちょっとだ」


 そう返事をする。シーラは行儀良く待っているのに、どんだけお腹が空いているんだ。


 しばらくして米が炊き上がった。

 三つのお椀を用意し、米をよそう。

 その上に、保温しておいた猪肉を乗せた。

 猪丼の完成である。

 テーブルに運ぶ。


「いただきます!!」


 置かれるや否やエミルがガツガツと猪丼を食べ始めた。


「お、美味しい!!」


 物凄く美味しそうに食べる。

 タレの味付けが濃くないかちょっと心配だったが、問題ないようだ。


 エミルの豪快な食べっぷりを見ていると、余計お腹が空いてきた。

 俺も食べるか。

 猪肉と米を一緒に食べる。


 うん、美味しい。


 甘辛のタレがかかった肉に、米がよく合う。


「おいしい〜」


 シーラにも好評のようだ。

 腹も減っていたので、どんどん食べてすぐに完食した。

 大満足の朝ごはんだった。


「おかわり!」

「もうない」


 もっと食べたかったようだが、猪肉はもうない。エミルはがっくりと肩を落とした。

 食事を終えた後、いつも通り釣りをして、1日を終えた。


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