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第59話 ナチュラル後輩キラー

 さっきの闇のゲームで完敗し、俺は後輩の分まで肉まんを奢ることになった。


「くそ、あれは反則だろ」


「くす、センパイは純情ボーイだから、効果は抜群でしたね。肉まん、美味しいな」


「お前の方が稼ぎがいいのに」

 ちょっとだけ、情けない声を出して、俺は肉まんを頬張った。

 野菜と肉の旨味が凝縮していて、最近のコンビニのレベルの高さに驚きまくりだ。

 これが寒い日の放課後とベストマッチする。


「バカだな、センパイは。こういう帰り道にゲームをして、センパイにおやつを奢ってもらうのが一番楽しいんじゃないですか。こういうことができるのが、学生時代の特権ですよ。私はそういうことを大事にしていきたいんです!」


 たしかに、ひとりで大人の世界で生きているしずかは、俺たちよりも今の時間の重要性を理解できるんだろうな。


「やっぱり、すごいよ、しずかは」


「えっ?」


「だって、そうだろ。配信者稼業はストレスが溜まりやすいだろうし、結果が一目でわかるくらい厳しい仕事だよ。いくら、事務所のバックアップがあるからって、1年以上、最前線で色々と工夫して戦って結果を出しているのって、やっぱりすごいんだよ。しずかが、配信をやっていることは内緒にしなくちゃいけないから誰にも言えないけどさ」


 昔のように一緒にベンチに座り、俺は素直な気持ちを告げる。


「俺の後輩は、めっちゃ努力家で、強くて優しいヒーローみたいなんだぞ。俺の幼馴染は、最強の配信者でみんなに笑顔をくれているんだぞって言いふらしたいよ」


「もう、先輩のバカ。どうして、そんな嬉しい言葉を記念日でもない普通の日にポロっと言っちゃうんですか? 心の準備も考えてくださいよ」


「嫌だったか?」


「ううん、幸せ過ぎて、何を言ったらいいのかわからないだけ。センパイ、少しだけ肩、借りるね」

 安らかな顔で、しずかは俺に甘えてくる。


 この幸せな日常が、少しでも長く続くことを期待して、俺たちは同じ時間を共有していく。

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