共和国戦開戦
時は遡る事、半年前。
ルーメリア共和国が隣国を次々に落と始めたのだ。
その速さに大陸中が驚愕し偵察部隊を送った。
そして共和国の戦禍はタドール帝国に襲いかかろうとしていた。
アストラベル王国の執務室では偵察から戻った部隊の話を聞き動揺を隠せない国王が対策を講じるため全貴族を召集。
共和国のタドール帝国への宣戦布告を受け貴族は王都へ集まっていた為、翌日には対策会議が行われていた。
そして父の死で学生領主となっていたデュラントも当然参加している。
宰相と元帥の2人が偵察部隊の報告をする。
「共和国の上級兵士が使っていた杖の実物を手に入れた。この杖が爆烈すると目に見えない魔法で相手が倒れる」
そう言って元帥が実物を手にして掲げた。
M1ガーランド?
何故かこの銃を撃っている記憶が・・・。
「なんだ?」
と言うか何故この世界にM1ガーランドがあるんだ?
時は遡る事15年前。
共和国の森から迷彩服を着た青い瞳、金色の髪をした男が出てくる。
「ここは?どこだ?私は確かに胸に被弾して・・・」
その男は現在、共和国で伯爵位まで上り詰めた軍務大臣のケビン・ジョーダンだ。
共和国に転移したその男は銃の強さを見せつけ、銃の製造に成功したのだ。
大臣にまで上り詰めた男は銃を使い大陸を統一して新たな合衆国を建国しようと企んでいた。
プロペラ機やヘリコプター、軍艦の設計図も完成しており大陸を取ったら世界に繰り出そうとしていた。
デュラントは陛下に同じものを作成出来るかと相談を受ける。
今までこの世界に無かった物を創り出してきたデュラントに国王は期待していた。
「わかりました。やるだけやってみます」
だが、こんな物を世に出せばこの世界が変わってしまうのではないか。
そう言うと領地へと急いで戻った。
先ずは試し撃ちからだ。
的を用意して100M離れた所から狙う。
的の端に当たった。
修正してもう一発撃つも次は的に擦りもしない。
銃を固定して発射するも弾はバラけるのだ。
この銃は不良品だな。
この世界で作られたと見られるM1ガーランドは精度が悪く作りも雑で命中率は極端に悪かった。
共和国で作られた雑な弾も精度の悪い要因となっていた。
ジャムの確率も高くて正直これで勝てたとは思えなかった。
7.62x63mm弾と万力を取り寄せてトリガーに紐を括り付け離れて撃つ。
的には当たったがジャムが発生する。
「本当にこんな物で戦争に勝てたのか・・・?接近して使うのか?」
俺はAK-47を300丁取り寄せた。
その他に弾は7.62x39mm弾を1万発、予備マガジンも600取り寄せた。
それを兵士に持たせて射撃練習を開始する。
俺は数日後、陛下の元へと戻った。
「こちらが私が開発した物になります。精度が非常に上がり装弾数も8発から30発と多くなりました。現在作成に時間が掛かり、うちの兵に訓練させている所です。付きましては我が兵を掃射部隊として前線へと派遣させて頂きたいと思います。そしてこれが出回れば魔法に代わるものとなりますがその分、これで侵略すれば周りの国からこれ欲しさに宣戦布告される可能性も秘めています」
「であるか」
「はい。有効射程が300M程となり魔法では太刀打ちできません。そして大将級の装備も貫通します。この戦争限りとした方がいいかと思われます」
「ですが陛下、これが有れば抑止力にも」
「お言葉ですが元帥閣下、これを持ち決起すれば国は落ちます」
「まさか、そしてそれをお前は起こさないと言えるのか?」
「約束しましょう。そして共和国を退けた暁には海に出て沖で廃棄する事を約束しましょう。その時は閣下が証人となって下さい」
「それは惜しいな」
「陛下、またこの国が危うい時には製造致します」
「わかった。だが、秘密裏に製造して決起されても困る。妾でも良い。我が娘を娶れ。これが私に出来る最大の譲歩だ」
「わ、わかりました」
「うむ、よく言った」
陛下のしてやったりといった顔を見て後悔するのだった。
共和国大統領、ロマン・ファーガスは閣僚と共に会食をしていた。
「此度の侵攻に付いてだ。総大将をケビン・ジョーダン軍務大臣とする。銃とやらの製造は順調か?」
「はい。軍務省、鍛治省、錬金術省が連携して作製を急いでおります」
「そうか。流石軍務大臣だ。財務省はケチる事なく銃製造に国庫を開いてくれ」
「わかりました」
「よろしく頼む」
「此度の戦は六国同盟が相手となる。特に大陸で一番の武力を誇る大国アストラベル王国が控えている。銃があっても数で勝る六国同盟に苦戦するかもしれない。出来る限り製造を急がせろ」
「はい」
「六国同盟を落とせばいよいよ大陸制覇が見えて来る。だが回避すれば我々が戦に出ている隙に背中を刺されるだろう。この機を逃すな」
軍務大臣のケビンはこの時、半数以上の大臣と内通していて六国同盟戦勝利と共にロマン・ファーガスを蹴落とす計画を立てていた。そして自分が大統領となって合衆国建国を進める腹積りであった。
そしてそれから1ヶ月後、タドール帝国国境を挟んで睨み合う六国同盟軍と共和国軍。
それから3日後の早朝、開戦。
初戦、タドール兵メインとなり相手の銃の性能を見る為、左翼高台から観測。
遠距離では発砲せず。
中距離は横に数十名並び発砲。
数名に命中。
そして近距離になると個別発砲と変化する。
「閣下、やはり精度が悪いようですね」
「そうか、で、その筒はなんだ?」
「双眼鏡です。ようやく1つ、2つ作れた遠距離を見るのにつかうものです」
「貸してくれ」
「はい」
「なんだこれは!遠くにいる敵兵の顔を見ることが出来るぞ。2つといったな?一つ貸してくれんか?儂の持つ最新の単眼鏡よりも見えるぞ」
「勿論です」
「すまない。これで戦況を詳しく把握できる」
初日、タドール兵は3000人近くの兵を失った。
しかし共和国の戦死者は500人程、やはり銃はこの世界を根本から変えてしまう物である。
共和国軍は初戦の勝利に湧いた。
「これでこそ侵略だ。原住民共には死んでもらおう」
「流石、軍務大臣の発明した銃のお陰です」
「これで私達は大陸の覇者にまた一歩前進ですな」
「まだまだ初戦です。これから数日で奴らを駆逐してやりましょう」
兵も酒が入り上機嫌であった。
2日目、雨。
この日共和国軍はいつも通り楽勝と高を括っていた。
同盟軍は動かない。
共和国軍は同盟軍が恐怖で動けないと一斉に進軍した。
俺は300の兵を前線に隠し待った。
一斉に進軍する共和国軍。
ある程度引きつけたことろで「撃てー」声を張り上げた。
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