第56話 なぜか監禁されるASMR
「センパイ、新作ASMRの練習に付き合ってください」と言われて、俺は意気揚々としずかの部屋を訪れていた。
部屋を見るのに夢中だった俺は、背後から近づいてくるしずかに気づかなった。
そして、気がつくと……
目隠しをされて、椅子にぐるぐるに縛られてしまった!?
「あ、あのしずかさん。なんで、俺は目隠しをされて、椅子に縛られているのかな? いきなりアブノーマルすぎちゃうっていうか、こんなことをされるなんて聞いてない」
「実は、新作は目隠しASMRなんですよね。だから、センパイにはサプライズで、こうしてもらっちゃいました」
「でも、手を縛る必要はないよね??」
「センパイのことだから、異常に興奮して襲いかかってこられても怖いので、必要な措置です。ちなみに、暴れたり大声を出したら事務所に通報しますからね。厄介ファンが、僕を縛ってくださいといきなり部屋に来訪しているんですが、どうしたらいいでしょうかって?」
「それ、間違いなく社会的に死ぬやつ」
「なら、大人しくしててね、センパイ? 今日の私は、ヤンデレモードだから、何が起きてもいい覚悟をしておいてね」
「せめて、事前に注意喚起を……」
「ふふ、サプライズって便利な言葉だよね。それとも、なにかやましいことでもあるのかな、センパイ? もしかして、私じゃなくて、他の配信者さんたちに浮気とかしてないよねぇ?」
すでに、始まっている!? いつも以上に、冷たくて突き放したかのような話し方だ。コンコンと、優しく机をたたく音がする。だが、それがあまりにもリズミカルで機械的なので無機質な怖さがある。
正直、普通の暴力的な台パンよりも怖い。
「今日はたっぷり可愛がってあげるね、セ・ン・パ・イ♡」
下手なホラーよりも怖く、でもなぜか聞いてしまう新感覚ASMRが始まった……




