八話『天の癇癪と能力』
「示杞、戻ったか!」
「ああ、桃李。けど、アイツを逃がしてしまった」
俺は拠点に戻り、桃李に状況を報告する。
「話は聞いている。あの混乱状態では仕方ないだろう」
「……………………」
「何だ、示杞は今は違う体といえど、任務を終えたばかりだ。町のほうは一段落ついた。部屋でゆっくりすればいい」
「あ、ああ。ありがとう」
桃李の言う通り、黒翼の女との戦いで少し疲弊している。
部屋で休みながら、例の日記の続きを見るとしよう。
※ ※ ※
部屋のベッド。
あの店から持ち帰った手帳を開き、内容を読む。
――――あれ?
そうしようとしたのだけど。
ページをめくった先は、何も書かれておらず真っ白だった。
――――えええええ。何この良いところで切り上げて、続きを買わせようとしてくるシステム。続きどこだよ!
「はあ」
期待外れな出来事にため息をついてしまう。
でもこればかりはどうしようもない。
仕方なく俺はベッドの上で寝転がり休息をとる。
――――ッ!
その刹那。
どこかイヤな予感がした。
初めてだけど、どこか見覚えのあるような。
わかりそうでわからない、もやもやとした感覚。
けれど、確かに胸を突き刺すような苦しみ。
――――これ、…………は?
どこかに、行かないといけない気がする。
俺は部屋を出て町へとふらりと歩いていく。
「何だ、これ」
そして、見た。
人が一人、一人と倒れていく光景を。
何も前兆はなく、ただ悲鳴だけが響いている。
「あ」
俺はある事件を思い出した。
「『天の癇癪』…………!」
聞いていた話よりは、ペースはゆっくり。
けれど、不規則に予兆なく起こるという特徴や症状が確かに一致していた。
――――でもこれは。
これが『天の癇癪』だとすると、辻褄が合わない。
『天の癇癪』が起こったのは、俺がまだ生まれたばかりの頃。
――――この能力は――――!
でも、実際に見てわかった。本能からそれだと確信できた。
『天の癇癪』の原因となる能力。
それは、幾度も扱ってきた馴染み深い異能。
――――俺の能力じゃないか――――
憑依と同じであることに。




