驚くほど剣の才能が無い
◆
それから一週間ほどが経った。
俺は薬草採りの依頼を繰り返してランクEに昇格し、今では簡単な討伐依頼をこなすようになっていた。
討伐依頼は実入りもよく、それなりに経済状況にも余裕が出てくる。
宿の部屋はすきま風が吹き込んでくることもなく、安物だが新品の片手剣を手に入れることも出来た。
「リヴィア! そっち行ったぞ!」
「はーい」
俺が新品の片手剣でグランド・ブルを追い立てると、その先にはリヴィアが待ち構えていた。
「ほいっ!」
リヴィアの指先から発射された水流が、グランド・ブルの胸を貫く。
グランド・ブルはそのまま数歩歩いた後、横出しに倒れ込んで絶命した。
グランド・ブルはバッファローをやや小ぶりにしたような穏やかなモンスターなのだが、繁殖期になると非常に気性が荒くなり、街道を行く馬車などが襲われることが多くなる。
今はその繁殖期の少し前。繁殖期に入る前に狩って数を減らしておこう、ということなのだ。
それに、グランド・ブルの角はアイテムや武具の素材としても優秀なので、いい値で取引される。
少し可哀想な気もするが、これも自然の摂理といえば自然の摂理だろう。
「こーじー。水鉄砲撃つのもう飽きたよ~」
「今のでノルマの頭数だよ。ありがとな」
モンスターを即死させる水流を普通は水鉄砲とは言わないが、それは置いておこう。
俺はグランド・ブルの死骸の前で軽く黙祷してから、折りたたみノコギリでその角を両方切り取った。
この角がギルドの討伐証明になり、またギルド側でアイテムとして買い取ってもくれる。
と、その時、『キーン』という透明感のある音とともに俺の身体を光が包み込んだ。
「お、レベル上がったぞ!」
【坂内コウジ Lv:3
HP:36/36
マナ:0/57
AP:248/400
ジョブ:召喚師
スキル:召喚術 400 魔獣語 80 幻獣語 80 神獣語 80 観察 60
装備品:ショートソード 冒険者の服】
「おー! 凄いじゃん! おめでとー!」
リヴィアがぱちぱちと拍手をする。
レベル38,000のやつに褒められても、あまり嬉しくないんだが……。
数日前、すでに一度レベルアップを経験しているので、レベルは3だ。
「うーん。スキルとかは、レベルアップで増えるわけじゃないんだなぁ」
『AP』も、どうやら固定数値のようだ。
あと、『マナ』も最大値は上がるのに現在値は0のままだ。
ジョブやスキル周りの事が、いまだに把握しきれていないなぁ。
片手剣をとりあえず装備して振り回してはいるが、我ながら素人なりの酷いもので、到底ちゃんとした戦闘などでは役に立たないだろう。
闇雲に剣を振っていても、剣術などのスキルは身につかないらしい。
「一度、ちゃんとその辺りのことを勉強するか……。よし。リヴィア、一旦戻ろう」
「ほいほーい。ふぁ~。ねむ……」
大きなあくびをするリヴィアをカードに戻して、バインダーにしまう。
俺は依頼の規定数、七匹分のグランド・ブルの角が詰め込まれた大きなバックパックを背負うと、街に向かって歩き出した。
前方遠くに、街の高い市壁が陽炎のように見えている。
ここからは、歩きで一時間程度だ。
ギルドの受付でグランド・ブル討伐の報酬と角の売却額10,500ガルドを受け取った俺は、そのままアイーシャに質問した。
「あのさ。『マナ』が最大値ばっかり増えて、0から回復しないんだけど……」
すると、アイーシャはきょとんとしたあと怪訝な顔で首をひねった。
「それはおかしいですね……。瞑想やチャージ系のスキルがなくても自然回復するはずですが……。……あっ」
何かを思い出したように手を打つ。
「お?」
「そういえば、聞いたことがあります! 召喚師は魔力を常に召喚獣との接続に使ってるので、マナが回復しないって!」
「はぁ!?」
「だから、他の魔術系のスキルとは絶望的に相性が悪いんですよ。ちなみに、ステータスは魔術師系の成長だったはずなので、他の近接戦闘系のスキルとも相性が終わってますね……って、大丈夫ですか?」
スライムのようにずるずるとカウンターから滑り落ちる俺に、アイーシャが心配そうな声を掛ける。
「なんなんだよ召喚師って……。不遇職すぎるだろ……」
「あの……気を落とさないでください」
アイーシャが気まずそうに励ます。
まぁ、実際それでも【リヴァイアサン】を使役出来ることの代償としては破格に安い気もするが。
俺は気を取り直して、アイーシャに質問をした。
「ジョブとかスキルとか、詳しく教えてくれる人がいたら知りたいんだけど」
「それでしたら、市営図書館に行くのが良いかも知れませんね。ジョブやスキル関連の蔵書も豊富ですから」
アイーシャはそう言うと、図書館までの地図を書いてくれた。
「図書館か。ありがとう」
「いいえ。お気をつけて」
俺は礼を言ってギルドを退出し、その足で図書館に向かった。
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