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第82話 大みそかデート

「じゃあ、しずかさん。遅くなってしまったから、気をつけて帰ってくださいね」

 マネちゃんは、私をタクシーに案内して、手を振って見送ってくれた。


「うん、良いお年を!」

 大みそかは、もちろんクリスタル・クリエイトの年越しイベントだ。でも、私は未成年のため、事務所側が配慮してくれて、20時には帰らせてくれる。


「仕事納めは、あと6時間くらいかかりますけどね」


「ふふっ、いつも本当にありがとうございます」

 一応、個人事業主だから、たぶん法律的には大丈夫なはずなんだけど……

 いろいろ、コンプライアンスってやつは、難しいなぁ。


 ※


 家に帰って、おばあちゃんと年越しそばを食べる。こたつに入って食べるお蕎麦は、格別だ。


 ゆずが入った上品なスープがおいしい。Vチューバー生活は、今年も順調だった。イベントはいくつも参加できたし、コミュニティの増加も順調。


 最高の一年だったな。

 改めて、そう思った。


 センパイも、こちらの世界に復帰した。順調すぎて、怖いくらいだ。


「しずか、そろそろ準備しないと、デートに遅れるよ」

 イベント疲れで、少しまどろんでいた私は、現実に戻された。

 センパイから誘ってくれた初詣デートは、せっかくだから日付が変わってから行くことにした。


 ちなみに、コンプライアンスは重要だと口を酸っぱくして、言われているので調べている。


 私たちが住んでいる県の条例では、「初詣」は未成年の深夜外出の例外として扱われると書かれていた。ただ、その後にカラオケやファミレスに行って遊んだらアウト。住んでいる場所によっては、日付をまたいだ後の高校生同士の初詣は補導の対象になることもあるらしい。


 ラッキーだった。


「ほら、おいで。着付けしてあげるから……」

 おばあちゃんは、楽しそうに、デートの準備を手伝ってくれた。

 楽しい初詣が始まろうとしている。


 ※


 日付をまたいで10分くらい経過した。もうすぐ、約束の時間だな。

 しずかの家の扉の音がした。


「お待たせ、センパイっ!」

 しずかは、フォーマルな感じの落ち着いた水色の和服を着ている。花柄がアクセント程度に飾られていて、しずかの魅力を引き立てていた。ピンクの花を形どった髪飾りも良く似合っている。


「お、おう……」


「ふふ……がんばって、おめかししてきましたよ、似合ってる?」

 いたずらな笑顔で後輩は笑った。

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