第79話 再開する物語
「幼馴染カップルは、もはや夫婦!? 恋人関係を通り越して、熟年夫婦になってしまうのを防ぐ方法!!」
幼馴染カップルは、恋人同士になるまでに、膨大なエネルギーを消耗します。すでに、10年以上お互いのことをよく知っているので、新しい一面にときめくとかではなく、親愛の情にまで達していることがほとんど。居心地の良い関係や距離感はほとんどわかっているので、その固定された関係から抜け出すのに、苦労します。
でも、その関係を飛び越えて、カップルになったら、間違いなく最強のふたりになるんです!!
甘い恋人関係というよりも、もう長年連れ添った夫婦感が出やすいのも、その証拠!
もし、ちょっとしたラブロマンスを求めているなら、どちらかが冒険してみなくてはいけないかもしれませんね。
冒険する方法は……
調べたけど、わかりませんでした!!
もしかしたら、お互いが素直になるのが大事なのかもしれませんね。
いかがでしたか?
※
「また、釣られちゃったあああぁぁっぁぁあああああああ」
私は配信が終わった後、ちょっとした恋の悩みを解決するために、ネット検索していたんだけど……
まんまと「調べた結果……わかりませんでした!! いかがでしたか?」ブログにつられて時間を浪費していた。なに、あのサイト……有益なことほとんど書いてない。
幸せな悩みなのはわかっている。センパイはクリエイターとして復活した。
私たちは、お互いを両想いと認めている。
私のお仕事も順調。
だけど、もう少しイチャイチャしたい。
そう思うのは贅沢だろうか?
「素直になってみるかぁ……」
クリスマスも終わって、もうすぐお正月……デートするなら、狙い目の時期……
私は先輩が元気になったら、誘っちゃおうと決心する。
そう考えていると、スマホが鳴った。センパイからだ。
『イラスト終わったから、しずかに最初に見てもらいたくて……』と短いメッセージと共に、復帰第1号のイラストが送られてきた。
さっきも見たはずのイラストに、私は息を飲んでしまう。
クオリティは数時間前に見た時よりも格段に上がっている。
ヴァーチャルな存在のはずのみすずが、たしかにそこにいる。
彼の熱意は、次元すら超えて、私の手元に届いていた。
「すごいよ、本当に……」
天才クリエイターの伝説は、復活した。




