第81話 勇気
目が覚めた。
夜は通知がたくさん来ていたから、スマホが鳴りっぱなしだった。普通なら眠れないはずだが、徹夜明けの俺は一瞬で意識を失った。
何度か目が覚めたが、横に置いておいた水を飲んでまた眠るを繰り返した結果……
時計が示していた時間は、翌日の15時。
15時間以上寝ていた計算になる。
おかげで、頭が痛い。
水だけで、食事もろくに食べていないせいか、気持ちが悪い。
1枚のイラストを描くだけで、死にそうになる。
我ながら、情けないような誇らしいような。
まだ、家族は留守のはずだ。食パンでもなんでもいいから、何か食べることができるものを……台所になんとかたどり着いた俺は、冷蔵庫を開けた。
そこには……
見慣れないタッパーがいくつも置いてあった。しずかの置手紙と一緒に……
―――――
センパイへ
きっと、目が覚めて死にそうになっているはずだから、簡単に食べられるおかずを作っておきました。冷凍庫にご飯も入れておいたので、起きたらレンジで温めて食べてくださいね!
――――――
「神過ぎるだろ、しずか……」
俺は、しずかが用意してくれていたご飯と、豚と野菜の南蛮をレンジで温める。優しい香りが、鼻をくすぐった。食欲がなくてもたべやすいように、さっぱりとした料理が並んでいる。
野菜のマリネ、春雨サラダ、鳥の梅ポン酢煮、ほうれん草のおひたしなどなど。
あいつだって、イベント明けで疲れているはずなのにな……
俺は思わず、スマホを手に取った。
そして、しずかにメッセージを送る。
「昨日はありがとう。いま、作り置きしてくれたご飯食べてる。あのさ……忙しいと思うんだけど、大みそかか正月……ふたりで遊ばない?」
ずっと、受け身だった俺が、初めて自分から動いた瞬間だった。




