第78話 うどん
私は、台所に立っていた。センパイと一緒にひとしきり泣いた後、彼は貧血気味で弱ってしまった。聞いたところによると、ほとんど半日以上、飲まず食わずでイラストを描いていたらしい。
「まったく、天才とバカは紙一重って本当なんだなぁ」
飽きれ気味で、私は台所を使わせてもらっていた。
体に負担がかかるご飯は、きっと食べられないから……
冷凍庫に入っていたうどんと、野菜室にあったキノコやキャベツ、ねぎを使わせてもらった。
簡単で体にも優しい鍋焼きうどんを作っている。
具材は、残り物の野菜と卵だけ。
なるべく、体の負担にならないように、しっかり煮込んで完成だ。私もお昼を食べていなかったから、センパイと一緒に食べようと思う。
「センパイ、うどん作ってきましたけど、食べられます?」
「ああ、ありがとう」
相変わらず顔色は、青白いけど、目に熱は込められている。
私が止めなければ、まだ、イラストを描いて、症状を悪化させていたはず。
うどんとお茶が入ったお盆を手渡したけど、力が不安定で、震えている。まだ、本調子ではないのがわかる。
「大丈夫ですか?」
「ああ、大丈夫だぞ。さっきより、調子よくなった」
「そんなわかりやすい嘘、つかないで」
「ごめん」
まるで、母と息子のような会話を繰り広げてしまう。
「しょうがないなぁ」と私はあえて言う。これは、すべてを許される免罪符だから……
まだ、うまくうどんを持てない彼のためだからという大義名分を獲得した私は、ちょっと恥ずかしいけど、彼の箸を持って、「あーん」と介護する。
これは、介護であって、決してイチャイチャじゃない。私の脳内は、必死に言い訳をしているけど、本能ははっきりわかっている。ただの、言い訳だと……
センパイは、ちょっと恥ずかしそうにうどんを食べているのがカワイイ。
ちょっとした新婚カップル感を出しながら、幸せなクリスマスの次の日が過ぎていく。




