第60話 CEO
俺が、しずかを家に送り届けると、家の前にはあの黒塗りの高級車が止まっていた。SATOOさんか。
「やぁ、久しぶりだね。よかったら、少しだけ話をしないか。ドライブをしながら」
「わかりました」
きっと、大変なことを頼まれるんだろうな。俺はそう思いながら、車に乗った。
※
「用件は何ですか?」
「きみが、うちのタレントに手を出したから、手切れ金を持ってきたんだよ」
変な汗が出てきた。いや、この前、結構、けしかけていたよね、社長さん!?
「本気ですか?」
「もちろん嘘だよ。うちは、タレントの私生活までどうこう言うつもりはないんだよ。恋愛は自由だし、むしろ収まるところに収まって安心したくらいだ。噂に聞くキミは、ヘタレの権化だったからね」
「……まるで、探偵でも雇っているような言い草ですけど」
「……」
「そこは否定してよ」
「……ノーコメントだね。キミたちの初々しい関係をはたから見て、てぇてぇな、早く爆発すればいいのにとか思っていないからな」
あっ、察し。
「まあ、冗談はこれくらいにしようか。今回は3つのビジネスの話を持ってきたんだ」
「ビジネス?」
「1つ目は、これから年末年始になって、さらに忙しくなる。キミにはできる限り、みすずの護衛をしてほしい」
「それは、言われなくてもそうしますけど」
「それは、嬉しいね。2つ目は、メンタルケアだね。これから、わが社は社運を賭けた大博打に出る。よって、かなり忙しくなるんだ。みすずは、その大博打において、革命者になると思う。彼女がすり切れないように、できる限りの日常を守って欲しい」
信号待ちで、止まっていたので、佐藤さんは俺に力強い視線を送った。
※
「バカだな、センパイは。こういう帰り道にゲームをして、センパイにおやつを奢ってもらうのが一番楽しいんじゃないですか。こういうことができるのが、学生時代の特権ですよ。私はそういうことを大事にしていきたいんです!」
※
さっきの公園での出来事を思い出して、俺は力強く頷いた。
「よかった。ここまでは、みすず君の件についてだ。キミもわが社のアルバイト扱いだから、業務連絡みたいなものだね。そして、ここからは本当のビジネスの話だ。もしかしたら、今の君ではなくて、過去のキミに対する業務提携相談といえばわかるかな?」
その言い方に、俺はぞくりとする。聞きたくない言葉が続くことはわかっていた。
「現役に復帰することは、考えていないのかい、衣笠一樹君? かつて、神童と言われた天才クリエイターのWS君と呼んだ方がいいかな?」




