共同生活、始めます
すっかり修繕の終わった屋敷は、鉄門から屋敷の内部まで、およそ廃屋感満載だった先日の様子とは見違えて綺麗になっていた。
前庭も、花や樹木は揃っていないが、綺麗に刈られた芝が美しい。
塗り替えられた正面扉を開けると、その先は大階段つきのエントランスになっていた。
ソファや調度品のたぐいも新品が備えられている。
「すっご……! とんでもない豪邸じゃない!」
ミアが目を輝かせる。
「こんなに広い家、個人じゃ管理できないぞ……」
愕然として言う俺に、ノエルが返す。
「使用人やメイドを好きに雇ってください。請求書は僕に」
そう言えば、王が肩代わりしてくれるって言ってたな。
何だか待遇が良すぎて逆に怪しいくらいだ。
「こうしちゃいられないわ!」
ミアはそう言うと、俺を差し置いて、大荷物を抱えたままエントランスに駆け込む。
「うーん。やっぱり日当たりを考えると南の部屋かしら……」
勝手な事をいいながら部屋を一つずつ物色し始めた。
「ったく、もう……」
俺はそんなミアに苦笑しつつ、
「マールたちも、部屋決めてきたら?」
「いいんですか……?」
「こんなに広いんじゃ、一人で使っても持て余すしさ」
「さすがマイ・プレシャス! そうと決まれば、善は急げだ! 行くぞ、マールくん!」
「あ! 待ってください!」
リヒャルトとマールも駆けていく。
俺は残ったアフェットを振り返った。
「アフェットは? どうするんだ?」
「コージくんが迷惑でなければ」
「ここまで来て、んなことは言わないよ」
「ふふ。じゃあ、お言葉に甘えて……。実は、寮での生活にも少し飽きてきてたんだ」
楽しそうに言って、アフェットも館の奥へ入っていく。
それと同時に、家の玄関がノックされた。
「……?」
来客? 越してきたばかりでか?
ノエルと顔を見合わせると、彼が玄関をゆっくりと開けた。
そこには――
「コージさん……!」
大きな荷物を抱えたクララが立っていた。
「クララ……!? なんでこんなところに!?」
「いえ、それが――あわわっ!」
重すぎる荷物に倒れ込みそうになったクララを慌てて支える。
「す、すみません!」
「また、こんな大荷物で……」
「父にコージさんが屋敷を与えられたことを伝えたら、『今すぐ転がり込みなさい!』って……。寮も勝手に退去手続きされてしまっていて……」
涙目で言うクララに、俺は顔面を引きつらせた。
「親父さん、相変わらずファンキーが過ぎるな……」
「あの……その……」
荷物を足元においてもじもじと俺を見上げるクララに、俺は諦めたように笑った。
「中に入って、自分の部屋を決めておいで」
「……! いいんですか!?」
「路頭に迷うわけにもいかないだろ? ほら、早くしないとミアに全部屋占領されちゃうぞ」
「ありがとうございます……!」
クララは瞳を潤ませながら頭を下げると、荷物を引きずりながらエントランスの奥へと向かっていった。
そこにアフェットが通りかかって、「荷物、お持ちしますよ」と屋敷の案内をし始める。
「やれやれ……。っていうか、俺以外を住ませても平気だったのかな?」
ふと気がついて入り口に佇むノエルに尋ねると、
「屋敷の主がどんな食客を抱えようと問題ありませんよ。この人数の正式な冒険者が住んでいるのなら、防犯上もこの上ありませんし」
そう言って微笑んだ。
「あ、そうだ。メインのベッドルームとリビングは二階の正面奥です。コージさんはそちらを使われるのが良いかと」
「そうか。ありがとう」
「では、私はこれで。何かあったら、ご連絡ください」
ノエルは丁寧に一礼すると、正面扉の向こうへ去っていった。
「みんな来て! 凄い! お風呂がとんでもなく大きいよ!」
右奥の廊下の方からミアの声が響いてくる。
俺たちが来るまで静まり返っていたであろう屋敷は、今やだいぶ賑やかになっていた。
「さて……俺たちも部屋に行くか」
「は~い!」
『御意』
俺はリヴィアとランスロットを連れて、エントランスの階段を登った。
この日から俺たちのルームシェア生活が始まり、それは意外にも学園卒業まで続くことになる。
学園内でもバタバタと色々な(しょうもない)騒動が起こるのだが……それはまた別の機会に話そう。
ここで第二部終了です。
ここで、一旦少しの間お休みさせて頂きたいと思っています。
第三部『山神〈ルフ〉編』は、大まかなプロットも出来上がり書き始めているのですが、中々書き溜めが進まず……。
一、二ヶ月時間を頂いて、書き溜められ次第、また連載を再開させて頂ければ、と。
楽しみしていた方がもしいらっしゃったら、本当にごめんなさい。
そのような方のいる手応えは僅かですが(笑)
でも、必ず再開させますので、どうかブックマークはそのままで……。
いつも、皆さんの応援に励まされて書いております。
この場を借りて、お礼申し上げます……!




