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路地裏の警告


 その後は、僕一人でアイーシャから10分ほど明日からの依頼の受け方の説明などを聞いて、解散となった。


「じゃあ、明日またお待ちしてますね。冒険者コージさん」


 笑顔で手を振るアイーシャを背に、俺はギルドの正面玄関を出た。

 大通りへ曲がった瞬間。


「待ちなよ」

「……ミア……?」


 影に潜むように立っていたミアに呼び止められた。


「来て」

「え、ちょ……!」


 そのまま襟首を掴まれて路地裏に連行される。

 俺はいつでも【リヴァイアサン】を召喚できるように、バインダーに手を掛けたままついていった。

 路地裏に誰もいないことを確認したミアは、俺の襟首を放り投げるように壁に押し付けた。


「てっ……。一体、なにす――!」

「しっ」


 ミアが、俺の抗議の声を遮って口元に人差し指を立てる。

 その瞳があまりにも真剣な色をたたえていたので、俺もつい黙ってしまった。

 ミアが、言葉を選ぶように口を開く。


「あなた……あの『カード』……本物なのね?」

「…………」


 俺が答えあぐねていると、ミアが更に言う。


「その沈黙が答えね。それに、本物かどうかは戦ったあたしが一番良く分かってる」

「……何が目的だ?」


 ミアの死角で、バインダーをそっと手に取る。

 今日の二回の戦闘で、APは現在50を切っている。

 リヴィアを呼び出すのにいつも150のAPを消費していたから…………召喚のシステムはきちんと把握していないが、『召喚できない』という最悪のケースも考えられる。


「忠告したいだけよ。あなたのそのとんでもない『カード』……。なるべく誰にも気づかれないほうが良いわ。さもないと、面倒なことに巻き込まれ――」


 そこまで言ったところで、ミアが突然後ろを振り返った。

 背後はなにかの瓦礫が積まれているだけだ。

 口の中で高速に詠唱するのが微かに聞こえ、ミアの両手に雷が宿る。


「そこにいるのは誰?」


 尋ねるが、答えはない。

 ミアが両手を弓のように引き絞る。

 すると、


「にゃー」


 瓦礫の向こうから、野良猫がふらりと現れて走り去っていった。


「…………」


 ミアは小さく息をついてから両手の雷を散らすと、俺に向き直った。


「とにかく、よ。そのカードをあまり他人に見せないこと。……まぁ、殆どの人は信じないと思うけどね」

「わかった。けど、なぜキミが俺にそんな事を……?」


 尋ねると、ミアは少し気恥ずかしそうに頬を掻いた。


「何ていうの? ほら、一度戦った相手は戦友っていうか? それに、これからは冒険者仲間じゃない。まぁ、とにかくそんな感じ!」


 ミアは投げやりにそう言って、俺の背中をバシッと叩いた。


「いてっ」

「あたしの話は以上よ。今日はゆっくり休んで、明日からに備えると良いわ。試験費用も返ってきたんでしょ?」

「あ、ああ」


 試験に合格した場合は払った試験費用がバックされるということで、俺のポーチには現在なけなしの5千ガルドが入っている。


「じゃ、またね」


 ミアは手を振ると、大通りの方へ歩き出した。


「あ、そうだ」


 その途中で、はたと足を止めて振り返る。


「今回は不覚を取ったけど、次回はああは行かないからね。〈海神様〉にもそう伝えとくのよ」


 ビシッと俺を指さして宣言すると、無邪気な笑顔を残して大通りに消えていった。


『ちょっと暑苦しいなー』

「そういうこと言うんじゃありません」


 リヴィアにそう返すと、俺も大通り沿いの宿へと歩き出した。


たくさんのブックマークありがとうございます……!

コージの仲間も増えましたね。

気に入ってくださった方は、ぜひともブックマークを宜しくお願いします!m(_ _)m

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