変態との再開
奥に進むごとにアボイドの密度が上がっていくのがわかる。
〈次元の歪み〉が近い証拠だ。
やがて、通路の出口が見えてきた。
出口から何やら人の声と炎が燃えるような明かりが漏れていた。
周囲のアボイドを倒した俺たちは、顔を見合わせると通路の先、大きなドーム状の空間に飛び出した。
天井が高く、広大なフロアだ。
フロアにはアボイドたちがひしめき合っている。
中央にはピラミッド状に石段が高く積まれていて、大量のアボイドは部屋に入った俺たちには気づかず、ピラミッドの頂上にいる人間へと四方から殺到していた。
「はっはっは! マーヴェラス! このスリル。ディ・モールト良い! 喰らえ、〈フレイムアロー〉!」
頂上の人間は、哄笑を上げながら魔術を発射してはピラミッドを登ってくるアボイドを撃破している。
真っ赤なローブに輝く金髪――――
「リヒャルト!? あいつ、一人で何してんの!?」
ミアが思わずといった感じで叫んだ。
その声に気がついたリヒャルトが、踊りながらこちらに手を振る。
「グッドイヴニング、ミア! そしてマイ・プレシャス、コージ! やはり会ったね! ――〈フレアボム〉!」
会話の合間に器用に詠唱してはアボイドを斜面から叩き落とすリヒャルト。
変人だが、やはりとてつもなく強い。
「あの変な人か~! 元気~!?」
リヴィアがのんきに手を振る。
「もちろんさ! もしや、君はコージの召喚獣かな!? すまないが、上の〈次元の歪み〉をクラッシュしてくれないかい!?」
リヒャルトに言われて頭上を仰ぐと、ピラミッドの斜め上に大きな暗黒の球体が浮かんでいた。
「リヴィア!」
俺の指示にリヴィアが頷く。
「あれだね……! 〈炎尖牙〉!」
リヴィアが放った炎の槍が、〈次元の歪み〉を爆散させた。
フロアも広いので崩落のリスクも少ない。
〈次元の歪み〉が除去されたことによって、新たなアボイドが生み出されることは無いだろう。
それを見たリヒャルトがグッと親指を立てて笑った。
「グラッチェ! グラーッチェ! はっはっは――アウチッ!」
死角から飛びかかったアボイドがリヒャルトを押し倒す。
「リヒャルト!?」
俺が思わず叫んだ瞬間、アボイドは炎とともに爆散した。
「はっはっは! デンジャラス! 死ぬところだったよ!」
リヒャルトが颯爽と立ち上がる。
だが、額からは一筋の血が流れ、息も上がっている様子だ。
さすがに残る全アボイドを彼一人で倒し切るのは無理だろう。
「リヴィア! 殲滅するぞ!」
「は~い! ……って、あれ?」
俺が叫んだ瞬間、突然、フロアに蠢いていたアボイドたちに異変が起きた。
『ギギィィィギッギャァァ……!?』
何かに怯えるかのように、壁の隙間や崩れた天井の穴などへ消えていく。
やがて、広大なフロアに静寂が訪れる。
「一体なんだってのよ……?」
ミアがぽかーんとした表情で呟く。
「逃げていったようだね」
気がつくと、リヒャルトがピラミッドを下りてそばに来ていた。
「みたいね……っていうかアンタ、一人でこんなとこで何してんのよ!?」
ミアが問い詰めるとリヒャルトは、「ふっ」と髪をかきあげた。
「身を隠しつつ探索していたのだがね。ちょっと、厄介なエネミーに遭遇してね」
「厄介な……ですか。アボイド以上に……?」
マールが怪訝そうな顔をする。
と、同時に床が小刻みに震え始めた。
「……? 何だ?」
振動は次第に激しくなってくる。
「まさか、その厄介な敵ってのは、まだアンタを追いかけてる訳じゃないでしょうね……?」
「はっはっは。オフコース! どうやら、ボクの熱烈なファンのようだよ。……ほら」
リヒャルトが言った瞬間、フロアの壁の一部が向こう側から爆破でもされたかのように破壊された。




