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第61話 商談

 俺たちは、老舗洋食店に入った。かなり、シックで落ち着いた店の様子に少し気後れしてしまう。


「大事な商談相手の接待だから、創作和食とかも考えたんだけど、高校生のキミにはこっちの方がいいかなって。ここのハンバーグ&オムライスプレートは、最高だよ。ご両親には、僕と一緒に夕食を食べてくると伝えてあるから、安心してくれ」


「逆に、怖いくらい手際がいい」


「大事な人との商談だ。それくらいはするよ」

 いきなり、敏腕社長の目になっていた。


「過大評価じゃないんですか?」


「そうかな? ある日、突然、ネットの海に神童が現れた。WSと呼ばれた彼は、SNSの言動やプロフィールから10代前半と予想された。彼は、中学生離れした画力と動画編集能力を発揮し、一躍トップクリエイターの地位に躍進した。だが、彼の活動履歴は、たったの1年に過ぎない。プロの歌手から依頼されて、圧倒的なミュージックビデオを作成し、動画サイトでは1000万PVを突破した怪物を過大評価しているとは、僕は思えない」


「もう、俺は何も作りませんし、作れません。作ることもできません」


「そうか、詳しいことは聞かないでおこう。WS=ホワイトシルク。キミの苗字の衣笠は、地名性だ。京都由来かな? 京都の衣笠山は、絹かけ山とも呼ばれるから、それをモチーフにしたのかな」


「……」


「図星か。なかなか、オシャレなペンネームだと思うけど」


 オムライスとハンバーグが運ばれてきた。俺は無言で食べ始める。デミグラスがまろやかで、うますぎる。


「実はね、みすず君と最初に会った時、キミの話になったんだよ。私は、WSさんの作品に救われた。今は活動を休止して、行方不明だけど、私が有名になったらどこかで彼にありがとうって伝えたいってね。たぶん、あえて君の本名やセンパイではなく、WSさんってあえて言ったのがポイントだと思うよ」


「……」

 俺は何も言えなかった。しずかは、俺の活動休止について、何も聞かなかった。ただ、黙って横にいてくれた。それが……


 とてもありがたかったんだ。


「これは極秘の話だ。だから、絶対に口外しないで欲しい。実は、クリスマスに向けて、オンラインライブを箱全体で行うことを考えている。そこで、みすず君はWSに向けて何かやるつもりらしい。キミを再び表舞台に立たせるためにね。健気なことだ」


 佐藤社長は、静かにうなずいた。


「返事は、ライブの後でいい。それを見て、決めてくれ」

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