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前回から長い時間が経ちました。今まで見てくれていた読者様の中にも、もう諦めて切ってしまった方もいるでしょう。せっかく見てくださっていたのに、もったいないことをと。そして申し訳ないことをしたと思っています。
さて、なぜこんなにも遅れてしまったのかと言いますと、話せば長くなるので簡潔に述べますと…
アークスになってダークファルス達と戦っていました!世界の危機だもんね!仕方ないね!
まあそんな感じで牛歩のような更新スピードですが、最後まで書ききるつもりです。最後というのは主人公が頂上に辿り着くところまでです。
途中で投げ出したりしないので、できれば辛抱強く待っていてくれると嬉しいです。
あっ、緊急来るので失礼します。
切り取られた棍棒の先端を見つめるトロル。綺麗に切り取られた断面は鏡のように光を反射し彼の醜悪な顔面を映していた。
対するオレガノはというと――
めっちゃ目を白黒させていた。やった張本人が物凄く驚いていた。
気を取り直してトロル。鋭く尖った先端をオレガノへ向け突き刺した。
対してオレガノ。半身になって脇へと柄を寄せる。巨大な剣を形作っていた青い光が解けて今度はさながら馬上槍のような円錐状へと収束していく。そしてトロルに呼応するように槍を突き出した。
槍はその半径を太く肥大していき棍棒へと伸びる。衝突。一瞬の花火を無視して棍棒の先端から内部へと沈み込んでいく。メリメリと沈み込んで槍の太さが一定を超えた時、先端から縦に亀裂が走り大輪の鉄の花が咲いたように割れてしまった。
ここでもまた無残な姿になった棍棒を見つめるトロル。感情の色を出すことのない彼は一体何を思うのだろうか。
対するオレガノは――
彼も自分の剣と敵の棍棒を見比べていた。お前もか。
そんなことはさておき、動揺を顕にした1人と1体だったが先に動揺から立ち直ったのはトロルの方だった。変わり果てた姿になった棍棒を放り投げ、オレガノの頭上へ拳を落とす。
敵の動きに釣られる形で反応したオレガノは光の形を再度大剣へと変えて切り上げて迎撃する。拳と光の剣が交差し音もなく拳の中に沈み込む。その時、何かに気付いた彼は振り抜くのもそこそこに後ろへ大きく飛びのいた。さっきまで彼がいた地面に巨岩を彷彿とさせる拳が落ちる。そして緩慢な動作で持ち上がる。彼なら今の隙に2度3度と攻撃できたはずだが何故か反撃することはなく、じっとトロルの手を見つめるのみ。
オレガノの熱烈な視線を受けたトロル。その指や掌には傷がついてはいるが然程深くはなく、切断はおろか痛みで怯ませる程のダメージではないだろうと予想できる。そしてもし彼があのまま攻撃を続けていたらどうなっていたのかも。
この結果を見て彼の頭に幾つもの疑問符が浮かぶ。それはそうだろう。鉄の塊みたいな棍棒はあれほど簡単に切断できたというのに、手には軽い傷しか作れない。あまりにも明確な差に首も傾げたくなる。
「硬さの問題ではない…?なら…」
今度は光の刃を長く長く伸ばしていく。形状の変化に関してはもはや初めてとは思えないほどに使いこなしている。両手で持って横薙ぎに力いっぱい振る。トロルの身長にまで迫りそうな長すぎる刀身は、普通ならその重さでまともに振るなんて出来ないが、質量の伴わない光の剣はその限りではない。彼が剣を振る動作に合わせて光の刀身も動く。先端にもなればその速度たるや光の如き速さで、刀身を目視するのは困難だっただろう。
トロルを含め、刀身の範囲にあったものを全て巻き込んでいく。戦闘の余波でも運よく倒れなかった木々も、全く関係ない所にあった木々も全て切り払われていく。その凄まじさたるや、3方向から同じ場面を繰り返し見せる演出が入りそうなくらい。凄そう。
この凄まじい威力、食らえばどんなものであろうとひとたまりもないだろう。
攻撃をもろに受けたトロルは刀身が通過した部分――胴体をぐるりと1周する切り傷が走り、徐々に血が滲み始めている。そして切られたことを思い出したのか上半身と下半身がゆっくりと分かれ………ずに、ピンピンしていた。指を傷に沿わせながら『んっ?』ってなっている。『んっ?』って。
「…なるほど」
だが流石オレガノといったところだろうか。今の攻撃で何か掴んだようだ。
「全く分からん」
全く分からないことが分かったらしい。『んっ?』ってなってる。仲良いなコイツら。
しかしそうとばかりも言っていられない。冒険者にとって武器とは命綱も同じだ。分からないで終わらせてしまったらただ整地が出来るだけの便利な道具になってしまう。別にそれでもいいではないか。何が不満なんだ。
ともかく、それではいけないと思ったのだろう。仕切りなおしの後、先に仕掛けたのはオレガノだった。
1つ、2つと足を中心に刀傷を作っていく。トロルからの攻撃があればそれを避け、体を伝ってより高い位置へも攻撃を行っていく。
隙だらけのトロルに対して一方的に白刃を振るう。偶の反撃があっても余裕をもって避け、直ぐさま攻勢に転じる。もはや敵の攻撃があろうとなかろうと彼にとっては大した違いではなくなっていた。
切り傷に刺し傷。傷を付けては観察する。傷を付けては観察する。彼は何度も何度も繰り返す。攻撃を行う度にその目に宿る炎が強くなっていく。
「…だんだんわかってきた。これなら…勝てる!」
一方的な攻撃の末、呟くようにしかし揺るぎない意思を持って吐き出された言葉は勝利の確信だった。
トロルの攻撃を回避すると同時に懐から魔石を取りだし胸元に近付ける。身体強化の代償として支払った体内の魔素を補充しているのだ。
補充が完了するやいなや、飛ぶ。強化した体一つで行ったただの跳躍だ。しかしトロルの肩口に至って尚その勢いは衰えを知らず、槍の形をとった光を先頭に肉薄する。
怒涛のような攻撃は激しい衝撃を生んだ。今まで不動を貫いていたトロルは、ここで初めてよろめきを見せた。確かなダメージだ。
「むう…想像より難しい…」
だが彼は満足しない。トロルの反応など意に介さず今付けた傷だけを見ている。
「もっと、何か……そう、フロアボスと戦った時だ」
次の瞬間、敵の攻撃を予知し高く飛び上がる。跳躍の最頂点、重力に捕らわれて自由落下が始まる頃、大音声を上げて剣を振り抜いた。
元々の長剣では届かない距離だったが長大化した光の剣はトロルの体を捉えた。先程傷付けた所と同じ場所へ潜り込み――
「んほおおオオオオオオ!」
トロルは苦悶の声を上げた。思いの外気持ち悪い叫び声である。因みに普通のトロルはこんな気持ち悪い叫び声は上げない。この個体が普通じゃないだけなので安心して欲しい。
肩の傷口を押さえて尚も呻くトロル。手からは抑え切れなかった血がドロドロと流れている。
「…よし」
予想通りだと力強く頷くオレガノ。彼の予想とは『気合い入れて切れば切れる』というものだった。頭悪そうな想像である。
しかし彼の戦闘方法は柳のように敵の攻撃を躱す、あるいは利用して反撃するというものだ。彼の性格と相まって、本気は常に出してきたが気合いを入れる事などそうそうなかった。
だったらということで次に考えたのが『大声上げたら気合い入る筈』ということだった。
彼らしくない大音声はこれが原因だったのだ。
大声を上げながら剣を振るオレガノ。かすり傷程度しか与えられなかった攻撃は今や一刀毎に血飛沫を上げさせている。
体を切り刻まれるトロル。最初こそ痛苦に悶えていたが立て続けに有効打を浴びせられて激しく暴れまわっている。
「オオオオオオ!花霞・満開!!」
大振りになった攻撃をさらりと躱わして生まれた幾ばくかの隙。一際大きな声と共にスキルが発動した。ひたすらに使い続けてきたスキルは、メモリーズコアの補助を必要とせずとも十全な効果を生み出す。スキルの効果は目にも留まらぬ連続攻撃。それをすれ違い様に行う。
一つ一つの斬撃が深い傷を生み、血飛沫を空に舞い上げた。
しかし攻撃はここで終わらない。
「ウオオオオオオ!愛しているぞ、シナモン!花霞・散華!」
振り向く勢いを使って回転斬り。光の剣が胴を薙ぐ。
時が止まった。
そう錯覚してしまいそうになる程両者はピクリとも動かない。
血の雨が地面をたたく音だけが響いている。
その音も程なく止む。
長い沈黙を破り先に動いたのはトロルだった。いや、動いたと言うには自発性が足りない。薙がれた部分を境に上半身と下半身がズルリと滑り落ちる。
地面が重い唸り声を上げた。斬り分かれた体が光に包まれ始めた。同時にピンと張り詰めていた空気が弛緩する。
背中から倒れたオレガノは大の字になってぜいぜいと体全体で息をしている。
「俺の…勝ちだ…!」
今しばらく力が入らず寝転がっている彼の、その声だけは何時にも増して力強いものだった。
そう、だからあの最後にして最大の攻撃の時の掛け声に関しては、もう何も言うまい。
あ、事前報告ですがちょっとここら辺で今までの文章を見直したいと思ってます。大きく変えるのではなく言い回しとかそこら辺です。細かく変えるだけだし、変更箇所も多くなりそうなので活動報告で報告しようと思います。ただ、何分三日坊主なんで忘れたりめんどくさかったりするかも知れませんが大目に見てねっ☆ミ
あっ、緊急来るので失礼します。
あっ、因みに光、というか光子には質量があるらしいですが、ないという前提でなんか色々したりもするそうですよ。あっ、緊急来るので失礼します。




