第48話 ハイカラばあちゃん
そんなこんなで、俺は久しぶりにしずかの家で夕食を取ることになった。たしかに、家族は今日は不在で、カップ麵でも食べてゴロゴロしようとしていたから嬉しいっちゃ嬉しい。
しずかは、ばあちゃんと一緒に台所に立っている。俺は、「適当にテレビでも見てて」と言われたので、休日あるあるの旅番組を見ている。しずかの母親であるおばさんは、どうやら仕事らしい。かなりの仕事人間で有名で、しずかのことはばあちゃんに任せて、仕事一筋を貫いている。だから、しずかの母代わりは、ばあちゃんだ。俺もどちらかと言えば、おばさんよりばあちゃんに懐いている。
さらに、しずかのばあちゃんは、かなり高スペックばあちゃんだ。新しいもの好きで、スマホを使いこなし、動画サイト漁りも大好き。プライ〇やフリックスにも同時加入し、海外ドラマや映画を楽しむ。一時期は、電子書籍にもはまっていたが、最近ではオーディオブックをたしなむ方向に変えたらしい。
全力でエンタメに振り切っていらっしゃる。あの祖母の影響で、ASMRの精密機械が生まれたわけだ。
そんなこんなで、よく動画サイトで見た珍しい料理を作って、うちに差し入れてくれている。
「ほいほい、できたぞぉ。よだれ鳥とナスのトロトロチーズ焼き。麻薬卵に、自家製の漬物。あとは、王道のわかめとジャガイモの味噌汁!! うまそうだろぉ?」
なんか、すごいSNS映えしそうな料理が運ばれてきた。
「センパイ、これはピリ辛のラー油入りタレをたっぷりかけてくださいね」
火を通した鶏むねにピリ辛のタレを、しずかはこれでもかというくらいかける。さらに、大葉をたっぷりとのせる。
麻薬卵は、SNSや動画サイトで流行していた料理だ。たぶん、ばあちゃんもそれを見て作りたくなったのだろう。半熟のゆで卵に、ねぎやにんにく・ショウガなどの香味野菜と醤油と砂糖、鷹の爪を入れて冷蔵庫で一晩寝かせると、悪魔的にうまいおかずになる。あまりにも美味しいから、麻薬卵なんてぶっそうな名前が付けれたくらいだ。
「この漬物も、漬物系配信者さんのレシピを参考にしたんだよね、おばあちゃん?」
「そんなジャンルあるんだ!?」
スマホで教えてもらったURLを見ると、どうやらベテラン料理店の女将さんが美味しい漬物をひたすらつけて食べていくチャンネルらしい。わさびづけ・無限ナスなどなど、旨そうな料理が並んでいる。
「私も手伝ったから、いっぱい食べてね、センパイ」
「んだんだ。いっちゃん、遠慮くなくたべなぁ」
完全に、胃袋もつかまれそうになっている。いや、それはずっと前からそうなんだけどさ。
「うまい」
俺が思わずそう漏らすと、女性陣は嬉しそうに笑った。
※
「いいかぁ、しずか? 男は、女が自分のために頑張ってる姿に弱えんだぁ、ギャップが大事とおぼえておけぇ」
台所でおばあちゃんは、楽しそうに私にそう言っていた。




