謁見①
◆
翌日の昼過ぎ。
疲れからかだいぶ寝坊した俺は、朝から待っていたという王の使いによって王城へ呼び出された。
専用の馬車で登城した王城は、いたる所に昨夜の惨劇の傷跡が見て取れる。
俺はそのまま謁見の間の前室まで連れて行かれた。
「あ! やっと来た! あんた、こんな時間まで何してたのよ? あんたで最後よ!」
前室には、ミアは始めリヒャルトやマール、アミスターまで……昨日のパーティーで防衛戦を繰り広げたメンツが集まっていた。
「俺で最後って言われても、何のことやら……」
俺がまだ眠い目をこすりながら言うと、マールが神妙な顔で俺に教えてくれた。
「昨夜の私たちの活躍を、国王陛下が認めてくださったんですよ。謁見させていただき、恐れ多いまでの報奨まで貰ってしまいました。でも、亡くなった方々はもう……」
沈痛な面持ちで顔を伏せる。
「ふっ。何にせよ、国からの報奨よ。時代がようやく私に追いついたってワケね」
アミスターが場を明るくするように格好つけて言う。
リヒャルトが俺の肩に手を置いた。
「マイ・ロード……。昨夜の顛末は聞いたよ。キミへの報奨は、我々とは比べるべくも無いはずさ。恐らく、国王陛下は王位をキミに譲――アウチッ!?」
「アホなこと言ってんじゃないわよ」
ミアに後頭部を叩かれ、リヒャルトが崩れ落ちる。
「はは」
いつもの感じだ。
張り詰めていた緊張の糸がぷつんと切れたのか、俺は何故か泣きそうになるのを必死でこらえた。
「ダムラスなんか、謁見の緊張で膝が震えてたのよ」
ミアがそう言って部屋の片隅で壁にもたれていたダムラスを親指で差と、
「し、仕方ねぇだろうが……! おハイソな世界とは無縁でやってきたんだ」
ダムラスが恥ずかしそうに言い返した。
すると、奥の扉から鎧姿の兵士が姿を表して俺を呼んだ。
「コージ様。国王陛下がお待ちです。こちらへ」
ダムラスが口笛を鳴らして「コージ様、と来たもんだ」と茶々を入れる。
「コージ。行ってらっしゃい」
俺は微笑むミアに頷いて返すと、兵士について謁見の間に向かった。
謁見の間までの廊下。
ふかふかの赤い絨毯を踏みしめながら、俺は苦悩していた。
『おい、ランスロット。俺、謁見の作法とか全然知らないぞ!』
脳内で問いかけると、すぐに返答があった。
『なに、玉座の近くまで行ったら跪き、あとは粛々とした態度でおられれば良いのです』
粛々としたっつってもなぁ……。
就職試験の面接だとでも思っとけばいいのか。
などと考えていると、兵士が目の前で大きな木の扉を開いた。
「どうぞ」
そう言って俺一人を入るように促す。
前方には玉座につくテノン王と文武百官がずらりと並んでいた。
王の後ろにはリンツ王太子が控えている。
王女のエリノアと、あのセバスティアン第二王子の姿はない。
俺はぎくしゃくとした足取りで玉座の前まで進んでいった。
すると、もう一人玉座の前に跪いている人物がいるのに気がついた。
その人物がちらりと俺の方を振り返る。
「アフェット……!」
俺が思わず小さな声を洩らすと、アフェットが悪戯っぽくウィンクして返す。
俺はそのままアフェットの隣まで進んで、ぎこちない動作で跪いた。
「よく参った。コージ・ヴァンライン」
威厳があるとは言い難い穏やかな声音で王が言うと、左右の文武官たちから「おぉ」と声が洩れる。
王が言葉を続けた。
「昨夜の戦い、そこにいるアフェットとお主の奮闘が無ければ朕はもとより、我が息子や娘の生命も無かっただろう。それに、あの〈クラスター〉……。レベル2,000近い魔物を、聞くところによれば、お主一人で倒してしまったとか」
居並ぶ百官が驚き、ざわつく。
「ばかな……」
「そんな事があるわけがない」
王は百官たちを見回して、満足げに頷いた。
「話だけではとても信じられんだろう。だが、朕の目に間違いはない。いや、真に偉丈夫たる働きであった。さすがはヴァンライン家の血筋。お父上も鼻が高かろう」
王の言葉に、俺は思わず「あ、あの……!」と声を出してしまった。
作品タイトルを少し変更致しました。
詳細は活動報告にて……!




