模擬戦 ミア
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翌日、戦闘系ジョブの受験生による〈模擬戦〉は、学園の奥に建てられている〈円形修練場〉にて催された。
「うわ、すごいなこりゃ」
正門から入場した先には、さながらローマのコロッセオのような石造りのアリーナが広がっていて、俺はその威容に驚かせられた。
すり鉢状の観客席。フィールドの中央には石造りの円形リングが設けられている。
こうしている間にもアリーナの観客席にはぞろぞろと人が集まって来ていた。
「在校生やら貴族、商人連中なんかが観覧に来てるそうよ」
『お~。魔帝国の円形闘技場にそっくり! 凄いねぇ』
リヴィアがはしゃぐ。
すると、どこからか大きな角笛の音が鳴り響いた。
同時に、修練場の地面全体に巨大な魔術陣が浮かび上がる。
観客席から盛大な拍手と歓声が起こった。
「あの魔術陣は……?」
俺の質問にリヒャルトが答えた。
「〈高度魔流体抑制陣〉さ。魔術の効果と殺傷能力を抑える効果がある」
魔術陣が光の残滓を残しながら消えると、教官たちがぞろぞろと入ってきた。
先頭にいるのはグレンだ。
俺たちの姿に気がつくと、一瞬鋭い視線を送ってきた。
すぐに全員の方を向き直ると、大きな声を張り上げた。
「では、これより二次試験を始める! 模擬戦闘の勝敗はどちらかのギブアップ、及び戦闘不能によって決まる。魔術、武器術、毒系統以外のスキルの使用が認められる」
グレンが言う間に、大きな組み合わせ表が運び込まれた。
ミアとリヒャルトの名前が順番に並んでいる。
二人の相手は見知らぬ受験生だ。
「俺たちがお互いに当たることは避けられたみたい……って、うわ、俺一番最後かよ……!」
すると、ミアが顔をしかめて嫌そうな声を上げた。
「げっ。コージの相手、アミスターのアホじゃない」
「え……あ、ホントだ」
あの濃ゆいキャラの女の子か……。
うーん。嫌な予感しかしない。
俺が思案にふけっていると、グレンの声が響いた。
「では、これより第一試合を始める! 第一試合の二人はリング上に!」
そうして、あれよあれよと言う間に二次試験の〈模擬戦〉は始まった。
試合は、さしたるイレギュラーもなく進んでいった。
『ふぁ~あ……。退屈だなぁ』
リヴィアがつまらなそうな声を上げる。
リング上では騎士校の剣士と槍使いの青年二人が刃を打ち付けあっていた。
使っている武器は、もちろん刃を削られた模擬刀だ。
俺ですら試合は生ぬるく感じ、あくびが自然とこみ上げる。
何だかんだ、あの地下遺跡でアボイド相手に死線をくぐってきたわけだからな。
「そういえば、この試験にも貴族がいるのか?」
「貴族階級の子供たちは、両校とも別の試験を受けているようだね。なんでも、同じ貴族の上級生が直接試験するとか」
「ふーん……」
リヒャルトの返答に他人事のような返事を返す。
だって、日本じゃ貴族なんかいなかったしなぁ。
上流階級っつーのの存在は、嫌というほど感じたけど。
「マールは大丈夫かな?」
一人、別の試験を受けているマールの身を案じる。
「神聖術師は、たしか在学生と教官の模擬パーティに混じって実地フィールドワークだったはずだけど……。マールなら大丈夫でしょ。あの子だって、その辺の冒険者と比べ物にならないくらいレベル上がってるし」
「ミアと違ってしっかりしてるしな」
「うるさいわね」
やがて、前方で繰り広げられていた試合は剣士の勝利に終わった。
客席の最前列に特設された審査員席で、学院のお偉方らしき人達が手元の紙に評価を書き込んでいる。
それから数試合経過したころ、ミアの名前が呼ばれた。
「ミア、気をつけて」
俺が言うと、ミアは不敵な笑みを浮かべた。
「ふふ。誰に向かって言ってるのよ」
相手は両手にナイフを構えた痩せぎすな男だった。
〈観察〉でステータスを探ると、どうやら短剣を操る戦士らしい。
しかし、その殺意にギラつく瞳と黒ずくめの服装はむしろ暗殺者のそれを思わせた。
いや、なんでお前学校に入学しようとしてんだよ。
来る場所間違ってるだろ。
リング上でにらみ合う二人に、グレンが手短にルールの確認をする。
それが終わると両者は距離をとって相対した。
「準備は良いな? ……始めッ!」
グレンの合図と同時にミアが高速詠唱を始め、周囲に魔術紋が浮かび上がる。
短剣使いの方はそれに対し、腕を組んで余裕の眼差しを向けていた。
「くく……。〈紫電のミア〉か。俺の獲物にふさわしいな」
「ずいぶん余裕ね」
詠唱を終えたミアの周囲にスパークが弾け、頭上に雷光の槍が生み出される。
「ふ……。有名なものほど、その中身は虚たるものだ」
「ああ、そう。消えなさい! 〈サンダーランス〉!」
ミアが雷槍を放った。その瞬間――
「くかかっ! 獲った!」
男が地を這うように駆け出す。疾風迅雷。恐るべきスピードだ。
ミアの放った雷槍が男の頭上をかすめて石のリングを抉った。
「己の力に驕ったな!」
短剣使いが瞬足で肉薄。
「しまっ――」
「死ねぃ!」
ナイフを振り上げる。
「……なんてね。〈ライトニングスフィア〉!」
ミアはそのナイフを紙一重で躱すと同時に地に手をついた。
その瞬間、ミアの半径三メートルほどに雷撃のフィールドが弾ける。
「なっ――があっ!?」
短剣使いの身体が大きく痙攣して、そのまま昏倒した。




