地下水路へ
これで一旦、ここの皆の安全は確保された。
次は――――
「アフェット! 王様たちは!?」
「王たちは裏の隠し通路から城外に! 近衛兵が付いてるけど、敵の数が……!」
「クララはと父上は……!? 貴賓席にいたはずだ!」
「レガート卿ですか? 貴賓席にいた人たちは、王族とともに裏口へ……!」
「首謀者が第二王子なら、その通路も把握済みだ。むしろ、そっちが本筋かも知れない……!」
「確かに。やはり裏口を行かせたのは失策だったか……?」
俺は逡巡すると、リヴィアを振り返って叫んだ。
「リヴィア! ここは任せた! 全員を必ず護ること!」
「イエス、マスター!」
「コージ! どこ行くのよ!?」
ミアが叫ぶ。
「クララ達が危ない! 俺はそっちの救出に向かう!」
「ええっ!? ちょっ……どういうこと!?」
ミアの声を背に、俺は結界を飛び出した。
同時に、無数のアボイドが俺に殺到する。
俺は、駆けながらバインダーから白銀色のカードを取り出した。
「来い! 【聖騎士ランスロット】!」
『御意ッ!』
APが減少。
ランスロットの魂が俺の中に重なり、身体能力が爆発的に上がる。
前方からアボイドのブレードが迫る。
神経を集中させ、コマ送りのようにゆっくりと感じるその太刀筋を紙一重ですり抜けた。
「あれか……!」
貴賓席の奥に、さっきまでは飾り布で隠されていた通路の入口が現れている。
「おりゃぁッ!」
駆け込みざまのタックルで、貴賓席にいたアボイド数体をまとめて弾き飛ばした。
しかし、肝心の隠し通路は頑丈な鉄格子が降りていて進めそうに無い。
「くそ! どうすりゃ……!」
「コージくん! ここだよ!」
いつの間に来たのか、アフェットが貴賓席の座席の下で何かを操作していた。
「アフェット!」
低い駆動音とともに鉄格子が開く。
「すぐ閉まる! 早く!」
俺はアフェットに背中を押されるように通路に転がり込んだ。
直後、背後の鉄格子が閉ざされる。
通路は薄暗く、緩やかに下降していた。
「コージくん! 急ごう!」
「あ、おい! 待てって……!」
駆け出すアフェットの背中を追って、俺も走り出した。
通路を抜けるとその先は地下水路になっていた。
水路に出てすぐのところに数名の人影が倒れている。
「……! この鎧は近衛兵の……!」
アフェットが倒れている者たちの装備を見て悲痛な声を上げた。
すでに、絶望に目を見開いたまま事切れている。
「ということは、この通路にもすでに……!?」
言った瞬間、水路の中から水しぶきを上げてアボイドが飛び出してきた。
「……ッ!?」
とっさに近衛兵の剣を手にとって身を躱す。
アフェットも同じく剣を手に、俺と同じ方向に転がった。
「アフェット、きみは逃げるんだ!」
「おかしなことを言うね!」
二人で剣を構える。
前方ではアボイドが次々と水の中から姿を現していた。
「アフェット! きみのレベルとスキルではこいつらは……!」
「……! 〈観察〉したのかい?」
「……した。すまん!」
「ふふ。もし、それが〈偽装〉だったら……?」
「え……?」
次の瞬間、アボイドが襲いかかってきた。
同時にアフェットの雷声が響く。
「〈サーペントファング〉!」
アフェットが踏み込みざまに剣で虚空を斬ると、無数の剣気の牙が大気を斬り裂きながら進んでいった。
半数近くのアボイドがまとめて木っ端微塵になる。
「な……!?」
『ほう……。素晴らしい』
ランスロットが感心したような声を上げた。
以前、オーレンがランスロット相手に使った〈剣技〉だが、威力と貫通力が違いすぎる。
『ケキャキャキャキャキャ!? ギゲッ……!』
残った半数のアボイドも、アフェットのさらなる〈サーペントファング〉で葬り去られた。




