第一回 ゴブリン
放送用に書き下ろしたナレーション作品です。
皆さんはゴブリンをご存知ですか?
昨今のファンタジーブームに置いて、スライムと並ぶ、初期モンスターの定番的地位を確立しました。
そんな彼らですが、元々はヨーロッパの民間伝承に登場する伝説上の生物で、邪悪な者と言うより、むしろイタズラ好きの妖精と言うイメージが強かったように言われています。
ドイツのコボルトなども、そのイメージから、英文ではしばしば同じとして、訳される事もありました。
さて、このゴブリンですが、起源に関しては実は明らかに成って居ません。
14世紀初頭、悪魔や、夢魔、そして悪戯好きの妖精などや霊魂の名前とも言われています。
またその名前の由来に関しては、kobalos。ギリシャ語で言う所の、「恥知らずなゴロツキ・ならず者」および、kobaloi「ゴロツキたちによって喚び起こされるあくどい霊魂たち」であり、その言葉の起源は不明だと言われています。
ちなみに、このゴブリンの上位種として、しばしばRPGにも登場する、ホブゴブリンですが、実は伝承上では、密かに家事を手伝う善良な妖精。現代での認識とはかけ離れて居ました。
現代ファンタジーとの解釈の違い、うーん、良い妖精が何故、悪者として描かれる事となったのか、こんなに良い妖精を倒す設定は何処から来たのでしょう。
実は、案外、ゲーム設定が発祥なのかもしれません。
さて、今のゴブリンのイメージ、現代ファンタジーにおいて、強く印象付けた作家がジョン・ロナルド・ロウエル・トールキン。この作家の作品の中で、『ホビットの冒険』に登場するゴブリンは邪悪で狡猾な種族でした
そしてトールキンの書いた中つ国の「ゴブリン」は『指輪物語』以降「オーク」という名に変えられ、ゴブリンはそれをわかりやすく現代英語に訳した名であるとされました。これは、作品から童話のイメージを拭い去るためでした。
この指輪物語、映画化された名前は、ロードオブザリング。
劇中登場する、あの厳ついオークが、イメージとしてゴブリンだったと言う事になります。
トールキン以前の作品であるジョージ・マクドナルドの『お姫さまとゴブリンの物語』では、ゴブリンは地下に住む悪意のある醜い生き物として描かれています。
この作品はトールキンも少年時代に好きな物語でした。
同じくトールキン以前の作品であるE・R・エディスン の『ウロボロス』 においては、ゴブリンは小麦色の肌を持ち、勇敢で正義心に富む種族として登場し、ゴブリン王である快傑ガスラークに率いられて主人公勢力であるデモンランドを助け、ウィッチランドと言う敵勢力と戦います。
そして、ジム・ヘンソン監督の映画『ラビリンス/魔王の迷宮』(1986年)では、マペットと小人の俳優が演じた多数のゴブリンが登場しました。そしてゴブリンの王である魔王ジャレスは異形の生物ではなく、ハンサムで強大な魔力を持ち、冷酷ではあるが決して邪悪ではない存在であり、デヴィッド・ボウイが演じました。
時や場合により、その姿を変えて語られて来たゴブリン。
現代日本では、ハリーポッターシリーズなどの日本語訳で、小鬼と訳される事も増え、それが広く定着しました。
ゴブリンに限らず伝承の生物は、語られていくうち姿を変え、そしてまた物語の中に生まれて行きます。
そんな昔のファンタジーを空想しながら、ノスタルジックに浸るのも面白いかもしれませんね。
では、またお会いしましょう