第74話 復活
みすずは、途中から我慢できずに、声を詰まらせて、必死に続けていく。
同期の園長たちが、我慢できずに、ステージに飛び出してきて、彼女を勇気づける。みんなに支えられて、言葉は紡がれていく。
その様子をファンたちは、感動しながら見ていた。
コメント欄でも、涙をこらえているような書き込みが多い。
重圧にあらがい、前に進む。それだけで、人間は心を揺さぶられる。前に進む姿は、皆に勇気を与えてくれる。
それは、もちろん俺にもだ。
「すげぇよ、みすず……完全に俺の負けだ」
完全に気持ちは撃ち抜かれていた。
しずかが、みすずが創作した世界に、俺は完全に魅了されていた。創作者として完全に負けていると認めた。
そして、負けを認めて賞賛するだけの男にもなりたくなかった。
だって、好きな人にこそ負けたくないと思う気持ちは普通のこと。
それも、ずっと俺に甘えていた後輩が、急にライバルになったんだ。今まで以上に焦燥感に包まれる。
あれほどポキポキに折れていた心は、いつの間にか回復していた。
また、何かを作りたい。
埃をかぶっていたペンタブを起動させて、俺は集中力を一気に高める。
もう冬休みだ。徹夜しても問題ない。
久しぶりにわいた創作意欲を、逃さないように、一気に書き上げてしまう。
もちろん、誰を描くのかは、わかりきっているだろう。
復帰後、第一弾は……
自分の私利私欲にまみれた推しに対するファンアートだ。




