五話『俺は俺の体を見る』
「どうすれば、あの少年を救えるんだ?」
俺の体を奪った人物が去った後。
また、彼に何も言うことができなかった俺は、一人考え込む。
「あっ」
「?」
ふと、彼と言い合いになっていた妹の莱夏の姿が目に映る。
莱夏と目が合って、沈黙が流れる。
「…………!」
そしてその末に、俺はとある問題に気づいた。
――――マズい! 俺は今他人の体に憑依している。憑依のことを知らない莱夏とっては、ただの不審者……!
俺が憑依している人の印象や評判を悪くするのはよくない。
つまり、俺が今すべきことは――――
「あの――――」
「し、失礼しましたー!」
「えっ!?」
――――何かを言われる前に退散することだ。
※ ※ ※
「これからどうしようか…………」
ひとまず莱夏と一定の距離を取った後。
再び俺と俺の体に関する問題について考える。
今の体は自分の体でない以上、迂闊な行動は避けなければならない。
とはいえ、俺の体を奪った少年の不可解な言動も気になる。
『全部消してやる。お前も。お前の周りの全てッ!』
彼の涙の向こうに見えた怨念。
彼が何をしようとしているのか知る術もない。
それ故の不安。
「一応、桃李たちに知らせておこう。何が起こっても対応できるように」
だからこそ、慎重に行動すべきだ。
俺は、桃李たちにこの問題について伝達するために、彼らの拠点へと向かった。
※ ※ ※
桃李たちの拠点へと繋がる小屋に辿り着いた。
小屋のドアを開けようとする。
「っ、何だ!?」
――――その瞬間だった。
町のほうから爆音が鳴り響く。
「…………見えない」
何が起こったか確認しようとする。
でも、木々が邪魔で町の様子がわからない。
「以前の火事の被害があったばかりなのに」
炎を扱う男による被害も完全に復興できているわけではない。
なおさら、俺の中で不安が膨れ上がる。
「!」
小屋の中が騒がしい。
桃李たちの間でも騒ぎとなっているようだ。
複数人の声が次第に近づいてくる。
そして、小屋の中から現れたのは仲間を引き連れた桃李。
「桃李! 一体何が起きたんだ!?」
「あ、ああ――――? 誰だ?」
「俺だ。示杞だ!」
「!? …………憑依か」
桃李は一瞬戸惑うも、俺を示杞だと認識する。
「…………なら、町の監視カメラに映った、お前に似たやつは誰だ?」
「!?」
だが、桃李にとってそれは異常だった。
町の監視カメラに俺の体が映っていたというのだから。
「…………アイツだ」
その正体は、間違いなく俺の体を奪った者。
彼は既に動いていた。
彼の瞳に映った俺への憎しみ。
それから感じ取った悪い予感が的中しないことを祈るばかりだ。




