首都冒険者ギルド
〈首都冒険者ギルド本部〉は、商業区の一番奥にあった。
古い寺院を改装したという、一際大きな建物だ。
見上げるほどに大きな正面扉は開け放たれていて、中を沢山の人が忙しそうに行き交うのが見える。
一階の大礼拝堂がメインフロアのようだ。
さすがに首都の冒険者ギルドだ。すれ違う冒険者たちやその装備もいかにも強そうなものばかりで、ちょっと気おされてしまう。
しかし、周りの冒険者も俺の身なりを見てギョッとする者が多かった。
この制服はやはり色々な意味で目立つらしい。
〈新規登録受付〉で名前を告げると、慌てた様子の職員に待たされた後、フロアの奥に通された。
礼拝堂の奥には石造りの回廊と幾つもの部屋が並んでいる。
俺はその一室に通された。
ガタイのいい初老の男性が、デスクから立ち上がって俺を迎えてくれた。
「はじめまして。きみがコージくんだね」
言いながら握手を求めてくる。
元冒険者だろうか。
隙のない身のこなし。
身なりの良い服装の上からでも、身体が鍛えられていることがわかる。
白髪交じりに短い髭で、渋めの男だ。
「私が、ギルド本部長のフレデリックだ。キミの噂はレッジェーロから届いているよ。恐ろしいスキルの持ち主だとね」
おずおずと握手に応じた俺の手を引いて、ソファに座るよう促すフレデリック。
「なんでも、レベル1なのにスキル値が限界を突破しているとか? 私も、そんな事例は初めて耳にしたよ」
「あ、おかげさまでレベルはもうだいぶ上がりまして……」
「ほう。それは素晴らしい。今後のギルドの対応にも関わるので、もし可能ならばステータスを見せてもらえるかな? もちろん、他言はしない」
「…………」
俺はフレデリックの目をしばし見つめた後、自分のステータスを開いて見せた。
「……!? な、なんだこれは……!? どうやってこんなレベルに!?」
驚愕に軽く腰を浮かせるフレデリック。
「ちょっと強い敵を色々倒しまして……」
「強い敵だって? たとえレッドドラゴンを何体も倒したとしても、こんなレベルには――」
すると、フレデリックは何かに気がついたようにハッとした。
「そうか、レッジェーロに出現した〈クラスター〉……。天変地異によって消滅したという話を聞いて疑問に思っていたが、まさかキミが……?」
「…………」
俺の無言を肯定と取ったのか、フレデリックはソファに深く腰掛けて息をついた。
「信じられない話だ……。キミは召喚師だったね? 一体、どんな召喚獣を持っているんだい?」
「それは……言えません」
「そうか……。それはそうかも知れないね。しかし、このタイミングでこうしてキミが現れたこと、何か運命的なものも感じる」
「タイミング?」
「うむ。原因は分からんのだが……近年、あるゆる場所の遺跡、ダンジョンが活発な活動を始めたことが調査によって判明している。次元の歪みとアボイドの出現に、我々は常に追われている状態だ」
「レッジェーロの遺跡の封印が解かれたのもそれに関係が?」
「あるいは、ね。とにかく、キミのような飛び抜けた実力の持ち主が探索者になってくれるなら非常に心強い。本当なら今すぐに免状を渡したいところなのだが……まぁ、組織の力学上そうもいかなくてね」
「いや、そんな急に格上げされても困っちゃいますよ」
俺がそう言って両手を振ると、フレデリックは愉快そうに笑った。
「謙遜するな。しかし、今我々に出来る限りのことはしよう」
フレデリックはそう言うと、立ち上がってデスクの引き出しを開けた。
そこから金属のタグを取り出す。
「冒険者ランクBのタグだ。これで、依頼の範囲や立ち入れるエリアもだいぶ自由になる」
「……! いいんですか?」
「もちろんだ。今のランクのものと交換しよう」
フレデリックに促され、俺は服の中で首から下げていた〈ランクE〉のタグと交換する。
「キミなら学園を卒業と同時に優秀な〈探索者〉となれるだろう。期待しているよ」
「ご期待に添えられるかは分かりませんが……。ありがとうございます」
俺はフレデリックと握手を交わして部屋を辞すると、そのまま学園区への帰途についた。




